【Brain Police Road to 50th Anniversary PANTA(頭脳警察)暴走対談LOFT編】第4回 髙嶋政宏(俳優)-「〈変態紳士〉という名のロックとフェティシズムの探求者」

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「つれなのふりや」の衝撃

PANTA:髙嶋君のことを何とお呼びすればいいかな。〈スターレス髙嶋〉の異名を持つからスターレスにしようか?(笑)

髙嶋:いいですよ。僕はキング・クリムゾンの「STARLESS」があまりに好きすぎて、「とにかく『STARLESS』が最高なんだ!」といろんなところでふれ回っていたら、山田五郎さんが『今日は一日“プログレ”三昧』というラジオ番組で〈スターレス髙嶋〉と呼んでくださったんです。メディアで初めてその名前で呼んでくれたのは五郎さんなんですよ。

PANTA:スターレスはKISSマニアでもあるんだよね。

髙嶋:8歳で出会って以来、KISSは僕にとってロックの原点なんです。フィギュアやグッズに300万円以上は使っていると思いますよ。ジーン・シモンズのメイクをしてKISSのニュー・アルバム(『モンスター〜地獄の獣神』)の発売記念イベントやロフト9のイベントに出たこともあります。

PANTA:俺は『グラムロック・イースター』(マーク・ボランの命日である9月16日に行なわれているアキマツネオ主催の追悼ライブ)というイベントでアリス・クーパーのメイクをして、サーベルを持って暴れたことがあるよ。ここまでやったら来年はKISSのメイクをしてやろうと思ったんだけど、「KISSはグラム・ロックじゃない!」と猛反発を喰らってさ(笑)。その『グラムロック・イースター』では、KISSの「DETROIT ROCK CITY」やスレイドの「GOODBYE TO JANE」なんかをカバーしたことがある。

髙嶋:スレイドはむちゃくちゃ格好いいですよね。

PANTA:プログレだと、俺はフラメンコとロックを融合させたカルメンというバンドが一番好きだな。

髙嶋:カルメン、いいですよね。『宇宙の血と砂』(『FANDANGO IN SPACE』)とか。

PANTA:うん、あれは最高だよ。

──PANTAさんにプログレのイメージはあまりないですよね。

PANTA:でも、頭脳警察は昔からプログレと言えばプログレなんだよ。ザッパのマザーズ・オブ・インヴェンションの流れを汲んだ変拍子とかをやっていたし、いわゆる政治的な色彩を帯びる前はオリエンタルな感じだったしね。スターレスにはぜひ一度、頭脳警察の『狂った一頁』というライブ・アルバムを聴いてほしいな。あれは大プログレ・アルバムだから。衣笠貞之助監督の『狂った一頁』という、1926年(大正15年)に製作された無声映画があって、それを上映しながらライブをやったことがあるんだよ。川端康成が原作・脚本を手掛けている日本初の前衛映画でね。

髙嶋:それはぜひ聴いてみたいですね。音楽に関して言えば、僕はジャンル分けするのがあまり好きじゃないんです。自分がいいと思ったものはいい。ただそれだけなんです。フェチと同じで、ヒットするかしないかだけなんですよ。

PANTA:フェチと言えば、スターレスのエッセイ集『変態紳士』は楽しく読ませてもらいました。

髙嶋:どうもありがとうございます。PANTAさんに読んでいただけるなんて光栄です。僕が中学か高校の頃、石井聰亙(現・石井岳龍)監督の『狂い咲きサンダーロード』という尖った映画を観たら、PANTA & HALの「つれなのふりや」が急に流れてきたんですよね。「おれの声が聞こえるか」って。当時はまだ情報が乏しかったし、この格好いい曲を唄っているのは誰なんだろう? と興味が湧いたんです。それが僕にとって最初のPANTAさん体験でした。あの「つれなのふりや」とはどういう意味なんですか?

PANTA:安土桃山時代の『隆達小唄集』という歌謡集の中の唄から引用したんだよ。「つれなのふりや / すげなのかおや / あのようなひとがはたとおつる」という唄で、つれないふりをしている人やすげないふりをしている人に限ってあっと思うような恋に落ちるものなんだ、という意味でね。

髙嶋:なるほど。あの歌詞は全世界の指導者、国家元首のことを唄っているんじゃないかと僕は勝手に思っていたんですよ。

PANTA:そういう解釈でも全然OKだよ。

髙嶋:「おれに舵をまかせるか」「おれに身体をあずけるか」「イカリをはずすぞ」と何度も繰り返すから、だんだんアジテートの歌に聴こえてきて。

PANTA:「イカリをはずすぞ」の〈イカリ〉は、〈アンカー〉と〈アングリー〉を引っかけてるんだけどね。

髙嶋:ああ、そういうことだったんですか。「つれなのふりや」は本当に素晴らしい歌詞ですね。

PANTA:『隆達小唄集』は言ってみれば安土桃山時代のラブソング集で、その中に実は「君が代」も入っている。つまり「君が代」はラブソングなわけ。世界に誇るラブソングが日本の国歌だなんて、素敵だと思わない?

髙嶋:むちゃくちゃ素敵です。

鼻フックよりもギャグボールが好き

PANTA:スターレスはこのあいだビルボードでやった『PANTA & HAL. EXTENDED』(2018年11月3日)にも来てくれたんだよね。興奮して楽屋にも飛び込んで来てくれて(笑)。

髙嶋:何カ月か前にビルボードライブの冊子にPANTAさんと鈴木慶一さんの対談記事が載っているのを読んで、『マラッカ』と『1980X』の再現ライブをやると知って、これは何があっても絶対に観に行こうと決めたんです。

PANTA:まず、俺たちがビルボードでライブをやるなんて発想がおかしいよね。

髙嶋:でも、最近はレジデンツがブルーノート東京でライブをやったり、いろいろとクロスオーバーしていますよ。

PANTA:俺たちはファンから「ビルボードじゃないだろ! ロフトだろ!」というお叱りをさんざん受けたけどね(笑)。

髙嶋:当日、二部は撮影で行けなくて一部で帰ったんですけど、僕はとにかく「つれなのふりや」を生で聴けたのが衝撃でしたね。普通に正面から観るのではなく、サイドの一段高い所から見下ろすように観たんですけど、それがまた良かったんですよ。こんなことを言うとPANTAさんは嫌がるかもしれませんけど、ずっと椅子に座っていて、最後にちょっと立ったくらいのパフォーマンスだったのに、歌の上手さと説得力、圧倒的な表現力がすごかった。今のシンガーであれだけの説得力がある人は、いないんじゃないかな。

PANTA:歌に説得力があるのは別に否定しないよ。もっと言ってよ(笑)。

髙嶋:上から観ると、ギターの今(剛)さんたちとやり取りする様が見えたり、興味深かったですね。

PANTA:上から見下ろすで思い出したけど、むかし渋谷のO-WESTでシェリー・カーリーがライブをやった時、2階席から彼女の胸の谷間ばかり見てたよ(笑)。

髙嶋:それはとても大切なことですよ。僕もそっちのほうが好きですから(笑)。

PANTA:しかし『変態紳士』はすごいね。最初から〈遅すぎたSMとの出会い〉、〈ホンモノのSM〉とSMの話題で飛ばしまくって(笑)。

髙嶋:『変態紳士』を出して、「衝撃の告白本」だとか「ここまで書いて良いのか」とか言われたんですけど、僕が普段からドラマや映画の現場でよく話している内容なんです。共演者のみなさんはその話にノッてくれるか、完全に引いてるか、どっちかしかないんです。自分のエッセイだし、僕の日常をただ綴っているだけなんですけどね。

──『変態紳士』はまずカバーがパンチありすぎですよね。裸の髙嶋さんが首輪を着用している異様な写真が使われていて(笑)。

髙嶋:あれは歌舞伎町のティッティーツイスターというホンモノが集まるSMバーの首輪なんです。唯一、M男も着用できるもので、M女用のはキツすぎて首が締まりすぎちゃって。あれより大きいと犬の首輪になっちゃうんです。自分の本の表紙に血と汗と涙といろんな体液が染み込んだ首輪を使うなんて最高だと思ったので、自ら提案して採用されたんです。

──PANTAさんはSMに関心はあるんですか。

PANTA:『変態紳士』に書かれてあるような体験は俺もいっぱいあるよ。六本木ジェイルという有名なSMフェティッシュバーにも行ったことがあるしさ。

髙嶋:残念ながら閉店しちゃいましたけどね。

PANTA:そうなんだ? その六本木ジェイルのオーナーに「ちょっとシニアなほうに行きましょうよ」と道を挟んだ向こうのハプニングバーに連れて行かれたこともあるよ。ドアを開けると、そこでいろんなことが繰り広げられているわけだけど、みんなはにかんで始めようとしないから、オーナー自ら仕掛けることになったりしてさ。縛られて片足を上げられた女性が4、5人の男にいたぶられてるんだけど、それを見ているカレがいるわけ。そのカレは女性で、つまりタチとネコの関係なんだよね。俺はもうインタビュアーと化して、「これを見てどういう気持ちなの?」って訊きまくったよ(笑)。スターレスはただ見るのが好きなの?

髙嶋:そうですね。あとはギャグボールを噛ませたり、鞭を打ったり打たれたり、ラップを巻いてマミープレイしたり。

PANTA:俺はそっちの心理がよくわからないんだよ。なんでかわいい女の子に鼻フックをさせるのかわからない。

髙嶋:鼻フックよりも僕はギャグボールが好きですね。このあいだM女にギャグボールを噛ませて、唾液を吸わせてもらったんですけど、出てきた唾液の量があまりにすごくてびっくりしました。

PANTA:唾液か…俺は汁物はダメだなぁ(笑)。イラマチオは唾液がバンバン出るんじゃない?

髙嶋:あれは唾液がないと危険です。事故ります。

PANTA:首を絞めるのでも、相手の呼吸を見ながら締めないと危ないっていうよね。アブノーマルなことって実はすごく健全な発想なんだと思ったよ。

髙嶋:ドイツでは女王様がM女を鞭で叩きながら「今のはどうだった?」「まだいけます」と、その都度強度を確認するそうなんです。これがMAXだという強さをあらかじめ聞いてからショーに臨むんですね。しかもショーが終わったら女王様がM女の尻にボディクリームを塗ってくれるらしくて。日本にはそういうケアが足りないとM女が言ってました。

何事も〈一人で行動すること〉が大事

PANTA:言葉責めは好き?

髙嶋:あまり関心ないですね。M女の声と表情をただ愛でるのが好きです。

PANTA:俺はアロマ企画というフェチAVメーカーの作品が好きでさ。

髙嶋:僕は一時期、V&Rプランニングの作品にハマりましたね。『水戸拷悶 〜大江戸ひき廻し〜』とか(笑)。

PANTA:『水戸拷悶』! エロ幕府みたいだな(笑)。

髙嶋:バスの中で女の子にケーキを20個くらい食べさせて、窓から顔を出してゲロを吐かせるんですよ。その姿を3カメでいろんな角度から撮るんですけど、それを見た時は1週間くらいラーメンが食べられませんでした(笑)。今はローゲー、好きですけど(笑)。

PANTA:家田荘子さんのルポルタージュで、あるM女が長年交際していたS男と別れた話があってね。そのM女は「普通のセックスで満足できる人が羨ましい。自分はそういう体じゃないから」と言うんだけど、俺は彼女の交際相手に立候補しようかなと思ったくらいなんだよ。というのも、自分に果たしてそれだけの暴言を吐いたり陵辱みたいなことができるのか? と思ってさ。S男って相当頭を使わないとダメでしょ?

髙嶋:そうですよ。次から次へと言葉を発さないとダメだし、相手が喜ぶくらいの酷い言葉を言わなくちゃいけないから、すごく難しい。Sというのは本来サービス業なんです。Mが喜ぶことを絶えずやり続けるわけですから。

──〈サディズム〉のS以外に〈サービス〉のSでもあるわけですね。

髙嶋:女王様はよくそう言いますね。僕は緊縛師が指導してくれる緊縛初級講座に通っているんですけど、これがなかなか難しいんです。1時間半くらい何度も何度も練習台になってくれた子にやり直すんですが、「今日もありがとう」と言うと、「ありがとう? まだ何も始まってませんけど」なんて言われてしまう。「すみません、頑張ります」と言いながら、いつもショックを受けてますね。今のままじゃ緊縛のキの字も始まっていないので。

──PANTAさんは何フェチなんでしょう?

PANTA:俺はノンケだからね。あえて言うならシチュエーション・フェチかもしれない。フェチ方面のことは今度スターレスに開発してもらおうかな(笑)。

髙嶋:このあいだ佐野史郎さんと話していて、「PANTAさんと言えば常にいい女を連れて歩いているイメージがある」と言ってましたけど。

PANTA:佐野君だっていつも綺麗な女優さんを連れて歩いてるじゃない(笑)。

髙嶋:佐野さんは、最近はそういうのないみたいですよ。でも、またやりたいならやり続けたほうがいいと思うんですよ。人間は煩悩の塊なんですから。

PANTA:スターレスは『変態紳士』で〈一人で行動すること〉を勧めてるよね。気になった所へは必ず一人で行くし、このあいだのビルボードのライブも一人で来ていたしね。SMはこんなに素晴らしいんだからあいつを仲間に入れて一緒に行こうとか、そういう気持ちはないの?

髙嶋:ないですね。僕は興味を持った所にはとにかく一人で行ってみることにしているんです。初めてSMバーへ行ったのも一人だったし、「一緒に連れていってくれ」と言う人には店を教えて、最初はなるべく一人で行ってもらうことにしています。なぜならそこには変態しかいないから、一人でも安心するはずなんですよ。

PANTA:スターレスの中でSとMの線引きはないんでしょ?

髙嶋:僕はスイッチャーなんです。その日の気分によってSにもMにもなるし、どっちもいける。このあいだ歌舞伎町のSMバーで女王様に鞭の打ち方を教わったんですが、その女王様の腕に無数の傷がついていたんです。「女王様なのに?」と訊いたら、「私はスイッチャーなんです」と。僕の縄の師匠の奥さんも元はM女だったんですけど、今は女王様もやるスイッチャーで、最近はどうもスイッチャーが多いみたいですね。

PANTA:その気持ちはわかるよ。誰しもSの要素とMの要素があるからね。

ヴィヴィアンがロックをアクセサリーにした

──ところで、髙嶋さんは中学生の頃から新宿ロフトへ頻繁に通ってくださっていたそうですね。

髙嶋:とにかく格好いいサウンドを求めてロフトに通いましたね。東京ロッカーズと、その第二世代である東京ニュー・ウェイヴの二派のライブをよく観ていました。フリクションが特に好きで、他にもリザード、8 1/2〈ハッカニブンノイチ〉、不正療法、自殺、SEX、ちょっと変わってきますけどグンジョーガクレヨンやPhewとか、その辺のバンドが好きでしたね。今は洋楽ばかりですけど、当時は日本のアンダーグラウンドのバンドをよく聴いていました。当時、友達のお兄さんがボルシーというバンドでベースを弾いてた石田(ケンジ)さんだったから、ロフトに出ているようなバンドが身近だったんです。僕は8歳でKISSを好きになって、中学の頃にセックス・ピストルズが出てきてパンクの洗礼を受けたんですけど、マルコム・マクラーレンがパンクを仕掛ける数年前にイギー・ポップとかは今で言うパンク・ロックをすでにやっていたんですよね。

PANTA:イギー・ポップは1979年にプロモーションで来日した時に対談したことがあるよ。デヴィッド・ボウイとの蜜月の後かな。

髙嶋:パンクやニュー・ウェイヴに染まっていた当時のリトル・タカシマは、ロンドン・パンクだけがパンクだと勘違いしていたんですよ。マルコム・マクラーレンが仕掛けたピストルズは、演奏こそちゃんとしているけどメンバーはヴィヴィアンの店にたむろしてた若い衆で、言ってみればモンキーズみたいなものなんですよね。

PANTA:そうだね。今度、ヴィヴィアン・ウエストウッドのドキュメンタリー映画(『ヴィヴィアン・ウエストウッド 最強のエレガンス』)が公開されるけど、俺はヴィヴィアンをシャネルと同じくらいに評価しているんだよ。ヴィヴィアンはマルコムと一緒にピストルズをプロデュースしたわけだけど、彼女がパンク・ロックをデザインしたんだよね。70年代のポップ・カルチャーは絵画も写真もロックを中心に回っていたけど、ヴィヴィアンがロックをアクセサリーにしてしまった。ロックっぽいアイテムと言えばスカルとかさ。パンク・ロックの台頭以降、ファッションのアクセサリーみたいなロックが横行するようになったけど、アクセサリーだって安物から高級品までいろんな形があるわけだし、俺はヴィヴィアンやマルコムの発想にはシンパシーを覚えるね。

髙嶋:マネジメントに踊らされず、自分の信念を貫いたロンドン・パンクの人たちは今もちゃんと残っていますよね。ジャムをやってたポール・ウェラーもそうだし、ストラングラーズもずっと現役だし、もちろんクラッシュも。残念ながら、ジョー・ストラマーは亡くなってしまいましたが、その一方で、当時からニューヨーク・パンクはまた別の形としてあって、それもイギー・ポップやヴェルヴェット・アンダーグラウンドがルーツだと思うんですよ。

PANTA:ニューヨーク・パンクと言えば、フィル・スペクターがプロデュースしたラモーンズのアルバムがあるよね。あれは最高だったな。フィル・スペクターの色が出すぎなんだけどさ。

髙嶋:『END OF THE CENTURY』ですね。フィル・スペクターがラモーンズのメンバーに「自分たちだけでまずまずのアルバムを作りたいか、それとも僕と一緒に偉大なアルバムを作りたいか?」と話したという有名なエピソードがありますよね。

PANTA:フィル・スペクターとのレコーディングはすごく大変だったらしいね。まぁ、ジョン・レノンを銃で脅したり、マスターテープを持って失踪したりする人だからな(笑)。

髙嶋:XTCの『SKYLARKING』はトッド・ラングレンがプロデュースしましたけど、あれもメンバーとのあいだにだいぶ亀裂が入ったらしいですね。アンディ・パートリッジいわく「両面コインの表ヤロウ」。あのアルバムはコリン・モールディングのベースの音がこもっちゃってて残念なんです。ちょっと前に出たリマスター盤は良かったですけど。

映画『ボヘミアン・ラプソディ』の感動ポイント

PANTA:スターレスはクイーンなんてどうなの? いま伝記映画(『ボヘミアン・ラプソディ』)が大ヒットしているけど。

髙嶋:もちろん好きでした。中学生の頃に『オペラ座の夜』(『A NIGHT AT THE OPERA』)の「BOHEMIAN RHAPSODY」から入って、その後の『JAZZ』とかは中学生にはちょっと難しく感じましたけど。それから遡って、ファーストの『戦慄の王女』(『QUEEN』)とセカンドの『QUEEN II』はよく聴きましたね。特にファーストの、「頑張れ田淵」と聴こえる「KILLER QUEEN」はすごいハマってました。

PANTA:俺はクイーンの1枚目、2枚目を聴いてショックでさ。こんなにすごいアバムをつくるバンドがいるんだ!? と思って。ただ、これがアメリカのバンドならアルバム1枚のアイディアで3枚はつくるだろうなんて言われていたよね。

髙嶋:たしかに『戦慄の王女』も『QUEEN II』もちょっと短いですもんね。

PANTA:クイーンの映画は観てどうだった?

髙嶋:出だしのライブエイドのステージに向かうフレディ・マーキュリーの背中を追うシーンがありますけど、よくあそこまで細かくフレディの動きを研究したなと、まずそこで感動しました。

PANTA:やっぱり役者の視点なんだね。

髙嶋:あのライブエイドのパフォーマンスを完全再現したのがとにかくすごかったですね。観客のエキストラを集めたスタッフ、実際にそこに集まった人たちの「この映画を絶対に成功させるんだ!」という熱意に打たれました。それに、当時自分が好きだった楽曲が誕生する瞬間を見るのは感動しますね。時系列がどうこう言う人もいますけど、そんな細かいことはどうでも良くて、僕はむちゃくちゃ感動しました。ずっと嗚咽していましたね。

PANTA:LGBTとして生きたフレディの悲哀も感じた?

髙嶋:感じました。フレディが途中で突然ゲイになって映画が途中からヘンになったと言う人もいたけど、僕はフレディが最初は女性と結婚していたというエピソードが衝撃で。フレディが「僕はバイセクシャルだ」と奥さんに打ち明けると、奥さんは「いや、あなたはゲイよ。前から気づいてた」って言うんですよね。そんな事実があったのかと思ったし、本当に監督のブライアン・シンガーはすごいですよ。やっぱりあのライブエイドの演奏シーンに尽きますね。フレディがエイズなのを知ったメンバーがライブ中に感極まって泣いたっていいのに、ブライアン・メイもロジャー・テイラーもジョン・ディーコンも決して泣かずに、だけどちゃんと感動に包まれた表情をしているんです。あの芝居や編集のセンスがハイレベルなんですよね。日本の映画ならもっとお涙頂戴な演出になりがですが、クイーンの映画は涙を超えた神々しい瞬間があるんです。

PANTA:スターレスは普通の人とは全然違って、玄人の視点なんだね。俺は正直、ちょっとつくりが雑だなとか、役者がいまいちだなとか感じてしまったんだよ。本人に似せるという意味では、レイ・チャールズの伝記映画(『RAY』)でレイを演じたジェイミー・フォックスは素晴らしかったけどね。

──髙嶋さんが演じてみたい実在のミュージシャンはいますか。

髙嶋:日本人だから無理があるかもしれないけど、プライマスの変態ベーシスト、レス・クレイプールはやってみたいですね。

PANTA:やっぱりベーシストに惹かれるんだね。

髙嶋:あと、レジデンツとか演じてみたいです。目玉のマスクをしたら誰だかわからないけど(笑)。

PANTA:ベースは実際に弾いていたんだよね?

髙嶋:弾いてました。学生の頃にJ-TRIP BAR六本木で、ビジーフォーさんの前座をやるようなバンドで。本当はプログレをやりたかったんですけど、不本意ながら先輩に言われてリック・ジェームスやKC&ザ・サンシャイン・バンド、デッド・オア・アライヴ、ドゥービー・ブラザーズといった当時のヒット曲をやっていました。ドゥービーはコーラスに慣れるのが大変でしたね。ちょうどブルース・スプリングスティーンの「BORN IN THE U.S.A.」が大ヒットしていた頃です。

PANTAと髙嶋母をつなぐ〈氷川丸〉

PANTA:そもそも髙嶋家は音楽一家なんだよね。お父さん(髙島忠夫)はジャズ好きだし、お母さん(寿美花代)は宝塚歌劇団出身だし。

髙嶋:僕はベース、弟(髙嶋政伸)はドラムが叩けるし、父と母はピアノを弾けるんです。13年前に僕が結婚した時、披露宴で何かやってくれってことになって、家族でプレスリーの「CAN'T HELP FALLING IN LOVE」を唄ったんですよ。それがあまりに酷い出来で、何が音楽一家だ!? という感じでしたね。全員のキーは合ってないし、最悪でしたよ(笑)。

PANTA:一番最初の音楽体験は何だろう?

髙嶋:家で父がフラメンコみたいな曲をガットギターで弾いていたのが最初ですかね。物心ついた頃は「ベサメ・ムーチョ」や「キサス・キサス・キサス」といったラテン音楽のスタンダードを聴かされた記憶があります。小学4年生の時に宇崎竜童さん率いるダウン・タウン・ブギウギ・バンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」をテレビで見て、すごく格好いいなと思ってエレキギターをやりたかったんですが、父には「エレキは不良になるからダメだ」と言われてしまって。

──叔父の髙嶋弘之さんはビートルズの初代ディレクターだし、従妹の髙嶋ちさ子さんはヴァイオリニストだし、音楽とは縁の深い一族ですよね。

PANTA:ビートルズとも関係があるんだ?

髙嶋:「抱きしめたい」や「涙の乗車券」といったビートルズの初期の楽曲の邦題のほとんどを叔父がつけたんです。僕がパンクに熱中していた頃、「こういう音楽も聴いておいたほうがいいぞ」とビートルズの『LET IT BE』とエリック・クラプトンの『WONDERFUL TONIGHT』のレコードをくれました。

PANTA:良い家庭環境だったんだね。俺はいまNACK5の番組審議委員をやっているんだけど、11年前に『命の船 病院船氷川丸』というスペシャル番組をつくったんだよ。氷川丸が海軍に徴用されて病院船だった時代に俺のお袋は海軍病院の従軍看護婦で、戦争の末期にシンガポールから日本に引き揚げてきた時に乗ったのが氷川丸だったわけ。もし氷川丸が他の病院船と同じように沈められていたら、俺は生まれていなかったことになるんだよ。その『命の船 病院船氷川丸』という番組に、スターレスのお母さんに出ていただいたんだよね。お母さんは戦後、宝塚歌劇団の一員として氷川丸に乗って渡航した経験があるということでね。「いま思うとこんなに小さい船だったんだなぁ…」なんて話をしてくださってさ。

髙嶋:そう、母は氷川丸に乗ったことがあるんですよね。父が病気で倒れてから、母は悲しくなると横浜へ行って氷川丸を見に行って、当時のことを思い出したりリフレッシュしてから看病に戻ったそうなんです。

PANTA:来年(2019年)、頭脳警察の結成50周年が終わったら、今度は俺の〈氷川丸プロジェクト〉に真剣に取り組むつもりなんだよ。本にして、それを映画化したい。「氷川丸」という歌もすでにあって、ライブではやっているけどまだアルバムには入れてないんだよ。映画ができた時にサウンドトラック盤に初めて収録したいと思っているからさ。それと、氷川丸の甲板で「氷川丸」を披露してみたい。その一連のプロジェクトにスターレスにもぜひ協力してほしいし、映画に出演してくれたら嬉しいな。

髙嶋:もちろんです。そろそろ時間ということなんですが、まだまだ話し足りないので、今度は夜の深い時間にディープな話をしたいですね。

PANTA:ぜひ。マネジメントに叱られない程度にね(笑)。

髙嶋:次にお会いする時はM女同伴で行きますので、2人で愛(め)でましょう(笑)。

協力:中目黒 Purple / 撮影:寺坂ジョニー