「おかわり君」の衝撃、栗山&中島&片岡も躍動…日本一に輝いた2008年の西武

西武・中村剛也【写真:荒川祐史】

片岡&栗山の最多安打コンビを中島&ブラゼル&G.G.佐藤&中村が返す

 10年ひと昔という。10年前の野球界はどんな様子だったのか。2008年の野球界を数字で追いかけよう。今回は、日本一に輝いた西武ライオンズだ。

 2008年 埼玉西武ライオンズ 76勝64敗1分 勝率.543 1位

 4月に首位に立つと、そのまま首位を明け渡すことなくフィニッシュ。9月は9勝15敗と負け越し、オリックスに肉薄されたが、それまでの貯金もあって優勝した。

 前年、伊東勤監督の退任に伴い新たに就任した渡辺久信監督は、1年目でリーグ優勝。CS第2ステージはアドバンテージを含め4勝2敗で日本ハムを退けた。

 日本シリーズでは巨人を相手に熱戦を繰り広げ、4勝3敗で2004年以来の日本一に輝いた。

○打線 左端の数字は打順、打率の横の()は順位

1二・片岡易之(25歳) 139試 582打167安 4本 46点 50盗 率.287(15)
2外・栗山巧(25歳) 138試 527打167安 11本 72点 17盗 率.317(4)
3遊・中島裕之(26歳) 124試 486打161安 21本 81点 25盗 率.331(2)
4一・ブラゼル(28歳) 130試 471打110安 27本 87点 0盗 率.234(29)
5外・G.G.佐藤(30歳) 105試 388打117安 21本 62点 1盗 率.302(7)
6三・中村剛也(25歳) 143試 524打128安 46本 101点 2盗 率.244(27)
7指・石井義人(30歳) 108試 306打85安 4本 29点 0盗 率.278
8捕・細川亨(28歳) 133試 404打96安 16本 58点 0盗 率.238(28)
9外・ボカチカ(32歳) 78試 239打60安 20本 47点 3盗 率.251
外・後藤武敏(28歳) 49試 166打50安 12本 27点 0盗 率.301
外・赤田将吾(28歳) 68試 160打39安 2本 13点 2盗 率.244
外・佐藤友亮(30歳) 59試 126打38安 1本 11点 4盗 率.302
一・江藤智(38歳) 42試 97打20安 7本 17点 0盗 率.206
内・平尾博嗣(33歳) 55試 93打24安 2本 9点 1盗 率.258
外・松坂健太(23歳) 55試 91打24安 1本 12点 2盗 率.264

 1番・片岡から6番・中村までの打線がほぼ固定された。前年まで規定打席に達したことがなかった「おかわり君」中村剛也が本塁打王に。リードオフマンの片岡が盗塁王、片岡と栗山は167安打でそろって最多安打。片岡、栗山、中村、中島、細川がベストナイン。中島と細川はゴールデングラブを獲得。20代中心の若いレギュラー陣の活躍でペナントレースを勝ち抜いた。

タイトルホルダーはいないが安定感ある投手陣、涌井&岸はその後移籍

○投手陣 防御率の横の()は順位

先・帆足和幸(29歳) 27登11勝6敗0SV0HD 174回2/3 防御率2.63(4)
先・涌井秀章(22歳) 25登10勝11敗0SV0HD 173回 防御率3.9(16)
先・岸孝之(24歳) 26登12勝4敗0SV0HD 168回1/3 防御率3.42(9)
先・石井一久(35歳) 25登11勝10敗0SV0HD 135回1/3 防御率4.32
先・西口文也(36歳) 22登8勝6敗0SV0HD 116回1/3 防御率5.03
中・大沼幸二(29歳) 52登2勝4敗1SV7HD 83回 防御率3.69
先・キニー(32歳) 17登2勝4敗0SV0HD 80回1/3 防御率4.48
中・小野寺力(28歳) 50登5勝5敗1SV9HD 55回2/3 防御率3.56
中・岡本真也(34歳) 47登0勝2敗0SV18HD 42回1/3 防御率3.83
中・星野智樹(31歳) 63登4勝1敗0SV25HD 34回 防御率2.38
抑・グラマン(31歳) 55登3勝3敗31SV4HD 57回 防御率1.42

 若い帆足、涌井、岸とベテランの石井、西口の5人の先発投手がシーズンを通してローテをほぼ維持した。タイトルホルダーはいなかったが、安定感のある先発投手陣だった。

 救援陣ではグラマンが31セーブとクローザーとして活躍。小野寺、岡本真はセットアッパーとしてまずまずの働き。左腕・星野はワンポイントが多かったがリーグ2位の25ホールド。

 この顔ぶれでは、野手陣では栗山、中村が健在。中島はMLB挑戦からオリックスを経て来季は巨人。細川はソフトバンク、楽天を経て来季はロッテ。投手陣では、涌井はロッテに移籍し、岸も楽天に移籍した。

ドラフトでは浅村が入団、主力流出も育成力でチームを維持

○ドラフト会議
1位 中崎雄太(投手)日南学園高
2位 野上亮磨(投手)日産自動車
3位 浅村栄斗(内野手)大阪桐蔭高
4位 坂田遼(外野手)函館大学
5位 岳野竜也(捕手)福岡大学
6位 宮田和希(投手)甲賀健康医療専門学校

 日南学園高の本格左腕・中崎を1位指名するも0勝で終わる。ちなみに弟の翔太は広島のクローザーになった。2位の野上は先発で活躍したが昨年、巨人に移籍。3位の浅村は中軸打者に育ったが、今オフに楽天に移籍した。

 FAでの主力選手の流出が目につく西武。しかし、そのあとに人材が育っているのも事実だ。今季の山川も10年前の中村同様、規定打席に最初に到達した年に本塁打王。山川はMVPにも輝いた。2008年以来のリーグ優勝は「育成力」のたまものだろう。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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