選挙のプロが振り返る2018年の選挙3選|現地取材が得意な選挙ウォッチャー編

2018年は国政選挙がない年となりましたが、2019年4月の統一地方選に先駆けて各地で統一選の「前哨戦」ともいうべき選挙が多く行われました。また、県知事選のレベルで振り返ると山口・長崎・石川・京都・新潟・滋賀・長野・香川・沖縄・福島・愛媛・和歌山・佐賀・宮崎の計14の県で知事選が行われました。
そこで、日本全国の選挙情報を網羅する日本最大級の選挙メディアの選挙ドットコムでは2018年に行われた数多くの選挙の中から、「印象的だった」「注目していた」選挙を3つピックアップしてお届けします。

今回の紹介者は数多くの現地取材を経験してきた選挙ウォッチャー。この記事を読んでおけば2018年の選挙の振り返りはバッチリです!

紹介者:選挙ウォッチャー宮原ジェフリー
選挙ウォッチャー、キュレーター(現代美術)。 1983年東京都出身。中学生時代から衆参の選挙の度に全選挙区の当落予想を続ける。ポスターデザイン、インディーズ候補、政見放送、選挙公報、街頭演説など選挙に関わること一切が関心領域。

沖縄選挙イヤーの幕開け、辺野古のある名護市、激戦の沖縄県知事選挙

2018年は国政レベルの大型選挙がなく、全国的には比較的落ち着いた一年となりましたが、その一方沖縄では重要な選挙が集中していました。
個人的にも沖縄入りを2回して取材し、様々な経験をする機会に恵まれました。今年の3つの選挙はすべて沖縄の選挙を選ばさせていただきました。

【南城市長選挙】(1月21日投開票)

2018年に翁長雄志氏が県知事選挙に立候補して以降、辺野古への基地移設に反対する立場の革新系政党を中心とした「オール沖縄」とそれを推進している自民・公明両党(ただし公明党の県本部は建設反対の立場であり、ほかの保守系候補も必ずしも「推進」の立場を明確にしている訳ではなく状況は複雑です)の2大勢力による政争が長く沖縄県を分断している状況が長く続いています。

沖縄選挙イヤーの幕開けとなる南城市長選挙では現職で自公推薦の古謝景春氏に対して元衆議院議員で「オール沖縄」が支援する瑞慶覧長敏氏が65票差という超僅差で競り勝つ波乱の展開となりました。

【名護市長選挙】(2月4日投開票)

新しい米軍基地の建設をめぐって長年議論が交わされている辺野古が位置する沖縄県北部の市、名護では現職でオール沖縄陣営が支援する稲嶺進氏に対して市議会議員だった渡具知武豊氏が自公推薦で立候補。両陣営とも選挙期間中は国政レベルの政治家が連日現地で応援演説を繰り広げるなど非常に激しい選挙が行われました

辺野古への基地移設に関して絶対に反対する立場の現職稲嶺氏に対して、新人の渡具知氏は新基地建設に関しては賛否を明確にせず、経済振興に重点をおいて選挙戦を展開。結果的に渡具知氏が稲嶺氏に10%近い票差をつけて当選を決めました。

【沖縄県知事選挙】(9月30日投開票)

今年もっとも話題となった選挙ではないでしょうか。任期満了目前にして現職の翁長雄志氏が逝去。自公・オール沖縄両陣営とも準備不足のまま突入した選挙で、人選を巡り短いスケジュールの中で激論が交わされたのも印象的でした。そんな中、自公推薦は現職の宜野湾市長だった佐喜真淳氏、オール沖縄からは現職の衆議院議員だった玉城デニー氏が立候補。
インターネット上では両者を応援するアカウントから真偽不明の投稿を含めて情報戦の様相を呈していました。地元メディアやインターネットでは選挙期間中に盛んにファクトチェック記事を掲載する、過去には例のない状況も見られました。

佐喜真陣営は名護市長選挙と同じように連日大物政治家を来沖させて徹底した組織選挙を戦っていた一方、玉城陣営は名護市長選の反省を踏まえ、政党色を抑えて若者を中心として組織と洗練されたデザインを多用したイメージ戦略で選挙戦を展開。選挙期間終盤には掲示板ポスターに翁長氏の写真を使用したものに差し替えるなど、「翁長氏の後継者」ということを押し出す戦略と合わせて若者と中年以上の層の両方にアピールし、結果的には396,632票という過去の沖縄県知事選挙で最も多い得票を獲得して当選を決めました。
また、この選挙では料理研究家で元那覇市議会議員の渡口初美氏がベーシック・インカムの導入を、40歳の兼島俊氏が若者の政治参画を訴えて立候補しました。両者ともインターネットを中心とした選挙運動を展開して、新しい選挙運動の在り方の可能性がひらけた選挙でもありました。

2019年は2月に辺野古新基地の建設をめぐる県民投票が予定されている一方、辺野古の現場では政府による土砂投入がすでに進められているなど、政府と沖縄県との政治的対立は続くものと見込まれ、4月の衆議院沖縄3区補欠選挙、7月の参議院選挙と有権者にも選択が迫られる場面が度々発生します。

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