悲喜こもごも

 JR長崎駅近くに県庁舎が建ち、仕切りのないオープンフロアで職員が勤務を始めたのは、今年1月のことだった。あれからもうすぐ1年になる▲中村法道知事は仕事納めとなったきのうの会見で、この1年の県政を「悲喜こもごも」という言葉で総括した▲「喜」として挙げたのは、その新庁舎での業務スタート。ノーベル文学賞を受賞した本県出身の英国人作家カズオ・イシグロ氏に名誉県民の称号を授与した。紆余(うよ)曲折を経た「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が念願の世界文化遺産に登録された▲一方、「悲」として挙げたのは、幅広い功績を残した元知事の高田勇氏や、ノーベル化学賞を受賞した下村脩氏が亡くなったこと。県民の期待を背負ってJ1に参戦したV・ファーレン長崎は、残念ながら降格決定した▲県政の重要課題である九州新幹線長崎ルート整備については、財源に見通しが付き2022年の開業に一定のめどが立ったとの見解を示した。では、石木ダム問題は? 人口減少への対応は? 今年1年の取り組みについて、踏み込んだ自己評価を聞いてみたかった▲来年は自身3期目の2年目に入る。これまで以上に具体的な成果を示さなければならないと決意を語った知事。その言葉に期待して、新しい年の県政を見つめたい。(泉)

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