本社(長崎市)/イシグロさん 名誉市民 軍艦島/台風で上陸禁止

◎イシグロさん 名誉市民
 ノーベル文学賞を昨年受賞した英国人作家、カズオ・イシグロさん(64)。長崎市出身者として初めての偉業に対し今年3月、県は名誉県民に、長崎市は名誉市民に選んだ。
 イシグロさんは5歳まで長崎市で過ごした後、父親の仕事のため一家で渡英した。著作には戦後の長崎を舞台とした小説「遠い山なみの光」などがある。
 新作執筆のため来日が難しいというイシグロさんに証書と記念品を直接手渡そうと、中村法道知事と田上富久市長は7月、ロンドンに出向いた。授与式で、イシグロさんは「長崎はいつも私の一部であり、名誉称号を受けるのはある意味で自然なことと感じる。これまでいろんな賞をもらったが、今回の称号は特別で心温まる」と述べ、謝意を示した。
 イシグロさんは、長崎に度々メッセージを届けている。昨年は市長らに宛て「長崎の記憶が私の執筆の基礎」などと記した。今年11月には市民に「近いうちに長崎を訪問することを心待ちにしている」と言葉を寄せた。そこには古里への思いが十分に込められている。長崎の市民もまた、イシグロさんの再訪を心待ちにしている。

授与式で証書を受け取るイシグロさん(中央)。右は妻ローナさん=7月3日、ロンドン

◎軍艦島 台風で上陸禁止

柵が折れ曲がり、がれきが流入した歩行通路=長崎市、端島(市提供)

 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産の一つ「端島炭坑」(軍艦島)は、本県を襲った複数の台風被害のため、上陸禁止が繰り返された。10月6日朝、本県に再接近した大型で強い台風25号の被害は最も大きく、現在も観光客が上陸できない状態が続く。
 この台風で、船の接岸時の衝撃を和らげる防舷材が破損したほか、桟橋と島を結ぶ連絡橋の手すりが全壊した。見学通路にも土砂やがれきが流れ込み、工事のため上陸禁止になった。復旧費は約3100万円。
 島は7月と8月の台風でも損壊。市は度重なる被害の復旧に追われた。市観光政策課は、悪天候などで壊れそうな部品は一定量を備蓄。早めに取り換えられるよう準備をしている。ただ、今回は「これまでにない被害の大きさ。見積もりなどに時間を要した」と説明。「転落防止柵と防舷材をストックするため、来年度予算に計約4千万円の計上を考えている」と話した。
 見学再開は2月の予定。上陸料約2500万円の減収が見込まれる。自然災害は避けらないし、今後も起こり得る。今回の経験を教訓に、より良い保全管理や災害時の迅速な復旧に努めてほしい。

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