2019年になると「10年前」になってしまうサッカー界の出来事

「10年」という期間はワールドカップ2回半分。サッカーに限らず多くの物事が変わってしまうのに十分な期間だ。

そこで、この10年間がどれほどの期間であったのか実感するため、2019年になったら10年前になってしまうサッカー界の出来事を調べてみた。

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ガンバ大阪、天皇杯優勝で国内3大タイトル全制覇

ガンバ大阪と柏レイソルによる元日決勝。

ガンバの指揮官、西野朗監督にとって古巣対決となった一戦は、0-0のまま延長戦に入り迎えた116分、播戸竜二が決勝弾を決めてガンバが制した。

ガンバ大阪は前身の松下電器時代以来、18年ぶり2度目の天皇杯優勝。これにより、Jリーグがスタートした1993年以降に国内3大タイトルをすべて獲得した5つ目のクラブになった。

ちなみに、ガンバ以前は東京ヴェルディ(ヴェルディ川崎)、鹿島アントラーズ、ジュビロ磐田、浦和レッズ、以降では横浜F・マリノス、柏レイソルが全タイトル制覇を達成している。

「大迫半端ないって」

2018年夏のロシアワールドカップにおいて、時を超えて大きな注目を集め、新語・流行語大賞にもノミネートされたこの言葉。

大迫勇也は鹿児島城西のエースとして出場した第87回全国高校サッカー選手権で、4試合連続の2得点、1大会最多の10得点など、記録と記憶に残る大活躍。敗れた相手選手が漏らした“ぼやき”とともに多くのサッカーファンに知られる存在となった。

この大会は「大迫の大会」といって過言ではないが、優勝したのは広島皆実。鹿児島城西との決勝では大迫に先制点を許したものの、3-2の打ち合いを制して見事初優勝を飾った。

当時の優勝メンバーの一人が、東京ヴェルディのキャプテン井林章(決勝では大迫ともマッチアップ)。先日、地元のサンフレッチェ広島へ完全移籍することが発表されている。

ペップ・バルサ、史上初の6冠

2シーズン連続無冠に終わっていたバルセロナは2008年夏、OBのジョゼップ・グアルディオラが監督に就任。ロナウジーニョ、デコといった主力を放出する大鉈を振るいシーズンに臨んだ。

結果は、初年度からラ・リーガ、コパ・デル・レイ、CLなど全タイトルを獲得し、クラブ史上初となる6冠を達成。新生バルサの10番としてチームを牽引したリオネル・メッシは、自身初のバロンドールを受賞した。

現在ヴィッセル神戸でプレーするアンドレス・イニエスタのベストゴールの一つ、CL準決勝チェルシー戦での劇的弾が生まれたのもこの2009年である。

レアル・マドリー、C・ロナウドとカカをダブル獲得

ペップ・バルサに圧倒されたレアル・マドリーは2008-09シーズン終了後、大改革に着手。

会長に返り咲いたフロレンティーノ・ペレス氏のもと、ミランから2007年のバロンドールであるカカ(当時27歳)、さらにマンチェスター・ユナイテッドから2008年のバロンドールであるクリスティアーノ・ロナウド(当時24歳)を立て続けに引き抜き、世界の度肝を抜いた。

特にロナウドの移籍金は、当時歴代最高額の9400万ユーロ(およそ129億円)!加入初年度はブラジルのロナウドと同じ9番をつけ、2年目に代名詞である7番をラウール・ゴンサレスから受け継いでいる。

マドリーはこの年、彼ら以外にもカリム・ベンゼマやシャビ・アロンソらを獲得。逆に、オランダ代表組であるヴェスリー・スナイデルがインテル、アリエン・ロッベンがバイエルン、クラース=ヤン・フンテラールがミランへそれぞれ移籍し、チームが一気に様変わりした。

ヴォルフスブルク、ブンデスリーガ初優勝

“鬼軍曹”フェリックス・マガト監督に率いられ、ヴォルフスブルクが悲願のブンデスリーガ初制覇。

グラフィッチとエディン・ジェコの2トップが猛威を振るい、2人で54ゴールの大爆発。親会社フォルクスワーゲンの潤沢な資金をバックにしつつも派手ではない堅実な補強で手にしたクラブ初タイトルだった。

そしてこの時のチームには、長谷部誠、大久保嘉人という2人の日本人選手が在籍していたことでも知られる。

長谷部は25試合、冬に加入した大久保も9試合に出場し優勝に貢献。日本人選手としては1977-78シーズンの奥寺康彦(ケルン)以来31年ぶりのブンデスリーガ制覇となった。

岡崎慎司、世界得点王に

この年、岡田武史監督のもと、4大会連続のワールドカップ出場を決めた日本代表。イヴィチャ・オシム監督の急病による指揮官交代といったアクシデントを乗り越え、南アフリカへの道を切り開いた。

北京五輪世代の台頭が目立ってきた時期でもあり、本田圭佑や長友佑都が印象的なプレーを見せていたなか、世界的な記録を残したのが岡崎慎司だ。

1月のアジアカップ予選イエメン戦でA代表初ゴールを決めると、それを皮切りに得点を量産。国際Aマッチ16試合でなんと15得点を記録し、国際サッカー歴史統計連盟(IFFHS)により2009年の世界得点王に認定されたのである。

あのディディエ・ドログバらを押さえての偉業。対戦相手のレベルなどから当時は実力を疑問視する声もあったが、岡崎はその後もゴールを積み重ね、2017年には釜本邦茂、三浦知良に続き3人目となる「日本代表通算50得点」を達成している。

鹿島アントラーズ、Jリーグ初の3連覇

Jリーグきっての名門クラブ、鹿島アントラーズはこれまで数々の「初」を達成してきた。その一つが、リーグ3連覇である。

2009シーズン、現在浦和レッズを率いるオズワルド・オリヴェイラ監督のもと序盤から首位を快走。一時失速したものの、川崎フロンターレ、ガンバ大阪との優勝争いを制した。

オリヴェイラ監督は就任3年目で3度目の優勝。Jリーグ3連覇を達成したのはこのときの鹿島のみであり、2019シーズンの川崎はそれ以来となる快挙に挑む。

ちなみに、その鹿島対川崎の一戦で豪雨のため試合が途中で中止となり、後日3-1で川崎リードの後半29分から再開される珍事が発生したのもこの年。最終的に川崎が3-2でなんとか逃げ切った。

ジェフユナイテッド千葉、J2降格

前年、最終節で「奇跡の残留」を成し遂げたジェフユナイテッド市原・千葉。しかし、2度目の奇跡は起こらなかった。

残留に貢献したFW深井正樹を鹿島から完全移籍で獲得するなど補強に力を入れたはずだったが、開幕から下位に低迷。7月にアレックス・ミラー監督を解任し、OBの江尻篤彦監督に後を託すも最後まで上昇気流に乗れず、3試合を残してJ2降格が決まった。

下部リーグへの降格は前身である古河電工時代を含めクラブ史上初めて。このとき、まさか10年後にJ2での10年目を迎えることになるとは誰も思わなかったに違いない…。

千葉とともに降格したのは大分トリニータと柏レイソル。逆にベガルタ仙台、セレッソ大阪、湘南ベルマーレがJ1へ昇格している。

川崎フロンターレの「バナナ」と「算数ドリル」

現在J1連覇中の川崎フロンターレ。彼らに欠かせない「バナナ」は株式会社ドールとのスペシャルサプライヤー契約に因んだものだが、両者が最初に契約を結んだのが2009年である。

以降、特にバナナの被り物はインパクト抜群の見た目ですっかり有名となり、今ではどの選手も“覚悟”を持って入団してくることが知られている。

ちなみに、フロンターレ名物である「算数ドリル」も同じ年に誕生。クラブスタッフがロンドンで目にしたアーセナル所属選手の登場する教科書をきっかけに制作し(日本では前例がなかったため相当な苦労があったという)、バナナとともに今ではクラブの一部となった。

「楽しい」「面白い」をピッチ内外で体現する、Jリーグ史上でも異色の王者である川崎フロンターレ。2009年といえば準優勝に終わったヤマザキナビスコカップにおいて表彰式での一部選手の行動が問題になるという苦い経験もしているが、それらを含めクラブにとって一つの原点といえる年かもしれない。

最後に、2009年あるいは2008-09シーズンに行われた主要なリーグ・大会の優勝チームと得点王を紹介。UEFAカップはこの年で最後となり、翌2009-10シーズンからはUEFAヨーロッパリーグがスタートしている。

■Jリーグ
鹿島アントラーズ(オズワルド・オリヴェイラ監督)
得点王:前田遼一(ジュビロ磐田)

■プレミアリーグ
マンチェスター・ユナイテッド(アレックス・ファーガソン監督)
得点王:ニコラ・アネルカ(チェルシー)

■リーガ・エスパニョーラ
バルセロナ(ジョゼップ・グアルディオラ監督)
得点王:ディエゴ・フォルラン(アトレティコ・マドリー)

■セリエA
インテル(ジョゼ・モウリーニョ監督)
得点王:ズラタン・イブラヒモヴィッチ(インテル)

■ブンデスリーガ
ヴォルフスブルク(フェリックス・マガト監督)
得点王:グラフィッチ(ヴォルフスブルク)

■リーグ・アン
ボルドー(ローラン・ブラン監督)
得点王:アンドレ=ピエール・ジニャック(トゥールーズ)

■エールディヴィジ
AZ(ルイス・ファン・ハール監督)
得点王:ムニル・エル・ハムダウィ(AZ)

■UEFAチャンピオンズリーグ
バルセロナ(ジョゼップ・グアルディオラ監督)
得点王:リオネル・メッシ(バルセロナ)

■UEFAカップ
シャフタール・ドネツク(ミルチェア・ルチェスク監督)
得点王:ヴァグネル・ラヴ(CSKAモスクワ)

■コパ・リベルタドーレス
エストゥディアンテス(アレハンドロ・サベーラ監督)
得点王:マウロ・ボセッリ(エストゥディアンテス)

■コンフェデレーションズカップ
ブラジル(ドゥンガ)
得点王:ルイス・ファビアーノ(ブラジル)

■バロンドール
リオネル・メッシ(バルセロナ)

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