『この海/山/空はだれのもの』 米軍に傅く「不条理」告発

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 対米追従の「属国」の中で惰眠を貪(むさぼ)る国民に、「無知」の罪と主権者意識の覚醒を促す痛烈な批判の書である。

 同じ敗戦国のドイツやイタリアが主権と自治権を奪回する中で、戦後70年余を経てなおこの国の憲法すら支配下に置く「日米地位協定」。その“占領の残滓(ざんし)”に傅(かしず)き続けるこの国の不条理を、本書は抉(えぐ)り出している。

 基地外の民間地域に米軍機が墜落しても捜査権を行使できず、事故原因も知らされず、学校上空を飛び交う米軍機に子どもたちは怯(おび)え、逃げ惑う。

 そんな不条理に、この国の政府ができることは、飛行ルートの変更を拒否する米軍に怯える子どもたちに避難を呼び掛け、校庭に避難シェルターを造ってあげることだ。

 基地内を立ち入り調査し、国内法を適用し、米軍機の低空飛行を制限するドイツやイタリアとの違いに愕然(がくぜん)とさせられる。

 「主権の真骨頂」を示すルポが冒頭にある。米軍の低空飛行事故で多くの人命を奪われたイタリア軍幹部は、米軍に低空飛行訓練の原則禁止を求める交渉の場でこう通告する。

 「私はこの案をあなた方が許諾するかどうか、という議論をしていない。これは取引や協議でもない。米軍の飛行機が飛ぶのはイタリアの空だ。私が規則を決め、あなた方は従うのみだ。さあ署名を」

 国民を守るために米軍に毅然(きぜん)と立ち向かうタフなイタリア政府に比べ、米軍にモノ言えぬ日本の主権放棄、属国外交ぶりが、あまりにも対照的だ。だが、同種の事例が随所でふんだんに紹介され、枚挙にいとまがない。

 選挙で示された米軍辺野古新基地拒否の「民意」を無視し、基地建設を強行する「属国政府」を生む原因は「ひとえに国民の無関心に尽きる」と本書は告発。主権を蝕(むしば)む米軍を相手に主権奪還のさまざまな手法を提示している。

 本書は昨年11月から今年6月の間「琉球新報」に掲載された連載「駐留の実像」を基に加筆編集されている。同連載は、優れた啓蒙(けいもう)活動として「第18回石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞」を受賞している。

 (前泊博盛・沖縄国際大学大学院教授)

 
この海/山/空はだれのもの!?
米軍が駐留するということ 琉球新報社編集局 編著
四六判 256頁

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