個性はどうやって見出すもの? ダンサーの徳岡亜希子さんと森知子(さとこ)さんが「個性」をテーマに対談

お二人の出会いは?

徳岡 ニューヨークで一番大きなストリートダンスのイベントがあって、7、8年前にそこで顔を合わせたのが最初。しばらくあいさつする程度でしたが、最近は仕事も一緒にしています。

 ここ数年でグッと仲良くなったね。仕事の現場で会うし、共通の知り合いも多い。この前は私が振り付けを担当したアーティストのPVで亜希子ちゃんにメーンのダンサーとして出演してもらいました。

今回、テーマは「個性」ということですね。

徳岡 記事を読む人に、自分たちの経験から何を伝えられるかと考えたら「個性」かなと。オーディションに受かるには技術があるのは前提で、その上に個性が求められる。じゃあ、その個性って何だろうって2人で考えてきました。

 ここには世界中から人が来ているからレベルが高いのは当たり前。オーディションや現場という限定された時間や空間で、自分の良さ、「個性」をパッと瞬時に出さないと、オーディションに受からないし、次の仕事につながらないんです。

どんな仕事も、ここではそうだと思いますが、まずしっかり自分の意見を言わないと伝わらないですよね。こっちに来て初めて受けたオーディションで、自己紹介のとき、アメリカ人の女の子が「ピックミー」って言ったんです。日本人だとなかなかできない。「この国はすごい。こんなに自分を出していいんだ(笑)」とほんとに驚きました。

徳岡 オーディションは数をこなして見えることもあります。こういうキャストを探しているときには、こういう人が受かるんだというのは行って経験しないと分からないです。

 ヘアスタイル、メイク、衣装、ルックスも合わせて狙ってくる。うまい子から学んで、研究して今がある。その上で個性だよね。

個性はどうやって見出すものなのですか?

 私は自分にしかない強みを見つけ、突き詰めていく。それが自信につながり、個性になると思っています。 それがパッと見て皆をひきつけるような存在感を放てたらいいですよね。

徳岡 私は、自分がもともと持っているものを磨くというか。ただ自分では気付かないこともある。私は周囲の客観的な意見を聞きます。私はなで肩でドレスを着たとき、弱そうに見えて自分ではコンプレックスでしたが、「着物が似合う」「着物だとはまる」とか、よく言われる。だったら、それも個性と捉えて強みにしようと。それが仕事につながってきました。

 個性が光っていると、求めているタイプではなくても、「この子だったら、こっちにハマる」と、別のキャストで選ばれるんです。

お互いの個性は、どう見ている?

徳岡 ちゃんとやらなさそうでちゃんとやる(笑)。ノリが良くてふわっとしてそうで、仕事はプロフェッショナルに責任感を持ってこなす。だから好き。

 亜希子ちゃんはアーティストであり職人。最初に会った時からソロで活躍していてスキルはあるのに、ダンスだけじゃなく、フィルム、演技も磨いている。それを一つの芯、個性を持ってやっているから長く続けているんだと思う。

時代とともに求められるものは変わりますよね?
 確かに求められるスタイルはどんどん変わるし、自分もデベロップする必要があります。でも個性はぶれずに持っていないとその辺のダンサーと同じになっちゃう。

徳岡 私は掛け合わせだと思うんです。ダンスを踊れるだけでなく、インストラクターの資格も持っているとか、掛け合わせた先に誰もいない領域がある。それって、中には10年かけて身に付けることもありますが、自分が変われば今すぐにできることもある。

 そうやって、磨いたり、自分で得てきたことが個性になって、やっぱり仕事に生きていくんですよね。

徳岡亜希子

15歳でダンスを始める。龍谷大学経済学部卒業。来米後はニューヨークファッションウイークでのダンスショーやオフブロードウェーショー、「Heather Smiley For President」「WAR+LOVERS」などに出演。現在、当地を拠点にダンサー、振付家、役者として活動中。www.akikotokuoka.com

森知子

3歳でピアノ、9歳でダンスを始める。東邦音楽大学ピアノ科卒業後、ピアノ、ダンス講師、ボイストレーナーを経て2008年来米。当地を拠点にダンサー、振付師、キーボード奏者として活動。NFLハーフタイムショー、日本では志村けん一座の舞台の振付も担当。Bloc talent agency所属。インスタグラム@tokebabe

© Trend Pot NY,LLC