タチウオ激減、島を去るIターン漁師も 瀬戸内海西部「こんなにひどい年は…」

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 瀬戸内海西部を回遊するタチウオの漁獲が激減し、広島、山口県内の漁業者に深刻な打撃を与えている。広島県のタチウオ漁2大基地の豊島(とよしま)=呉市豊浜町=と因島(尾道市)では今シーズン、ベテラン漁師が「こんなひどい年は初めて」と嘆くほど。タチウオのブランド化を進める豊島では、移住した新規漁業就業者が島内でほかの働き口を求めたり、島を去ったりするケースも出ている。

 両県沖のタチウオ漁は主に5月から1月半ばまで引き縄釣りで行われ、11、12月ごろが最盛期。漁獲は5キロ詰めの箱で出荷する。

 20年前から続ける尾道市因島洲江町の角好美さん(65)は「去年まで1日に5~10箱は釣れたが、今シーズンはせいぜい2、3箱。ゼロ同然の日もある」と不漁続きに落胆を隠せない。アナゴやタコ漁に転じる漁業者もいる。

 2009年からタチウオの共同集出荷を始めた豊島では、12年度の446トンをピークに減少。17年度は46トンに落ち込み、本年度はシーズン終盤なのに10トン(16日現在)にとどまる。大阪市場などに直接運んで「豊島タチウオ」ブランドも定着していたが、不漁で呉豊島漁協のトラックも動かない日が増えた。

 山口県内でタチウオ漁が盛んな周防大島町の安下庄(あげのしょう)漁港でも、16年度の79トンから17年度は35トンに急減。本年度は17トン程度(山口県漁協安下庄支店推計)とさらに半減しそうである。

 かつて魚群探知機に山のように映っていた群れは姿を消し、小型魚の比率が増えたという。漁獲激減について7月の豪雨との関連を疑う漁業者もいるが原因は定かでない。イカナゴ、イワシなど餌の減少を指摘する人も多い。

 後継者難の豊島では、呉市の新規漁業者支援制度を活用して11年度から計10人の移住者を全国から受け入れた。タチウオ漁と冬場のヒジキ採りで生計を立てる計画だっただけに、漁獲急減は「Iターン漁師」たちには大打撃。サザエ潜水漁やレモン栽培、電気、建設関係など他の仕事をしながらしのいでいる。昨春と今年、2人が漁を断念して島から去った。

 千葉県から5年前に移住してきた戸谷拓未さん(28)は今シーズン、5回タチウオ漁に出たが出荷できたのは1回だけ。サザエ採り、マダイ中間育成などで生計を補い、「不漁が来シーズンも続くなら、将来どうすればいいのか」と先行きを案じている。

引き縄漁で釣れたタチウオ。この日の漁獲は2箱どまりだった(11月12日、尾道市因島洲江町の角さん方)