育成力で現在はセ最強も、10年前は4位低迷 2008年の広島を振り返ると…

現在はドジャースで活躍を見せている前田健太【写真:Getty Images】

ブラウン監督3年目は上位浮上ならず、野手では東出がベストナイン

 10年ひと昔という。10年前の野球界はどんな様子だったのか。2008年の野球界を数字で追いかけよう。最後は今を時めく人気球団の広島だ。

2008年 広島東洋カープ 69勝70敗5分 勝率.496 4位

 広島でのプレー歴もあるマーティ・ブラウン監督の3年目。開幕から4連敗という出足だったが、以後も勝ったり負けたりを続け、一度も上位に浮上することはなかった。しかし、交流戦で13勝11敗と勝ち越したこともあり、3位中日とは競り合ったが、最終的に2ゲーム差でクライマックスシリーズ(CS)出場を逃した。

○打線 左端の数字は打順、打率の横の()は順位

1二・東出輝裕(28歳) 138試522打162安0本31点13盗 率.310(9)
2外・赤松真人(26歳) 125試342打88安7本24点12盗 率.257
3外・アレックス(36歳) 142試569打174安15本76点3盗 率.306(14)
4一・栗原健太(26歳) 144試557打185安23本103点5盗 率.332(3)
5三・シーボル(33歳) 110試400打109安15本53点0盗 率.273
6外・天谷宗一郎(25歳) 135試392打103安4本24点13盗 率.263
7遊・梵英心(28歳) 97試287打65安1本17点8盗 率.226
8捕・石原慶幸(29歳) 123試422打112安9本50点6盗 率.265(26)
外・嶋重宣(32歳) 108試301打93安7本35点0盗 率.309
遊・小窪哲也(23歳) 98試274打74安3本19点1盗 率.270
外・前田智徳(37歳) 84試174打47安4本29点0盗 率.270
捕・倉義和(33歳) 48試121打25安2本11点0盗 率.207
三・喜田剛(29歳) 66試92打22安4本11点0盗 率.239

 チームを支えた前田智徳が前年の124試合から出場試合数を大きく減らし、代わって栗原が初めて100打点を記録。松坂世代の東出、梵の二遊間も定着した。栗原はゴールデングラブ、東出はベストナインを受賞。3割打者は3人いたが、長打力がなく、迫力に欠ける打線だった。

投手陣はルイスが牽引、2年目の前田健太も9勝をマーク

○投手陣 防御率の横の()は順位

先・ルイス(29歳)26登15勝8敗0SV0HD 178回 防御率2.68(2)
先・大竹寛(25歳)28登9勝13敗0SV1HD 171回 防御率3.84(10)
先・高橋建(39歳)21登8勝5敗0SV0HD 115回2/3 防御率3.50
先・前田健太(20歳)19登9勝2敗0SV0HD 109回2/3 防御率3.20
先・篠田純平(23歳)15登3勝4敗0SV0HD 64回2/3 防御率4.31
先・長谷川昌幸(31歳)14登3勝6敗0SV1HD 59回2/3 防御率6.94
先・宮崎充登(30歳)12登1勝6敗0SV0HD 47回 防御率6.89
中・梅津智弘(25歳)64登0勝3敗1SV21HD 58回1/3 防御率2.62
中・青木高広(27歳)24登0勝3敗0SV1HD 55回1/3 防御率4.72
中・シュルツ(29歳)55登3勝4敗0SV18HD 53回 防御率3.23
中・上野弘文(27歳)42登2勝2敗0SV8HD 48回2/3 防御率4.81
中・横山竜士(32歳)38登5勝1敗3SV16HD 42回 防御率1.50
抑・永川勝浩(28歳)56登4勝1敗38SV5HD 61回 防御率1.77

 ルイスが奪三振王を獲得。安定感は抜群だったが、大竹は援護点に恵まれず9勝どまり。ベテランの高橋と2年目の前田健太がこれに続いた。救援陣では、永川が38セーブと優秀。梅津、横山も計算ができたが、セットアッパー陣は枚数が足りなかった。

 この顔ぶれで現役は、野手陣では赤松と石原、小窪。赤松は2016年に胃がんが見つかり手術ののち、今季2軍戦に復帰。チームも復活を応援している。石原は今季、広島の捕手として初めて1000本安打を記録した。天谷は今季引退を発表した。

 投手陣では永川が広島で現役。今季は今村猛の不振に伴って中継ぎとして貴重な役割。前田健太はドジャースへ移籍。大竹寛は巨人にFA移籍した。

◯ドラフト会議

1位 岩本貴裕(外野手)亜細亜大学
2位 中田廉(投手)広陵高
3位 小松剛(投手)法政大学
4位 申成鉉(内野手)京都国際高
育成
1位 松田翔太(投手)金沢学院東高

 亜細亜大のスラッガーで、投手としても片りんを見せた岩本を1位指名。岩本は今も現役。2位の中田も中継ぎ投手として健在だ。

「タナキクマル」をはじめとする人気選手がラインナップに並ぶ現在の広島と比べると今昔の感がある。この10年で、広島は生え抜きの有力な選手を次々と育成し、セ・リーグ3連覇を果たしたのだ。広島の育成力を実感する。

 2008年の観客動員は139万人、2018年は223万人。広島は10年で大きく変貌したのだ。(広尾晃 / Koh Hiroo)

© 株式会社Creative2