ソバ栽培が盛んな長崎県五島市富江町の山下地区で30日、地域に古くから伝わる「そば振る舞い」があった。各世帯でそばを打ち、帰省した家族と共に味わったり、近所で分け合ったりする年末の恒例行事。早朝から集落のあちこちで、そばをゆでるかまどからまきの煙が立ち上った。
谷合進さん(82)方では午前8時ごろから、息子夫婦と孫が集まり計7人で準備を開始。前日に進さんや妻和子(やすこ)さん(75)が7対3の割合でそば粉と小麦粉を練っておいた200食分の生地を、家族総出で延ばした。沖縄県から帰省した孫の恵輔さん(22)は「年越しには、家族で作ったそばが欠かせない」と慣れた様子で作業に励んだ。
やや太めに切りそろえた手打ちそばは、まきをくべたかまどの大鍋でゆで上げ、冷水で締めた。和子さん手作りのかけ汁は、焼いたサバでだしを取り、ゴボウやシイタケ、ニンジンなどを煮込んでいる。手打ちそばは近所や親戚に配る。
作業が一段落すると家族でテーブルを囲み、1年を振り返りながら温かいそばをすすった。進さんは「毎年、子や孫と一緒にそばを打てるのが楽しい。来年も家族が健康で過ごせれば」とほほ笑んだ。