岩政×能登の年末特別対談「憧れの選手、ゾーンに必要な要素、2019年の目標を語る」

十二月某日。

関東一部リーグ、東京ユナイテッドFCで共に戦った二人を招き、特別対談を開催させて頂いた。

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その二人とは、今季終了後に現役引退を表明し、既にサッカー解説者などでも活躍中の岩政大樹。そして、Qolyでもすっかりお馴染みの「さすらいのフットボーラー」こと能登正人だ。

「二人でここまで深く話したことはなかった」と語るほど盛り上がった対談はあっという間に数時間が経過。これからその模様を数編に分けてお届けするので、是非ファンならずともお楽しみ頂きたい。

含蓄のある話ばかりが飛び出した熱いトークには、サッカー好きはもちろんのこと、サッカーをしている子供を抱える親、現役のサッカープレーヤー。そして、サッカーとは無縁の方の胸にも突き刺さる魅力が詰まっている。

インタビュー・文:編集部T

写真協力:東京ユナイテッドFC(公式HP

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Qoly(以下、太文字━━)最後にQolyユーザーの皆様から質問が届いているので、可能な限り、お答え頂ければと思います。

能登
まだ大事なやつが残ってた(笑)

━━はい(笑)まず一つ目の質問です。子供の頃の話も出ましたが、子供の頃に憧れていた選手はいらっしゃいましたか?

能登
僕はジネディーヌ・ジダン(改めて説明するまでもない伝説的なプレーヤー。監督としては昨季レアル・マドリーでCL三連覇の偉業を達成した)ですね。

岩政
おー、ジダンか。

能登
ジダンって「なんかキレイだな」って思える選手だったんですよね。何でこの人キレイなんだろうと研究していました(笑)

岩政
たしかに、優雅な選手だったよね。今の選手を見てもあの優雅さを持っている選手はなかなかいない。

能登
後、僕と似ていて足が細い(笑)

岩政
僕はロベルト・バッジョ(ユヴェントスなど名門クラブで活躍した元イタリア代表FWで、近代サッカー史に残る名ファンタジスタの一人)ですね。上手さはもちろんのことなんですが、あの生き方そのものに憧れました。

94年W杯では、予選で監督にメンバーから外されたり、怪我を抱えたりの中で本大会に挑み、決勝ラウンド一回戦の試合終了間際にようやくゴールを入れて、延長戦では決勝点。そこからも満身創痍で立ち向かっていったという、あの姿勢が本当に格好良くて、その後も順風満帆ではなかったんですよね。

度重なる怪我や監督との確執もある中、バッジョはその度に這い上がってくるんですよ。当時彼を好きだった人間の多くが、あの生き方に憧れを持っていたんじゃないでしょうか。

━━ビッグクラブに所属しても多くの不遇を経験した選手ですからね。

岩政
そうなんです。それも含めてドラマティックな選手でした。ファンタジスタが生き場を失う時代の流れの中、本当に彼は絶滅危惧種でしたし。

そして、クリスティアーノ・ロナウドやリオネル・メッシのように完璧じゃないところもいい(笑)

体もひ弱な選手でしたし、ボロボロの膝を抱えながらも戦う姿がたまらなかったですね。

━━サッカーをやっている子供であれば、憧れの選手は誰かしらいると思いますが、そのように憧れの選手を持つことはどうでしょう?

能登
一人に偏るのではなく、色々な選手を見ることのほうが意味はあると思いますね。

後、子供の頃はそこまで周りと比較しないほうがいいんじゃないかな。「誰々がナショナルトレセンに行っている」とか、そういうことは気にしなくていい。

━━なるほど…これはサッカーをしている子供がいらっしゃる親御さんに是非読んで欲しい考えですね。

能登
自分も全く気にしないタイプでしたが、結局、人と自分は違うわけで、そういう周りのことを考えないようにしたほうが伸び率みたいなものも上がると思います。

━━続いてですが、一人のサッカー選手として評価した時、岩政選手が考える能登選手の魅力や注目点を教えて欲しいという質問が来ました。

能登
ないでしょ(笑)フワっとしている選手なので(笑)

岩政
んー、パスにしろ、キープにしろ、シュートにしろ、攻撃の面で“個”はあると思います。ただ、それよりも長所に感じるのは、良い意味で「試合の流れに乗らない」というところですね。

例えば、0-0で試合が膠着状態になると、多くの日本人選手がそのスコアの流れに沿っていっちゃうんです。その流れに関係なく「打開しよう!」とはみ出す感覚を持った選手は少ない。でも、彼はそこを持っているので、日本の中では面白いと思いますね。

能登
ありがとうござます!これからも頑張ります(笑)

━━逆に能登選手に。東京ユナイテッドでは岩政選手はコーチとの兼業でしたが、「指導者・岩政」として印象的なエピソードはありますか?

能登
全てが貴重でしたけど、大樹さんの一言って、皆がめちゃくちゃ反応するんですよね。「大樹さんがこう言っているよ」みたいな感じで。

僕は自然に「こういう話があったけど、自分はこの状況ならこうするな」って考えるタイプですが、大樹さんはすごいバランスを取りながら話しているなと思いながら聞いていました。

なんというか、大樹さんは先生なんですよ。間違っていることはちゃんと正してくれるし、人として「この人に付いていきたいな」と思える人ですね。

岩政
指導者として知識は当然アップデートしていきますが、あまり選手たちに口うるさく言わないようにしたいなとは考えていました。プレーする楽しさを忘れさせたり、やらされいる感を与えてしまったりすることは避けるようにと言うか…。

━━ロベルト・バッジョの時代を持ち出すと、アリーゴ・サッキ監督(1980年代後半から1990年代前半にかけて、ミランで黄金期を築き上げた名将だが、その徹底した指導で選手との確執も多かった)のような指導者にはなりたくないという感じでしょうか?

岩政
というより、そこは伝え方次第かなと。

サッキにしても、むしろ、あそこまで練度の高いサッカーを行えていたわけで、つまりは選手も前向きに挑戦できていたはずなんですよね。もちろん、外から見るだけでその全容はわかりませんが。

ただ言えるのは、日本で指導者があそこまでがんじがらめにしてしまうと、日本人はそこから個性を出すというのは難しいなと思います。サッキ時代のミランが強かったのは、あの中でも個性を出せる選手が揃っていたからですが、日本人にはそういう選手が少ないですからね。

━━三つ目の質問は、一風変わったものです。お二人はそれぞれ過去に海外でプレーされていましたが、その時に日本にいるサポーターからされて嬉しかったことなどはありますか?

能登
面白いな、応援の仕方ですか(笑)

━━なかなか海外にいる選手を日本からどのように応援したら良いかがわからない方も多いようです。

岩政
僕は情報をチェックしてくれているだけで嬉しかったですよ。

能登
そうですね。さらに、周りにそれを伝えてくれたら、なお良しです。口コミとかでいいから(笑)

岩政
海外にいると、自分たちのことが全然伝わっていない感があるんですよ。勝った負けたとかもそうだし、そもそもプレーしているかどうかさえ。

実際、日本に帰ってきた時に「ちゃんと試合出ていますよ」って話をしたら、「そうなんだ~」というリアクションも多かったですからね。だから、何か取り残されている感はありました(笑)

いつもチェックしている人は改めてそれを誰かに言うようなことって少ないのかもしれませんが、チェックしているよということを示してくれるだけで有難いですね。

━━SNSとかで情報を発信してくれていることがわかるだけでも嬉しいことなんですね。これは多くのサポーターの役に立ったのではないでしょうか。

能登
はい、それだけでも十分です!

━━続いて、先ほどのロベルト・バッジョとも関連するところはありますが、チームメイトや対戦した相手選手の中で「この選手はファンタジスタだなや「自分が彼らの世界やタイミングに引きずり込まれている…」みたいに感じた選手がいれば教えてください。

岩政
「天才」ということで言えば、野沢拓也(鹿島アントラーズ時代に岩政と共に活躍した、攻撃的MF。昨季は豪州二部でプレー)かな。

━━その心は?

岩政
もう天才過ぎて意味がわからない(笑)

サッカー選手としての巧さで言うと、他にもいるとは思いますが、「こいつ、何考えているの?」というのが非常にわかりづらかったですね。頭の構造自体が違うか、頭の中の何かの回路が違うのかなと見てましたね。

━━自分のプレーで「あ、何かいつもと違う感覚でプレーできているな」と感じたことはありますか?

岩政
それはありましたよ。その状態をいかにして作り出そうかと考えながらプレーしていました。

最後の局面の瞬間にいかに無意識状態を作れるかが重要で理想的なんです。周りの人はそれを「ゾーン」と呼んだりすると思いますが。

ただ、その状態を作り出すことが難しい。色々な条件がハマった時に初めて起こるんですよ。体もメンタルも整っている、そして、緊張すぎ、緩めすぎもダメ。狙っていてもなかなか毎回はなれません。

━━同じ質問で能登選手はいかがでしょう?

能登
育成年代で一番衝撃を受けたのは柿谷曜一朗さんですかね。一つ上の年齢ですが、はるか上の存在でした。

「ちょっと右足ケガしてん。だから、左足でフリーキック蹴るわ」と言った後、試合中に本当に決めちゃうんですよ(笑)次元が違うなと思った選手の一人です。

もう少し年齢が上になってからで言えば、ドイツのハノーファーでトップチームに参加していた時のパンダ―とかですかね。

「なんでこいつの左足、こんなに蹴れるんや」「どんな構造やねん」っていつも見てました(笑)

でも、パンダ―だけではなく、各選手が凄まじい武器を持っていたので、「あ、こういうレベルの選手がトップになっていくんだ」と勉強させられましたね。

で、これからもっと学べそうだなと思ったところで、怪我しちゃったんですけど(笑)まぁ、これも僕の人生です(笑)

━━プロになってからはどうですか?

能登
となると、インドネシアでエッシェンとガチガチのバトルをやった時にも感じましたね。なかなかあのクラスの対戦する機会はないですが、落ちているとは言え、やっぱり、「エッシェンはエッシェン」でした。

━━「腐ってもエッシェン」ということですね。

能登
そう、「腐ってもエッシェン」でした(笑)

危ない場面で肘入れて止めたんですが、「クレバーだね」って褒めてもらえて、それでユニフォームも交換してもらいました。彼との対戦は嬉しい経験でしたね。

━━ゾーンについてはいかがでしょうか?

能登
僕は19歳の時にめちゃめちゃゾーンに入っていたんですよ。

岩政
ほう、19歳で?

能登
給料払われずにお金がなくて、ペペロンチーノしか食べれない頃です。体はガリガリでコンディションも良い状態ではなかったと思いますが、たぶん、あの時は目の色が違ってましたね。

当時は「サッカーで死んだら自分は死ぬ」という覚悟でやっていて、改めて思い返してみても、あの時の自分は何かが違っていたような気がします。

岩政
ゾーンって面白いもので、色々なことをやっている時期には入れないんですよね。「自分はこれしかない、ここしかない」と思える時じゃないと。

だから、彼の言う、「生き残れないと死ぬかもしれない」という感覚はまさしくで、そういう感覚に入るレベルに入っていくためには「一筋」で挑まないとダメだと思います。周りの情報とかも遮断して、自分の世界に入るというか。

能登
「禅」に近い感覚ですね。

━━世界のトップレベルはそのゾーンに自然に入っていきやすいのかと思いますが、その理由は「ゾーンに入りやすい環境でプレーしているからこそ」ということもあるかもしれませんね。

能登
本当にトップレベルになってくると、色々なプレッシャーがって、その圧力も計り知れないものだと思うんですよね。メディアもそうだし、サポーターもそうだし、試合でもスタジアムの空気感が違うでしょうから。

━━となると、比較的プレッシャーの弱い日本では、ゾーンには入りにくいと言えるでしょうか。

岩政
まぁ、人間って基本的に自分に甘い生き物で、環境によって大きく左右されますからね。

もちろん、日本でやっている選手も「負けちゃいけない」という気持ちでやっていはいますが、比較的温かい空気感でやっているので、海外とはたしかに違うと思います。

━━そのようなクラスの選手になるには、若いうちからその環境に飛び込んでいくことが重要だと思いますか?能登選手も若くして海外に挑戦した選手ですが。

能登
泥水を飲んで成長できたので、僕にとっては良かったかなと思いますね。今の僕があるのは、この時代に見てきたこと、やってきことがあってのものだと思っているので。怪我したことも含めて経験かなと考えています。

━━近年はプロになってから海外に行くのではなく、プロ入り前から海外を目指す選手も増えてきましたが、その成果はいずれどこかで現れてくると考えていますか?

岩政
とにかく、選手次第かなと思います。コツコツ積み重ねてそのレベルに達する選手は当然いるし、その一方で、まずはその先の世界に触れることによって成長する選手もいる。本当に人それぞれだなと思っています。

一概に「若くから海外に行けばいい」とは言えないと思いますし、行くならどのような目標を持って行くのか。行かない場合もどのような考えを持って行かないのかが重要ではないでしょうか。

ただ、外に触れることで、自分の常識や固定概念を外される経験をするので、それは大きいかなと。日本は島国と言うこともあり、独自の固定概念を持ちやすいんですよね。でも、それって本当に狭い世界での話に過ぎない。

だから、どこかのタイミングでそれを取っ払うために海外に行くという意味は大きい気がしています。いくら日本の中で「その常識は当たり前じゃないんだぞ」と思っても難しいですからね。

能登
海外に行くと、ことあるごとに頭の中をぐちゃぐちゃにされますからね。「あれ?これ正解ちゃうんか?」ということばかりでした(笑)サッカー以外のところも含めて。

岩政
外に出れば「こうじゃなくてもいいんだ」と思えるので、自然体になりやすいとも言えるかもしれません。

━━いよいよ最後の質問です。お二人の2019年の目標を教えてください。

岩政
既にやっている『LINE LIVE』、これから始めるメルマガ(PITCH LEVEL ラボ)もそうですが、他にも考えている企画とかあるので、自分で「やってみたい」と動き出したもので成功したい(笑)

これってけっこう大きいことで、解説業とかは「初心者としてやらせて頂いております」的な感覚で出来るんですが、「これやってみたいです」というものはより大きな責任が掛かりますからね。

能登
僕も同じくです。もちろん、サッカー選手である以上、中心はサッカーですが。自分を表現するものとして洋服など色々と活動しているので、そこは続けていきます。

何をもって成功かは難しいですが、僕と絡んでいる人がハッピーになれるようにという気持ちで頑張りたいですね。

あ…実は、最近、犬を飼い始めたんです!なので、その犬が健康に育っていって欲しいなと(笑)

岩政
え、そういうのでも良いの?なら、僕も娘が健康に育ってくれるようにといつも願っていますよ(笑)

<了>

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今回の特別対談開催を記念して、サッカー業界内外で大きな話題を生んだ岩政大樹の著書『PITCH LEVEL』をプレゼント!背表紙には本人の直筆サイン入りです!!

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