「未来」の「未」

 きょうが30歳の誕生日だという。五輪に初出場して10年が過ぎ、ロンドン五輪で初の金メダルを手にして今年で7年になる。言うまでもない、体操の内村航平選手(諫早市出身)はもう長いこと、輝かしい実績を残してきた▲元日付の小紙の「第4部」で抱負を語っている。既に王者である人が、1年半後の東京五輪に「出られたら、それだけで満足してしまうんじゃないかなって思うくらい最高の場所」と憧れ、「絶対にものにしたい」と言う▲「既にして」の「既」ばかりでなく、「未来」「未知の」「未(いま)だに」と言うときの「未」も胸に抱く。偉業と言うべき結果を出してなお、憧れや高揚感をもって前を向く人がまばゆい▲第一人者が世界最高の舞台に懸ける思いを、凡庸のわが身で心底分かるはずもないのだが、「未」を胸に置いて前を見る心持ちは、年の初めにとりわけ清新に映る▲元日付の第4部には、プロ野球で昨シーズンの最多勝と最高勝率の2冠に輝いた、広島カープの大瀬良大地投手(大村市出身)の抱負もある。「長崎にいる人たちのために頑張りたい、という思いで毎年を始めている」▲その言葉をうれしい限りと思いつつ、「○○のために」と前を向く姿が、これもまた清新に映る。人それぞれに違いない、「○○」に当てはまるのは何だろう。(徹)

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