タッキー滝沢秀明さん最後の主演ドラマ「孤高のメス」 原作は淡路島の診療所医師の小説

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ドラマ「孤高のメス」のパンフレットを手にする大鐘稔彦さん=南あわじ市阿那賀、阿那賀診療所

 兵庫県南あわじ市阿那賀の阿那賀診療所の医師、大鐘稔彦さん(75)の小説「孤高のメス」がWOWOWで連続ドラマ化され、13日から放送が始まる。1980年代後半の医療現場が舞台だが、患者と向き合い、臓器移植にも立ち向かう医師のメスは、30年たった今も輝き続ける。主人公を描き出した大鐘さんが同診療所に赴任して1月でちょうど20年。ドラマへの期待やへき地医療について聞いた。(高田康夫)

 「孤高のメス」は累計160万部の大ベストセラーとなり、2010年に映画化。今回のドラマでは、大鐘さんはシナリオ段階でチェックを入れた。病棟と手術室の看護師は違うこと、救急車の到着現場に医師は駆け付けないことなどを指摘し、肝硬変を起こした肝臓の色など細部にもリアリティーを求めた。

 物語の主人公は、大鐘さん自身の体験を基に描き出した医師、当麻鉄彦。当麻は患者を救うために法制化前の臓器移植に挑む。「あり得ないような手術をする天才ではなく、日本のどこかにいそうな“等身大のヒーロー”」。そんな姿に多くの人は共感する。

 ドラマで当麻を演じるのは滝沢秀明さんだ。今年からプロデュース業への専念を発表しており、最後の主演ドラマの注目度は高い。撮影前、大鐘さんは滝沢さんと会い、器具の持ち方や手術時の糸結びの方法などを実演した。滝沢さんは熱心に動画を撮影し、大鐘さんの知人医師の手術にも立ち会って学んだという。

 「さわやかで私のヒーロー像にぴったり。私が伝えたかったことがちゃんと伝わっていると実感した」。昨年12月の試写会を見た大鐘さんは期待する。

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 当麻のように難手術に臨んできた大鐘さんだが、55歳でメスを置き、1999年1月、同診療所に16代目の医師として赴任した。それまでの医師の在職期間は最長で9年4カ月。多くが短期間で去る中、丸20年の節目を迎えた。

 大鐘さんはしっかり検査できる機器をそろえることから開始。年間10件程度のがんを見つけており、住民の早期治療に役立ててきた。大鐘さんが相談を受け、小説で描かれた生体肝移植を受けた患者もいた。

 現在は定年のない嘱託医師として勤務しており、「80歳まではやるつもり」と話す大鐘さんは、その後を心配する。「今のような採用を続けていては、どんな医師が来るか分からない」

 かつては、医師を確保し、医療の空白をつくらないために、旧丸山小の校舎を病院にする提案を旧西淡町にしたこともある。「へき地医療のレベルをどう保つか。大局的な見地に立って医療を考えてほしい」と同市に要望する。

 WOWOWドラマ「孤高のメス」は日曜午後10時。第1話無料。全8話。