【MLB】2018年の大谷翔平名場面 “幻の完全”にメジャー洗礼…編集部が選ぶ5傑【投手編】

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

右肘故障で戦線離脱も、全米に衝撃十分なパフォーマンス披露

 メジャーでも二刀流を継続し、ベーブ・ルースと比較される中で日本人17年ぶり4人目の新人王を受賞したエンゼルス大谷翔平投手。昨季は右肘内側側副靭帯を損傷するなどシーズンを通した活躍はできなかったが、日本ハム時代に見せた高いポテンシャルはメジャーでも通用することを証明した。

 投手・大谷は、昨季10試合の登板にとどまったものの、4勝2敗、防御率3.31。51回2/3で63三振を奪い、WHIP(1イニングあたりの四球+安打)1.16の成績を残した。時速100マイル(約161キロ)を超える剛速球、切れ味鋭いスライダーで沸かせた投手・大谷の名場面から、Full-Count編集部では独自にトップ5を選出。記憶に残る名場面を振り返りたい。

○第5位:世界一レッドソックスから浴びたメジャーの洗礼

 開幕2連勝で迎えた4月17日の本拠地レッドソックス戦は厳しい投球となった。初回、先頭のベッツにフルカウントから97マイル(約156キロ)の直球を捉えられ、左中間ソロを被弾。先頭打者弾はメジャー初の屈辱だった。2回は2安打2四球などで2失点。スプリットの制球に苦しみ、13球を投げて空振りゼロ。右手中指マメの影響で降板し、メジャー自己最短の2回4安打3失点だった。

 シーズン終了後、大谷は昨季対戦した中で1番印象に残った打者にベッツを挙げていた。ベッツは打率.346で首位打者。32本塁打、30盗塁でトリプルスリーも達成し、自身初のMVPを受賞するなど、チームのワールドシリーズ制覇の原動力となった。投手復帰が期待される2020年以降の直接対決は注目されることとなりそうだ。

○第4位:イチロー御前試合で快投

 5月6日の敵地マリナーズ戦は、憧れのイチローの眼前で6回0/3を投げ、6安打2失点6奪三振と快投。4月中に負った右手中指マメや左足首捻挫の影響も感じさせず、1か月ぶりの3勝目を挙げた。日本を代表する投打スーパースターの直接対決が期待されたが、直前の3日にイチローは会長付特別補佐に就任し、シーズン中の欠場が決定。夢の対決は実現しなかったが、ベンチ裏でテレビ観戦していた天才打者から「そりゃあ対戦したいですよ。なかなか欠点が見つけづらい。特別な才能ですからね」と称賛された。

人生初の大手術も…衝撃的&歴史的投球の数々

○第3位:右肘内側側副靭帯再建手術(トミー・ジョン手術)

 最初に異常が明らかになったのは、6月6日の本拠地ロイヤルズ戦だった。4回を投げて4安打1失点で早期降板。当初、降板理由は右手中指のマメと伝えられていたが、試合後に大谷が右肘の違和感を訴えたという。球団は7日にロサンゼルスで多血小板血漿治療(PRP治療)と幹細胞注射を受けたと発表。メジャー初の故障者リスト入りして3週間のノースローが決まった。

 打者では7月に復帰したが、投手ではじっくりとリハビリを継続。7月下旬に投球練習再開の許可が出て、9月2日の敵地アストロズ戦で待望のマウンド復帰を果たしたが、またも受難が待ち受けていた。初回に最速99.3マイル(約159.8キロ)を計測していた直球の球速は3回に一気に低下し、140キロ台まで落ちた。5日の敵地レンジャース戦前に米テキサス州内の医療施設で検査を受け、右肘靭帯に新たな損傷箇所が見つかり、医師から手術を勧められたことを発表した。その後は打者として活躍を続けたが、25日に復帰まで1年以上を要するトミー・ジョン手術を受けることが正式決定。シーズン終了翌日の10月1日に手術を受けた。二刀流旋風を巻き起こす中で衝撃的なニュースだった。

○第2位:本拠地初登板での“幻の完全”

 4月8日のアスレチックス戦で本拠地初登板初先発。メジャー2戦目で初回先頭から19人連続斬りという圧巻の投球を見せた。7回1死でセミエンに左前安打を許して完全試合は逃したものの、150キロ台の剛速球とスプリットを駆使して7回91球、1安打無失点1四球と好投。メジャー自己最多12奪三振をマークし、衝撃的な開幕2連勝を飾った。

 1シーズンで3戦連発&12奪三振はメジャー初。チーム開幕10試合で2勝&3本塁打は1919年のセネタース(ツインズ)のジム・ショー以来99年ぶりの快挙だった。日本人先発投手のデビュー戦から2試合連続勝利はヤンキースの伊良部秀輝、ドジャースの石井一久、オリオールズの上原浩治、レンジャーズのダルビッシュ有に次いで5人目。オープン戦は防御率27.00と苦しんだ投球が嘘のようだった。

注目浴びるメジャー初登板で不安を一掃

○第1位:メジャー初登板初勝利

 注目のメジャー初登板は、4月1日の敵地アスレチックス戦だった。2点リードの2回、チャップマンに左中間へ逆転3ランを浴びたが、日本人メジャーで初めて計測した最速99.6マイル(約160キロ)の剛速球、スプリングトレーニングで対応に苦しんだスプリットで攻め、6回3安打3失点6奪三振。2016年のドジャース前田健太以来となるメジャー初先発初勝利を飾った。

 開幕戦に打者で先発出場し、開幕10試合以内に投手でも先発登板したのは1919年のベーブ・ルース以来99年ぶり。「ここまで来たんだ、というより、始まったな、というのが強い」と大谷。メジャーでの二刀流が本格的にスタートを切った。

 10月1日に右肘手術を受け、投手復帰は2020年以降となる。19年シーズンで投手・大谷は見られないが、帰国後の会見で「長期的に見たときに健康な状態で不安なく、マウンドで自分のパフォーマンスを出せるようになるのが一番。そのために必要な手術」と話していた。右肘手術から完治した投球が今から待ち遠しい。(Full-Count編集部)

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