4日午前6時15分ごろ、横浜市中区寿町4丁目の簡易宿泊所「扇荘別館」(鉄筋10階建て)で火災通報装置が作動した。5階の4室など計約80平方メートルが燃え、男女2人の遺体が見つかったほか、1人が意識不明の重体になるなど計8人が重軽傷を負った。神奈川県警が火元や原因の特定を進めている。
伊勢佐木署によると、511号室と隣の510号室の燃え方が激しく、いずれかから出火した可能性が高いという。死亡した男性は511号室内で、女性は510号室前の廊下で倒れており、県警は2人がこの2室を利用していた60代の男性と80代の女性とみて、身元の確認を急いでいる。負傷した8人も、主に5階の宿泊者だったとみられる。
署などによると、5階には、廊下の両側に16室と男女共用のトイレ、台所、エレベーター1基と外階段がある。各部屋は約6平方メートルの長方形。建物の2~10階はほぼ同じ構造で、出火当時は全体で約140人がいた。生活保護や訪問介護などの支援を受け、長期的に宿泊している高齢者や障害者も少なくなかった。
市消防局によると、消防法施行規則は簡易宿泊所の防火管理者に対し、年2回以上、消火や避難の訓練を義務付けている。実施に当たっては消防に報告する必要があり、担当者は「少なくとも扇荘別館では、昨年2月に訓練を実施した記録が残っている」と説明した。
市消防局は4日、火災を受けて、同市中区、神奈川区の簡易宿泊所10棟に立ち入り、法令違反の有無などを確認した。
生活困窮者らが生活拠点とする施設での火災は近年、県内外で相次ぎ、多数の死者も出ている。川崎市川崎区日進町では2015年5月、木造の簡易宿泊所2棟が全焼する火災があり、11人が犠牲となった。昨年1月には、生活困窮者らが住む札幌市東区の共同住宅が全焼し、入居者16人のうち11人が死亡した。