模索する専門性(7)通信制 アットホームな居場所

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不登校の生徒受け入れ

近年、福岡市中心部などで「通信制高校」の看板をよく見かける。通信制の生徒は学校に通うことなく、自宅で与えられた教材を一人で勉強するというイメージだったが、どうも様子が違うらしい。同市博多区のJR博多駅前にある第一学院高校博多キャンパスを訪ねた。

キャンパスはオフィスビルの5階。入り口の扉を開けると、職員から「こんにちは」と気さくに声を掛けられた。職員の執務スペースと談話室が一体になった開放的な空間では、先生と私服の生徒が楽しそうに話していて学校と言うより、アットホームな塾のよう感じだ。キャンパスには複数の教室があり、福岡県内や隣県の男女約100人が日々学んでいるという。

通信制高校は、卒業に必要な単位をレポートの提出やテスト、学校に通って指導を受けるスクーリングによって取得する。同校の場合、スクーリングのために兵庫県養父市の本校に年1回、泊まりがけで数日間通う必要があり、博多キャンパスでは生活習慣を身に付け、単位取得を補助するカリキュラムが組まれている。

生徒には朝9時半から午後2時半まで、基本の時間割が提示されているが受講は自由選択。キャンパスに通うのも、個人のペースに合わせて週1~2回から毎日とさまざまだ。

12月中旬、光友亮輔キャンパス長(36)が指導する「リトライ数学」の教室では、生徒11人が足し算引き算や1次方程式を復習していた。問題演習を繰り返しながら、光友さんは机を回り、解き方につまずいた生徒を個別指導していた。国語、数学、英語は小中学校の復習から大学受験レベルまで4段階の講義があり、学力に応じて受講できるようになっている。

学力に合わせ柔軟指導

通信制高校を選ぶ理由はさまざまだが、最近注目されているのが不登校が続いたり、発達障害などで学校生活に悩みを抱えていたりする生徒の“受け皿”としての役割だ。

博多キャンパスにも不登校を経験した生徒は少なくない。2年のケイゾウさん(17)=仮名=は全日制高校1年の時、学校に行くのが怖くなり不登校に。人と話すことも苦手になった。「親に迷惑を掛けたくないし、自分を変えたい」と編入を決めた。

マイペースな学び方が合い、同校では週1~2回から登校日数を徐々に増やし、今は毎日通う。周囲を笑わせることが楽しく「以前の自分は何でも無理だと諦めていた。固定観念を消し去れば、何でもできると気付いた」と笑顔を見せた。

1年のショウゴさん(16)=同=は、学校になじめず中学1年の1学期後半から別室の適応指導教室に通うようになった。生活リズムが崩れ、夕方に起きて夜はゲームをする生活が続いた。

いったん不登校になれば勉強が遅れる。復帰しても授業に付いていけず、劣等感が膨らんだ。悩んでいた2年の頃、同校のオープンスクールに参加。堅苦しくない雰囲気に好感を持ち、趣味の合う友達もできた。そのまま進学した。「中学校の頃はいつもうつむいていた。今の学校は前を向いて歩ける」。毎日一番乗りで登校し、歯科技工士を目指して勉強に励む。

光友さんは言う。「人間関係につまずいた生徒もおり、頭ごなしには接しない。良いことは褒めて、できないことはどうやったらできるか一緒に考える。生徒がいつでも相談でき、戻ってこられるような雰囲気づくりを心がけている」

前向けるよう背中押す

冬休み期間に入り、キャンパスでは中学3年生や高校生向けの個別相談会が開かれ、連日生徒が訪れていた。光友さんは「相談後、気持ちが楽になり、前向きになれたという人も多い。学校になじめず思い悩んでいるのなら、気軽に相談してほしい」と語った。

最短3年で卒業資格を得ることのできる通信制高校。しかし、ここで生徒たちは資格以上のことを学んでいるのかもしれない。

外国人労働者や性的少数者(LGBT)を巡る問題が盛んに議論された2018年。多様性が認められ、評価される時代の流れを感じる。過去を乗り越え「学校と出合えて良かった」とほほ笑む生徒たちと話していて、このような学びの場の必要性を再認識させられた。

通信制高校通信制高校に通う生徒は増加傾向にある。文部科学省の学校基本調査(2018年度)によると、通信制の生徒数は18万6502人。定時制(8万5283人)の2倍以上。少子化に伴い、高校生徒数が減少する中、通信制は近年横ばいないし増加傾向にある。

通信制高校は2000年代以降に急増した。要因の一つが、小泉純一郎内閣時代の構造改革特区制度で、株式会社の学校設立が許可されたことだ。全国から生徒を集める広域通信制の高校が相次いで設立された。今回取り上げた第一学院高校も広域通信制高校。

=2018/12/30付 西日本新聞朝刊(教育面)=