「世界を狙える」9歳天才少女棋士の衝撃デビュー

史上最年少で囲碁のプロ棋士となることが決まり、笑顔で記者会見する仲邑菫さん(左)=2019年1月5日 初めての公式戦を終え、記者の質問に答える史上最年少の囲碁のプロ棋士・藤沢里菜さん=2010年10月24日 それぞれ日本棋院会館

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小4菫さん、井山裕太棋聖と対局 最年少の囲碁プロ入り控え

9歳少女が囲碁プロへ 最年少記録を更新

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 「後生畏るべし」。小学生の時からそうささやかれていた将棋の藤井聡太七段が14歳2カ月の史上最年少でプロデビューしたのは2016年10月。その後の快進撃は将棋ファンでなくてもご存じの通り。制度は異なるが、現在小学4年で9歳の仲邑菫(なかむら・すみれ)さんが史上最年少で囲碁のプロ棋士になることが1月5日、日本棋院の発表で明らかになった。今年4月1日付のプロ入りの際は10歳0カ月、藤沢里菜女流本因坊の11歳6カ月を9年ぶりに更新。天才少女の将来が楽しみだ。新年早々の写真特集としてまとめた。

(共同通信=柴田友明)

史上最年少で囲碁のプロ棋士となることが決まり、記者会見に臨む仲邑菫さん。右は父の仲邑信也九段=2019年1月5日、東京都千代田区

 「対等に戦った」と名人

 東京都千代田区の日本棋院で行われた記者会見。日本棋院副理事長の小林覚九段、日本のナショナルチームのコーチも務める張栩名人、父でプロ棋士の仲邑信也九段らも並んで質問に答えた。「この子は世界を狙えることを信じて、『英才枠』を早めにつくった」と、小林副理事長がこれまでの経緯を説明。実際に対局した張名人は「9歳という年齢でこれほどの力、衝撃的だった」「対等に戦っている感じもした」と天才少女ぶりを語った。

 かつて日本の囲碁界は世界をリードしてきたが、今は中国や韓国が国際棋戦で日本勢を上回るのが現実。従来の「院生」という棋士の育成制度とは別に、日本棋院は「英才特別採用推薦棋士」を新設、菫さんを選んだ。

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史上最年少で囲碁のプロ棋士となることが決まり、記念撮影する仲邑菫さん(中央)ら。左から2人目は張栩名人、右端は父の仲邑信也九段=2019年1月5日、東京都千代田区

 「家にテレビはない」

 これからよろしくお願いしますと、はにかみながら答えた菫さんはいつまでにタイトルを取りたいかと尋ねられた時には「中学生の時に取りたい」とはっきりと語った。今後の目標に第一人者の井山裕太棋聖を挙げた。大人たちに囲まれながらも、あまり動じない様子は天才子役として知られたタレント芦田愛菜さん、卓球界で活躍した福原愛さんの子ども時代を思わせる。

 菫さんは東京生まれ、現在は大阪市内の小学校に通っている。アマチュア高段者の母親から習い、3歳で囲碁を始めた。「とても負けず嫌い」(母親の話)な性格で、2年前から歴然とした実力を感じるようになったという。

 「勝ったときには楽しい。うれしい」。囲碁の魅力を語る小学生は「休み時間に外で遊ぶこと」と囲碁以外に好きなことは何かと聞かれ、子どもらしく話した。ただ、よく見るテレビ番組はと記者から尋ねられ、一瞬沈黙して少し困った様子も見せた。父親の仲邑九段が家にはテレビがないと答えたときには、それだけ囲碁に集中した生活を続けていることがうかがえた。

 最近は日本と韓国を行き来して、子どもの時から囲碁の英才教育を進める現地でめきめきと実力を伸ばしてきた。

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中学1年生でプロの棋士としてデビューし、初戦を白星で飾った井山裕太さん=2002年5月15日、大阪市北区

【主な囲碁棋士の年少プロ入り記録】

仲邑菫初段4月1日付 10歳0カ月

藤沢里菜女流本因坊  11歳6カ月

趙治勲名誉名人    11歳9カ月

井山裕太棋聖     12歳10カ月

【主な将棋棋士の年少プロ入り記録】

藤井聡太七段     14歳2カ月

加藤一二三九段    14歳7カ月

谷川浩司九段     14歳8カ月

羽生善治九段     15歳2カ月

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