【平成の長崎】日本画家・松尾敏男氏に文化勲章 長崎出身 平成24(2012)年

 2012年度の文化勲章受章者に長崎県長崎市出身の日本画家、松尾敏男氏(86)=横浜市=が10月30日決まった。

 松尾氏は3歳で長崎を離れたが、長崎への愛着は深い。受章決定の報に「自分の古里が長崎であることを誇りに思っている。故郷に一つの恩返しができたと思い、大変うれしい」と古里にメッセージを送った。

 長崎県出身の文化勲章受章者には1,958年度の彫刻家、北村西望氏(1,884~1,987年)、1982年度の東大名誉教授、吉識(よしき)雅夫氏(1,908~93年)、1983年度の文芸評論家、山本健吉氏(1,907~88年)、1,989年度の彫刻家、富永直樹氏(1,913~2,006年)らがいる。

 文化勲章の親授式は11月3日に皇居で開かれる。

 ■松尾さん「新しい自分つくりたい」/喜び語り、研さん誓う

 30日に文化勲章受章が決まった長崎県長崎市出身の日本画家、松尾敏男さん(86)=横浜市在住=。60年以上にわたり第一線で活躍を続ける松尾さんは「長い間、ひとつの道を歩いてきた。受章はありがたい」と喜びを語った。

 松尾さんは長崎市今籠町(現鍛冶屋町)生まれ。3歳で家族と共に上京した。日本画家の堅山南風に師事し、1,949年に日本美術院主催の再興院展で初入選。以来、精力的な創作活動で同展の文部大臣賞と大観賞を計5度受賞して揺るぎない地位を確立した。2,009年から日本美術院理事長を務める。

 自然写生を基調とし、華麗な色彩と確固たる線描が作り上げる典雅な作風が特徴だ。1,979年に日本芸術院賞。1,994年に日本芸術院会員、2,000年には文化功労者になり、文化勲章受章も時間の問題とみられていた。

 近年も墨を中心にした新しい作風の開拓を試みるなど研さんを怠らない。「これが終着駅でなく、これからの努力に対する励ましと受け止めている」と気を引き締める。

 「高齢になったが、気持ちは展覧会に初入選した20代のころと変わらない。知らない自分を探し出してゆくのが絵描き。新しい自分をつくり出したい」。日本人の美意識を追求する道に終わりはない。(平成24年10月31日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

「これからの努力に対する励ましと受け止めている」と気を引き締める松尾さん=横浜市内の自宅

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