ステンレス鋼板6社、2019年の期待商品

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 ステンレスは耐食性、耐熱性、強度や意匠性などの特性にすぐれ、自動車、電子・電機、土木・建築、産業機械など多岐にわたる分野で顧客の高品質製品の安定生産や技術革新に貢献している。日本のステンレスメーカーは技術・研究開発で世界をリードし、ニッケル系・クロム系・二相系など多彩なステンレス製品を生み出している。今年も「鋼板6社・期待の商品」で、商品開発力と生産技術力を駆使したラインアップを紹介する。(谷山 恵三)

新日鉄住金/精密加工用細粒鋼板で新ブランド

 精密加工用細粒ステンレス鋼板「FYGRAS(フィグラス)」のブランド展開を開始した。独自の成分設計と冷間圧延・熱処理の制御により、平坦度が高い上に加工後の変形が小さく、加工精度や疲労強度にも優れる微細粒鋼をシリーズ化した。

 FYGRASは、世界最小1ミクロンクラスの超微細結晶粒を実現した「SUS304H―SR3」「NSSMC―NAR―301L SE1」など7鋼種で板厚は最薄80ミクロン。主な用途は精密加工分野(ばね材)、高耐食・非磁性の精密加工分野(同)、プレス加工・研磨分野(焼鈍材)。微細加工用途で要求される板厚精度・平坦性・低残留応力などを実現することで、電子デバイスのさらなる高性能化や小型化にも寄与する。

 FYGRASはFine Crystal Grain Stainless Steelの略語。

JFEスチール/用途広がる「JFE443ファミリー」

 「JFE443CT」「JFE443MT」「JFE445NT」の3鋼種を汎用オーステナイト代替鋼と位置づけ、「JFE443ファミリー」としてシリーズ化している。当初から器物、塗装屋根材、厨房などに多く使用されているが、ファミリー化により採用分野が広がり、温水器、配管、建築土木材料などへ適用先が広がっている。

 443ファミリーの特徴は(1)ニッケルを含むSUS304や同316より安価で価格安定性に優れる(2)オーステナイト系と比較して熱膨張が小さく熱伝導に優れる(3)耐食性がSUS304、同316と同等かそれ以上(4)応力腐食割れがない(5)磁石に付く―など。

 普通鋼冷延ライン(タンデム―CAL)の活用により、同社独自の表面仕上げとしてKB、KDのラインアップも持ち、塗装用途、防眩性などのニーズにも柔軟に対応している。

日新製鋼/高耐食フェライト系「NSSU―20」/屋根用途へ適用拡大

 30Cr―2Mo系の「NSS447M1」(SUS447J1)、28Cr―3・5Mo系の「NSSU―20」はいずれもスーパーフェライト系ステンレスで、高い耐食性を示す。このため臨海地区における屋根材、建築外装材、ストリートファニチャー、手摺などに適している。またオーステナイト系ステンレスに比べ熱膨張係数が低いため、屋根などの長尺物にも適している。

 NSS447M1は従来から屋根材やシャッター部材としても使用実績がある。一方、日本金属工業ブランドだったNSSU―20は熱交換器用途などで採用されてきた。

 このU―20が幕張メッセで改修工事中の軒天に約10トン採用されている。海浜地帯でかつ雨で洗われにくい部位だけに、高い耐食性が評価された。東京五輪、大阪万博、臨海部再開発などでの採用拡大を目指していく。

新日鉄住金ステンレス/高強度・高耐食の薄板二相鋼の適用拡大

 高強度・高耐食・省資源の二相ステンレス鋼はダム・水門などの土木分野(厚板)を中心に普及し、薄板でも適用が進展している。今春のステンレス統合会社発足後は流通を含めた新日鉄住金グループの総合力でさらなる適用拡大、市場浸透を図っていく。

 「NSSC2120」(SUS821L1)など薄板二相鋼でも豊富な適用事例がある。一例を挙げるだけでも、インフラ公共施設で鉄道用ホーム柵、鋼製排水溝、エネルギーで太陽光パネル架台、食品・衛生・福祉でサニタリータンク(大阪サニタリーの乳飲料・医薬品製造用タンク)、産業機器でダクト、チャンバーボックス、床材(高砂鉄工の二相鋼すべらんなー)、雪止め金具、腕時計ケース裏など用途は多岐にわたる。

 軽量化を中心に長寿命、高強度、長寿命、耐磨耗など多様なニーズに応えている。

日本冶金工業/海外の醤油・調味料醸造/タンク向けへ「NAS254N」拡販

 醤油・調味料には塩分が含有されており、その醸造用タンクは汎用ステンレスにとって極めて厳しい腐食環境となり、孔食やすき間腐食などの局部腐食を生じやすくなる。このため鉄やコンクリートに樹脂ライニングを施したタンクなどが使用されてきたが、ライニングの補修など定期的なメンテナンスが必要なため、ランニングコストを抑えメンテナンスフリー化を図る目的で高耐食ステンレス化の検討が進められた。

 国内では2002年に醤油大手が同社のスーパーステンレス「NAS254N」を採用して以来、数社でスーパーステンレス製タンクが建設された。

 昨年は韓国で醤油市場シェア60%以上を占める最大手の泉標食品の醤油醸造タンクでNAS254Nが約180トン採用された。今後も市場規模が大きく、成長が見込める海外の醤油・調味料醸造タンク向けにスーパーステンレスを拡販する。

日本金属/樹脂とステンレスの複合パイプ

 国内初となるステンレス製ファインパイプ(溶接引抜き管)と耐薬品性を有する樹脂との複合パイプを開発した。生体物質、医療用などの分析用機器やその配管などへの採用を目指し、環境、食品分野への展開も図る。

 外管には同社が独自に成分設計した高強度オーステナイト系ステンレスを使用し、耐圧強度をSUS304、同316Lに比べて大幅に高めた。従来はシームレスパイプが主流だった分析用配管よりはるかに高い強度を有するため、配管の小径化が可能になった。

 内管は耐薬品性に優れる樹脂を選定し、特殊な熱処理など樹脂の特性が十分に発揮できる製造工程を確立した。表面平滑性、清浄性を高めることで分析精度への影響を極端に抑えることも可能になった。

 これら外管と内管を特殊加工により一体化する成形技術確立にも成功した。