西武は守備も鉄壁、広島菊池よりヤクルト山田が上? 12球団“最強”の二遊間は…

広島・菊池涼介(左)とヤクルト・山田哲人【写真:荒川祐史】

西武は二遊間で奪ったアウトが1529と12球団で最多

 野球において守備の要と言えば、センターライン、特に二遊間だ。強いチームには、盤石の守りを見せる二塁手と遊撃手がいるものだ。そこで、昨季のNPB各球団の二遊間の守備成績を振り返ってみたい。

 二遊間の総アウト数(刺殺+補殺)のランキングは以下のようになる。刺は刺殺で、フライを捕球したり、走者にタッチするなど直接アウトにした数で、補殺はゴロを捕って塁に送球するなどしてアウトにした数となる。併は併殺で、率は守備率だ。

〇パ・リーグ
1西武1529(563刺966補)217併 率.985
2ロッテ1484(567刺917補)167併 率.986
3日本ハム1470(543刺927補)144併 率.977
4オリックス1401(529刺872補)162併 率.988
5ソフトバンク1371(543刺828補)158併 率.985
6楽天1317(533刺784補)153併 率.980

 二遊間の総アウト数が最も多かったのは、パ・リーグを10年ぶりに制した西武。最下位の楽天とは、212もの差がついている。1試合当たり約1.5個の差は大きい。

 アウト数の違いは、野手の能力にもよるが、チームの投手のタイプにもよる。奪三振の多いパワーピッチャーが多いチームは、内野の処理数が減る傾向にある。西武にも、マリナーズ移籍の決まった菊池雄星というパワーピッチャーがいるが、多和田真三郎や榎田大樹は打たせて取るタイプだ。

 一方の楽天には、奪三振王の則本昂大、3位の岸孝之がいることも少なからず影響している。とはいえ、西武の併殺処理数217は、リーグの中でも傑出している。西武と言えば、打撃のチームという印象があるが、内野守備も鉄壁だったのだ。

西武の浅村&源田、ロッテの中村&藤岡が高数字叩き出す

 各球団で最も多く二遊間を守った選手を見てみる。RF(レンジ・ファクター)は1試合当たりのアウト数で、守備範囲の広さを示す数値とされる。

西武
二)浅村栄斗 142試279刺412補12失99併 率.983 RF4.87
遊)源田壮亮 143試271刺526補11失112併 率.986 RF5.57

ソフトバンク
二)牧原大成 57試111刺177補0失32併 率.1000 RF5.05
遊)今宮健太 98試152刺226補11失45併 率.972 RF3.86

日本ハム
二)渡邉諒 57試94刺150補6失29併 率.976 RF4.28
遊)中島卓也 131試213刺422補13失68併 率.980 RF4.84

オリックス
二)福田周平 102試151刺230補4失43併 率.990 RF3.74
遊)安達了一 140試200刺417補7失69併 率.989 RF4.40

ロッテ
二)中村奨吾 143試329刺486補6失89併 率.993 RF5.70
遊)藤岡裕大 143試227刺419補14失77併 率.979 RF4.52

楽天
二)藤田一也 81試132刺192補1失36併 率.997 RF4.00
遊)茂木栄五郎 98試139刺231補11失48併 率.971 RF3.78

 アウト数1位、2位の西武は浅村と源田、ロッテは中村と藤岡でほぼ二遊間を固定していた。源田の守備範囲は抜群だが、併殺数を見ると、二塁浅村との相性も良かったことがわかる。浅村がFA移籍した西武は打撃だけでなく、内野守備でも大きな見直しを迫られることになる。

〇セ・リーグ
1巨人1511(584刺927補)174併 率.982
2中日1471(549刺922補)169併 率.990
3ヤクルト1458(540刺918補)175併 率.979
4広島1359(490刺869補)179併 率.993
4DeNA1359(544刺815補)174併 率.976
6阪神1327(520刺807補)145併 率.976

 巨人が1位、続いて中日が2位に入り、阪神が最少。阪神は、併殺数もリーグ最少となっており、守備率.976もDeNAと並び12球団でワースト。昨季の最下位は、内野守備にも一因があったと考えられる。

 セ・リーグ各球団で最も二遊間を守った選手の守備成績は以下の通りになる。

守備範囲の広さを示すRFは広島菊池よりもヤクルト山田が上回る

広島
二)菊池涼介 139試296刺420補3失92併 率.996 RF5.15
遊)田中広輔 143試194刺449補7失87併 率.989 RF4.50

ヤクルト
二)山田哲人 138試321刺457補13失92併 率.984 RF5.64
遊)西浦直亨 127試183刺381補11失71併 率.981 RF4.44

巨人
二)田中俊太 58試128刺151補4失33併 率.986 RF4.81
遊)坂本勇人 107試156刺347補9失60併 率.982 RF4.70

DeNA
二)柴田竜拓 65試69刺89補2失16併 率.988 RF2.43
遊)大和 109試162刺287補11失67併 率.976 RF4.11
中日
二)高橋周平 99試205刺296補7失54併 率.986 RF5.06
遊)京田陽太 142試234刺442補6失85併 率.991 RF4.76
阪神
二)糸原健斗 121試232刺285補10失53併 率.981 RF4.27
遊)植田海 74試64刺154補8失25併 率.965 RF2.95

 総アウト数1位の巨人は、昨季は二塁手が固定できなかった。さらには坂本の戦線離脱もあったが、それほど守備面での影響は指標上は表れていない。田中以外にも吉川尚輝(RF4.99)、山本泰寛(RF5.08)と守備範囲の広い二塁手がいたことが大きい。

 広島は菊池の守備範囲を示すRFの数値が低下している。昨季もゴールデングラブ賞を受賞したが、RFでは、ヤクルト山田の5.64に対して、5.15と劣っている。

 DeNAの柴田、阪神の植田のRFが極端に低いが、これは途中交代や途中出場が多かったことも関係している。とはいえ、阪神は鳥谷敬以降、遊撃手を固定できていない。守備の要である遊撃手を固めることは、阪神にとっての課題といえるだろう。内野守備の要である二遊間がしっかり固定されているチームは、やはり強い場合が多い。果たして、今季の各球団の二遊間はどうなっていくだろうか。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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