波佐見焼の歴史 歌声で伝える 混声合唱団が創作組曲

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 長崎県東彼波佐見町で活動する波佐見混声合唱団(一瀬和博団長、36人)が、波佐見焼の歴史を歌で伝える創作組曲「べんざらとカチガラス」を完成させた。構想から10年。波佐見町で約400年続く焼き物作りの黎明(れいめい)と発展を支えた4人の偉人に光を当て、ロマンと郷土愛に満ちた物語を歌い上げる。地元での2月の初披露に向け、メンバーが練習に励んでいる。

 底冷えする師走の夜に温かな歌声が響いた。輪になった団員たちの顔もほのかに上気していた。毎週金曜の夜、年齢も職種もばらばらの男女が集まり、ハーモニーに磨きをかける。全5曲(約50分)で構成する「べんざらとカチガラス」は昨年7月にようやく詩と曲がそろった。

 「もっと自分をさらけ出そう。そうじゃないと観客に伝わらない」。指導する小学校教諭、井手敏彦さん(59)がメンバーを励ました。同町で生まれ育った井手さんが、波佐見焼の歴史を曲にしようと思い立ったのは、ちょうど10年前。ようやく日の目を見る作品の仕上げに、力が入る。

 近年の知名度向上で「好調」のイメージがある波佐見焼だが、10年前は売れ行きが落ち込み、不況にあえいでいた。「地元を愛する人間として、波佐見焼の草創期に活躍し、苦難を乗り越えてきた人々の物語で、ふるさとを勇気づけたい」と考えた。史実を調べるうち、江戸時代の4人のキーマンに行き当たった。波佐見で初めて陶器を作ったとされる彦右衛門。白磁を取り入れ、波佐見焼の開祖とされる朝鮮人陶工、李祐慶。水流を用いた装置で陶土の量産化を可能にした福田代助。飢饉(ききん)で焼き物が売れなくなった時期、私財を投じて地元の窯業を守った福田安兵衛。彼らの生きざまを描こうと決めた。

 構想を膨らませるため、波佐見町内にある陶器のモニュメントを何度も訪れた。波佐見焼の370周年を記念し1968年に建立。重ねた器をかたどった塔を、古い陶器のかけらを貼り付けた壁が囲む。陶器のかけらは町内の古い窯跡で取れたもので、上になるほど時代が新しくなる。波佐見焼の歴史を表す“地層”に触れるうちに、陶器のかけらを語り部にするアイデアが浮かんだ。

 タイトルにある「べんざら」は焼き物のかけら、「カチガラス」とはカササギのこと。共に豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本に持ち込まれたとされている。モニュメントで羽を休めるカチガラスに、壁のべんざらが話し掛けるという形式で、歌と語りで伝える。

 井手さんの構想を基に、団員の吉村祐子さん(59)が作詞、佐世保市の声楽家、小川源さん(77)が作曲を担った。当日は観客が物語世界に入りやすいように、団員の石原正子さんが描いた挿絵を上映する。一瀬団長(67)は「町民や子どもたちがふるさとを学び、誇れるようになるとうれしい」と話している。DVDも作り、波佐見町内の小中学校に配布する予定だ。

 合唱曲が披露される同団の定期演奏会は2月10日午後2時から、折敷瀬郷の波佐見町総合文化会館。入場無料。

合唱曲「べんざらとカチガラス」の練習に励む団員ら=波佐見町
合唱曲の舞台として登場するモニュメント=波佐見町井石郷