江本翔 x 井高寛朗 "W" Keyboard Project Featuring. 横田寛之 - 鍵盤の要塞に踏み込む

"W" Keyboard Projectとは

──今回の"W" Keyboard Projectとはどういった企画なんでしょうか?

井高:読んでそのままですが、僕と翔(江本)君の2人の鍵盤弾きが、お互いのオリジナル曲、アレンジ曲を好き放題やってやろうという企画です。ピアノはもちろん、シンセやオルガンなど鍵盤楽器を駆使します。

──これはタイトルにWキーボードと付いていますが、2人だからWであって、別にキーボードを2個のみという意味ではないんですね(笑)。

江本井高そういう意味ではまったくないです!(笑)

──前回はいくつ楽器を使っていましたっけ?

江本:グランドピアノに加え、僕はあと2台かな。その前はピアノとシンセ2台の計3台。

井高:僕は3台と、あとサンプラーで。

──そもそもこの公演が生まれたきっかけは?

江本:もともとはLastWaltz時代に長谷川さんに、「なんでもいいから好きなことを好きなようにやっちゃってよ!」言われたのがきっかけ(笑)。いろいろと思考をめぐらせてました。その傍ら、渋谷のあるライブハウスに行った時に、大阪から共通の知り合いのドラマーから来ていて井高さんを紹介してもらったというのが一番最初ですね。一緒にスタジオに入りました。

──違う楽器奏者同士がセッションしようよ! みたいなことはあっても、同じ楽器同士では珍しいことですよね。

江本:ピアニスト同士が集まって弾くみたいなピアノデュオの公演があるんですが、それによく行ってたんですよね。NYからピアニストを呼んで開催したりしていて。

──江本さん自身は、ピアノを誰かと一緒にやりたいということをすでに思っていたんですね。

江本:それで紹介された井高さんに相談したら、二つ返事でOKしてもらって。スタジオに入ってみたらジャズはお互いの基盤としてあるなと。ならばジャズの曲とかをやってみましょうかということで。

井高:そのときはグランドピアノ2台だけで遊んでいただけでしたけどね(笑)。

──スタジオにグランドピアノ2台もあるなんてところあるんですか?(笑)

井高:あるんですよ、吉祥寺に!(笑)

──いわゆるよくあるピアノ連弾的なやつですね。

江本:はい。それからだいぶ時間がたっていたんですが、長谷川さんの、「好きにやっちゃいなよ!」の話で思い出して(笑)。

──ありがとうございます(笑)。

江本:僕の中でちょっと構想があって、アナログアナログみたいな感じよりは、キーボード2台とか、キーボード3台とか、そういう普段ないようなことができたらいいなと。シンセとかいろいろ投入してみて、飛び道具とか使って、いろんな音とか、お互いのよさが引き立つような、それぞれの色が出る感じでできればいいよねっていう話しで。

井高:最初は連弾というよりも、鍵盤楽器をひたすら使いまくってやってみようということでしたね。気がついたら何台も持ってきて、搬入がひたすら大変という(笑)。

ないところを補完しあえる関係

──今回は2人ともリーダーということなんですが、ピアニスト2人でお互いに思うところはありますか?

江本:僕は井高さんへの意識は、僕よりも絶対うまいと思っています。技術があって、すごく縦横無尽に弾けて。かつシンセサイザーもすごく音色とかを知っているという。バランスがありつつ攻めるときには攻めるというか、そういう『イケイケプレイヤー』だなと思っていますけどね(笑)。

井高:僕は一緒にやってみて、江本くんのプレーはとにかくかっこいいなあと。僕にはこういう弾き方はできない。あとは、翔くんの作る曲のメロディーとかセンスがすごいいいよなと思っています。別に敵対視とかライバル視というよりは、2人で遊んでいる感じです。

江本:お互いにないところを補完しあえる関係をすごく考えることがあって。演奏であれば、あるアプローチに対して、「あぁ、そう来るんだ」ということが感じられる。シンセサイザーの音選びもそうだし、作ってくる譜面もすごい参考になったりもします。逆に井高さんがないものを自分が持っていると思うところもあって、お互いのやることが参考になります。

──基本的に同じ楽器の人のライブを見に行くっていうのは、同世代の同業者同士だとライバル的な見方になってしまいませんか?

江本:年代にもよると思いますが、僕は上の人だったら見に行きます。同年代だと、確かに機会がないとなかなか…見に行きたいような、行きたくないような感じで(笑)。

──ピアノってジャズクラブでも基本的に1台しかないですし、ツインギターとかはあるけども、キーボードだとメイン楽器みたいなところがありますよね。共存は難しいんじゃないかなと。

江本:基本的なところは一緒だと思いますが、やっぱり違いというか、個性というのはあります。お互いに認めてる部分があるから成り立っていますね。

井高:どちらがリーダー、じゃなくて、お互いが尊重して意見を聞き入れるということをちゃんとしてるので上手くいっているのかな。

ライブを重ねるごとに新機材を投入

──LOFT HEAVENは、グループ全店舗の中で唯一、YAMAHAのC2というピアノが置いてあります。江本さんにはオープニングパーティーでも弾いてもらいましたが、このピアノはLOFT HEAVENへのリニューアルと共に、内部を全面オーバーホールして生まれ変わりました。実際に弾いてみてどうでしたか?

江本:はい、中身の質感みたいなものが最初からぜんぜん違ったんですよ。左右まで音の丸みっていうか、よく鍵盤とかだとピアノに対して乾いたグチャっていう音とか、湿ったウニョンっていう音とかいろいろあるんですけど、ちゃんとその一つ一つの音にコーティングがされたような状態で、ポンっと飛んでいく感じが凄く出てるなと思いました。

井高:僕もライブではほんのちょっとしか弾いてないですが、すごく良いピアノだなと思いました。

──最後に、この公演をどのように見ていただいたらより楽しめるかという、見どころも含めて教えてもらえますか。

井高:まずは僕たち2人の音楽性の違い、持ってる世界がそれぞれあるんですが、それがライブの中で融合します。それぞれがやっていることに注目して楽しんでいただけたらなと思います。

江本:一緒に演奏するバンドのミュージシャンもすごくいいし、表現の幅がすごい広がっています。単にピアノだけというよりは、鍵盤楽器にはこんなアプローチもあるよ、こんな感じもあるよと、いろいろ飛び道具みたいなもので装飾・脚色をしていく部分での楽しみや、お互いのプレー、曲の構成、バンドも全部楽しめる感じになるかなと思います。

井高:ライブを重ねるごとに新機材を投入していたりしますので、鍵盤マニアの方にも楽しんでいただけたら嬉しいです。

江本翔(えもと かける)

4歳からエレクトーンをはじめ、11歳の時に財団法人ヤマハ音楽振興会エレクトーン普及部のデモンストレータとして活動。青山学院大学入学後、Bill Evansの演奏に感銘を受け、ジャズピアノに転向。Jazzを中心としながらも、幅広いジャンルに活動を広げて活動。

https://emotokakeru.jimdo.com/

井高寛朗(いだか ひろあき)

2016年大阪から上京。幼少の頃エレクトーンを習いはじめ、今やオールマイティーな鍵盤弾き、アレンジャーとして活動中。

https://ameblo.jp/hrakidk/

© 有限会社ルーフトップ