世界ボクシング協会(WBA)バンタム級チャンピオン井上尚弥(大橋)の実力を評価する声が海外でも高まっている。
WBAの年間KO賞に選ばれたほか、伝統を誇る米専門誌「ザ・リング」も2018年度の「年間最高KO」に選出した。
井上尚は同誌の今年2月号の表紙を日本人として初めて飾っている。1922年創刊の同誌は最も権威ある専門誌として知られており、破格の扱いが続いている。
確かに昨年10月7日、元王者フアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を1回1分10秒でKOした試合は衝撃的だった。
バンタム級最強を決めるワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)の1回戦。井上尚は右ストレート一発で相手をキャンバスに沈めたのである。
日本の歴史上、世界戦での最短KO勝利でもあり、電光石火の早業には驚くしかない。
これで2試合連続の1回KO。強さに磨きがかかっている。
WBSSの準決勝では、国際ボクシング連盟(IBF)王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と闘うことが決まっている。
ロドリゲスはアマチュア経験が豊富で、ユース五輪で優勝するなどテクニックに定評がある。プロでの戦績は19戦全勝(12KO)とまだ負けを知らない。
パワー不足を補うコンビネーションは速くて、鋭い。普通なら井上尚にとっても難敵になるはずなのだが…。
内外を含めた大方の予想は、「井上尚が圧倒的有利」で一致している。それだけパヤノ戦での迫力はすさまじいものだった。
ゴングが鳴った後、左ジャブでけん制。相手との距離を測ると一瞬の隙を突き、鮮やかなワンツーを決めた。
大げさではなく、井上尚は最初の右パンチで仕留めたのだ。ラッキーでも何でもなく、計算ずくの一撃。これほどのパフォーマンスを展開する日本人ボクサーは皆無に近いだろう。
現在、世界のリングで活躍するボクサーの中、パウンド・フォー・パウンド(PFP=体重を同一と仮定した場合のチャンピオン)にはWBAライト級王者ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を推す声が高い。
ロマチェンコの“超絶テクニック”は抜きん出ているが、近い将来、井上尚がナンバーワンに躍り出る可能性は十分にあるような気がする。
日本を突き抜けたモンスター。今年もリングから目が離せない。(津江章二)