【平成の長崎】諫干で二審も開門命令 漁業被害との因果認定 平成22(2010)年

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防閉め切りが有明海の漁業不振を招いたとして、沿岸漁業者らが国に潮受け堤防の撤去や排水門の常時開門などを求めた訴訟の控訴審判決が6日、福岡高裁であった。古賀寛裁判長は一審佐賀地裁判決に続き、諫干事業と一部海域の漁業被害との因果関係を認定。代替工事に要する3年間の猶予の後、南北排水門を5年間常時開門するよう命じた。

 判決は「潮受け堤防閉め切りによる漁業行使権の侵害状態は違法」との認識を示し、一審の判決後、開門をめぐる判断を先送りにしてきた政府に再び決断を迫る内容。今後の対応や政治判断が注目される。

 最大の争点となった諫干事業と漁業被害との因果関係について、古賀裁判長は「諫早湾閉め切り後に漁獲量が減少。潮汐、潮流速が減少し、貧酸素水塊や赤潮が促進されている可能性が高い。漁業行使権は侵害されている」との判断を示し、諫早湾とその湾口部について、事業と漁業被害の因果関係を明確に認めた。

 国側が主張した▽漁獲減は全国的な傾向▽ノリの酸処理剤-などの原因説に関しても「抽象的なものにすぎず、(潮受け堤防)閉め切りとの因果関係を否定するものではない」とした。

 防災、営農への支障など国側が開門調査を拒む根拠としてきた事業の公共性については「漁業行使権が高度に侵害されているのに比べ、防災機能は限定的であり、閉め切りが営農に必要不可欠ともいえない。防災上やむを得ない場合に閉じることで相当程度確保できる」と指摘。洪水防止機能については「湛水(たんすい)被害をある程度抑制している」と認めたが、背後地の排水改善機能は「評価することは困難」と否定した。

 海水流入など開門調査による営農地への影響については「(国は)具体的危険性の有無や程度について何ら主張立証していない」との見解。「巨額の費用が必要」と国が強調する開門調査のための対策工事に関しても「常時開放とは無関係なものも相当程度含まれている」「具体的根拠が示されていない」などと退けた。農業用水の確保も代替え水源の確保は可能と判断した。

 控訴審では、佐賀県太良町の漁船漁業者9人の漁業被害も新たに認定した。(平成22年12月7日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

勝訴が決まり、万歳をする原告や支援者=12月6日午後2時43分、福岡市中央区、福岡高裁前

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