48警官、出版社から計900万円授受 兵庫県警 昇任試験の問題集執筆、副業禁止に抵触か

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警察官が出版社から報酬を得て執筆していたことが分かった昇任試験の対策問題集「KOSUZO」

 警察庁と17道府県警の警察官が、昇任試験の対策問題集を出版する民間企業の依頼で問題や解答を執筆し、現金を受け取ったとされる問題で、兵庫県警の複数の警察官やOBが神戸新聞社の取材に現金授受を認めた。「先輩に頼まれた」「後輩の育成のためだった」と代々引き継がれてきた構図も明かした。いつから始まったかは不明だが、県警OBが代替わりしながら出版社の顧問に就き、現職の後輩から執筆者を指名していたという。執筆者は「打ち子」と呼ばれていた。

 この企業は東京都内にある「EDU-COM」(エデュコム)社。同社の内部資料の支払いリストによると、過去7年間で兵庫県警の延べ48人に計927万円が支払われ、最高額は本部所属の現職警視の約240万円だった。警部以上の幹部が大半で、多くは巻頭言の執筆1回だけだった。予想問題や模範解答を手掛けた6人は執筆料が50万円を超え、うち3人は100万円以上だった。

 執筆料が多額に上るケースでは、資料にある警察官が窓口役で、複数で執筆を分担した可能性もある。また、資料に記載された1人は県警に実在しなかったが、同じ資料の執筆者に住所が一致する警察官がおり、偽名を使ったとみられる。

 公務員の副業は、地方公務員法(兼業の禁止)に抵触する恐れがある。兵庫県警は勤務規定により、雑誌などに寄稿する際は所属長に報告が義務付けられており、許可されるケースもあるというが、県警は「(同社への)寄稿の報告は一度もない」としている。

 昇任試験問題は、各都道府県警が部内資料などを基に作成する。同社は昇任試験の対策問題集「KOSUZO」(コスゾー)を毎月発行し「全国版」と、兵庫県警など一部地域の警察に特化した「県版」がある。市販はしておらず、兵庫県警では見本や注文票を一部職場に置くなどし、購読料は給与から天引きできる。

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 最高額の約240万円を受け取ったとされる兵庫県警の現職警視は2012年9月~14年3月、昇任試験を取りまとめる教養課の幹部だった。内部資料によると、同課在籍中を含む12年6月~17年2月に、ほぼ毎月執筆。多い月で約160ページ、執筆料は約18万円に達した。取材に対し「何も答えることはありません」と繰り返した。

 一方、数年前に県警を退職した元警視は現職時、同社顧問だった県警OBの依頼でほぼ毎月執筆したことを認めた。2年間で約22万円を受け取ったとされる。

 「誰が『(執筆担当の)打ち子』をしているかは、庁内で互いに知らなかった。辞める際は後任を探すよう(顧問に)頼まれた」「引き継ぎ時からのルールで組織には報告しなかった」とし、「後進の育成のためでもあり、悪いことという意識はなかった」と振り返る。昇任試験の対策問題集を発行する出版社は他にもあり、「どこも似たような仕組みじゃないかと思っていた」という。

 警察官の昇任試験対策問題集を発行する別の出版社によると、現職やOBに執筆を依頼することはあるが、組織の内部決裁を経て仕事を受けてもらうという。 【野田崇・関西学院大教授(行政法)の話】公務員の寄稿が一概に不正とはいえないが、執筆料の多さや期間の長さから、地方公務員法で禁じられた副業に当たる恐れがある。試験の透明性や公正性の面からも、幹部が予想問題を寄稿しているのは問題ではないか。