岩手から移住の陶芸指導員 奮闘 波佐見の体験工房

若い視点で体験メニュー 試行錯誤重ねる

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 長崎県東彼波佐見町中尾郷の体験工房「中尾山伝習館」で、岩手県出身の移住者、及川菜月さん(25)が奮闘している。2年前に指導員になってから、焼き物作りを体験する利用者数は順調に増え、本年度は千人を突破。陶芸や波佐見の魅力を多くの人に知ってもらおうと、若い視点を生かして試行錯誤を重ねている。

 窯元が軒を連ね、「焼き物のまち」のたたずまいを残す陶郷・中尾山。れんが造りの煙突や風情のある民家が並ぶ坂道を上ると、伝習館に着く。1996年に町が開設し、郷が運営。及川さんは2016年度から指導員として、観光客らに作陶や絵付けを教えている。

 山形県の東北芸術工科大で陶芸を専攻。同じ大学の卒業生で、中尾山を拠点に活動する陶芸家、長瀬渉さん(41)に紹介してもらい、就職した。社会人経験もなく、同僚や上司もいない職場。長瀬さんの助言や協力も得て「どうすればお客さんに喜んでもらえるか」を考えた。

 時間や内容によって1回5千~6千円かかることもあった料金体系を見直し、手ごろな値段に改定。3種類だった釉薬(うわぐすり)を6種類に増やし、焼き上がりの色のバリエーションを広げた。体験の雰囲気をイメージしやすいようにホームページの写真を増やし、積極的に発信。隣接する宿泊施設も壁紙などを取り換え、明るい雰囲気にした。

 こうした取り組みが奏功し、700人前後を推移していた利用者が2017年度は902人に増加。本年度は12月末で千人を超えた。料金見直しに伴い減少した売り上げも持ち直し、改定前を上回った。

 利用客は若いカップルや子連れの家族、シニア世代の夫婦などさまざま。作品を預かり、館内の窯で焼成した後、自宅に送る。焼き上がった器を窯から出し、利用者の喜ぶ顔を想像する時間が好きだ。「モノへの関心が薄まっている時代。ここでの体験が、身の回りのモノへの興味や愛着につながるとうれしい」

 陶芸体験は「手びねり」が1800円、筆絵付けが千円から、クレヨン絵付けが1500円から。営業時間は午前10時~午後5時(受け付けは午後4時まで)。火曜日定休。予約なしでも参加できる。問い合わせは同館(電0956・85・6127)。

伝習館で焼き物作りを楽しむ利用者=波佐見町中尾郷(同館提供)
中尾山伝習館の指導員として奮闘している及川さん