広島移籍の長野、「人的補償」で“歴代2位“の通算安打&前年100安打以上は初

2013年のWBCでも活躍した長野久義【写真:Getty Images】

巨人にFA移籍した丸の人的補償で長野が広島に流失、内海に続いて異例の大物移籍

 新年早々に発表された、長野久義外野手の「人的補償」での広島移籍は、大きなニュースになっている。長野が巨人生え抜きの大物選手で、しかも前年もレギュラー選手だったからだ。

 選手がFA権を行使して移籍すると、移籍先の球団は移籍元の球団に、移籍する選手の旧年俸に基づいた「金銭補償」をする。さらに年俸ランキングが高い選手の場合、移籍元球団が希望すれば「人的補償」も要求することができる。

「人的補償」は、移籍先球団がプロテクトした28人以外の選手の中から移籍元球団が選択する。ただし外国人選手は選択できない。

 これまでの例では、移籍先球団は実績ある主力選手をプロテクトするため、「人的補償」は若手選手になることが多かった。しかし、今回の巨人は、若返りをはかるために内海哲也、長野久義という実績あるベテランをプロテクトから外した。そして西武、広島が2人を選択したのだ。

 その経緯に何ら問題はないが、これだけの大物選手が移籍するのは異例だ。どちらも生え抜きのスター選手であり、特に長野は、前年も主力選手として活躍していたからだ。

巨人生え抜きの主力選手が“まさか”の「人的補償」

「人的補償」で移籍した選手の移籍時点での通算安打数5傑

1江藤智(2006年巨人→西武)1479安打
2長野久義(2019年巨人→広島)1271安打
3脇谷亮太(2014年巨人→西武)365安打
4鶴岡一成(2012年DeNA→阪神)266安打
5福地寿樹(2008年西武→ヤクルト)252安打

 江藤は1999年に広島から巨人にFA移籍したが、2006年に西武、豊田清の「人的補償」で移籍した。FA移籍と「人的補償」での移籍を両方経験したのは、江藤と、工藤公康、脇谷亮太の3人だけ。江藤が最多安打で、長野は2位だが、江藤の前年の安打数は16安打。長野は111安打。規定打席から外れたとはいえ、前年100安打した選手が「人的補償」で移籍するのは史上初めてだ。

 しかも長野は巨人生え抜き。1271安打は歴代19位、巨人右打者では歴代9位、外野手としては歴代7位。長野よりも多くの安打を打った巨人打者で、移籍を経験したのは清水隆行、松井秀喜、与那嶺要、仁志敏久の4人しかいない。

 長野は巨人入団を希望して、2回もドラフト指名を拒否している。その経歴からもフランチャイズプレイヤーとしてキャリアを全うすると思われただけに、驚きをもって受け止められたのだ。

丸と長野は“互角の実績”?

 丸佳浩と長野久義は、年齢は5歳違いだが、偶然にも1軍デビュー年が同じ2010年。左打者、右打者の違いはあるが、同じ外野手であり、キャリアの数字は近い。

○通算成績
丸佳浩
1089試合3854打数1079安打147本塁打540打点140盗塁 打率.280
長野久義
1209試合4441打数1271安打137本塁打500打点93盗塁 打率.286 

 丸が控え選手からスタートしたのに対し、長野は1年目からレギュラーで新人王。その差もあって、通算成績は長野のほうがやや上だ。しかし通算成績を143試合に換算すると

○通算成績を143試合に換算
丸佳浩
143試合506打数142安打19本塁打71打点18盗塁 打率.280
長野久義
143試合525打数150安打16本塁打59打点11盗塁 打率.286

 驚くほどよく似ている。タイトルは丸が盗塁王1回、最多安打1回、長野が首位打者1回、最多安打1回。実績的にはほぼ互角だ。

 丸は2年連続でMVPに輝いており、トレード候補になることは考えられないが、数字的に見れば、「同じくらいの実績の外野手のトレード」とみることもできる。

 しかし今回の移籍は、長野にとっても悪い話ではない。巨人はただでさえも力が同程度の外野手がひしめいている。そこに大物の丸が加入し、競争はさらに激化する。広島も選手層は厚いが、外野で活路を見出す可能性は巨人よりも高そうだ。違う球団で、異なるスタイルの野球を経験するのは、長野のキャリアにとってもプラスになるのではないか。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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