ブラウンズはチーム内部からキッチンズをHCに指名

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クリーブランド・ブラウンズのフレディ・キッチンズ【AP Photo/Ron Schwane】

クリーブランド・ブラウンズが攻撃コーディネーター(OC)のフレディ・キッチンズをチームから手放すことはない。

現地9日(水)、『NFL Network(NFLネットワーク)』のイアン・ラポポートは現地の情報筋の話を元に、ブラウンズがキッチンズを新ヘッドコーチ(HC)に指名する予定だと報じた。この動向を最初に報じたのは『ESPN』のクリス・モーテンセンだ。

キッチンズにとっては急激な昇進となった。アラバマ大学出身のキッチンズは2018年シーズンをランニングバック(RB)コーチとしてスタートしたものの、チームがHCのヒュー・ジャクソンとOCのトッド・ヘイリーをシーズン途中で解任した後、OCに昇格している。

ブラウンズの攻撃陣はキッチンズの指揮下で爆発力を見せ、バラエティに富んだ広範囲にわたる攻撃で相手守備陣を混乱に陥(おとしい)れていた。ブラウンズはキッチンズのコールによって1試合平均23.8点を獲得し、レッドゾーン内では79.2%の得点率を誇っている。

新人クオーターバック(QB)ベイカー・メイフィールドとの抜群の相性も、OCとしては8試合しか指揮を執っていないキッチンズをHCに指名した理由となったようだ。メイフィールドは2018年シーズンの後半だけで2,254ヤード、新人記録となった27回のタッチダウンパス中19回を記録し、サックはわずか5回にとどめてチームを5勝3敗に導いていた。『Next Gen Stats(ネクスト・ジェン・スタッツ)』によると、メイフィールドはキッチンズがコールを開始してからロングパス(20ヤード以上)によってさらなるパワーを発揮し、シーズン第9週以降で7回(リーグタイ)の長距離タッチダウンパスを成功させている。メイフィールドがロングパスで成功を収めた背景には、キッチンズの選手選択や戦略があったと言えよう。

また、キッチンズはOCとしてRBニック・チャッブの能力を解放してタックルブレイクの鬼に化けさせ、相手守備陣のボックスを破壊する活躍を促(うなが)していた。この新人RBは今シーズン、8人構成のボックスに対してリーグトップのランヤード(362ヤード)を稼いだ。

若さと創造的な攻撃的マインドを考慮すると、キッチンズがもしコーディネーターに残っていた場合でも、いずれはHC職の有力候補として他チームからも名前が挙げられていたに違いない。それを避けたかったブラウンズは、先手を打ってシーズン途中からその類まれなる手腕を発揮したコーチの流出を防いだのだ。

キッチンズは印象深いコネクションをNFL界でも持っている。1993年から1997年にかけ、アラバマ大学でクオーターバック(QB)を務めたキッチンズは2000年にニック・セイバンの下、ルイジアナ州立大学でアシスタントとして働き、2006年にはビル・パーセルズの指揮下であったダラス・カウボーイズでタイトエンド(TE)コーチを担った。その後アリゾナで11シーズンを過ごしたキッチンズは、2007年にケン・ウィゼンハントのTEコーチに就任し、2013年にはブルース・エリアンスが指揮を執ることとなったアリゾナ・カーディナルスのQBコーチを務めた。そして、アリゾナでの仕事が最終年となった2017年にはRBコーチとしてチームに貢献していた。

HCとしての経験不足は、伸び代(しろ)ある若いチームをキッチンズに引き継がせることに対する1つの懸念事項だったはずだ。OCとしては短期間の在任となったキッチンズではあるが、選手たちとの信頼関係、とりわけ、メイフィールドとの相性の良さがブラウンズにその経験不足を補っても余りあるものだと判断させたようだ。

キッチンズにとって早急に定めるべき重要事項は守備コーディネーター(DC)の人選だろう。NFLネットワークのアディティ・キンカブワラによると、ブラウンズはDCと一時的HCを務めたグレッグ・ウィリアムズをその任から解いたようだ。ロサンゼルス・ラムズを見ればショーン・マクベイの横にウェイド・フィリップスがいたように、HC1年目となるキッチンズにとっては豊富な経験を持つDCを獲得することが何よりも重要になる。

ブラウンズがメイフィールドの大爆発を期待し、若き攻撃的な思考を持ち始めていたのは明らかだった。ブラウンズHC職の最終候補に残っていたのはキッチンズとミネソタ・バイキングスのOCケビン・ステファンスキーであり、後者はNFLで合計11試合のプレーコール経験を持つ人物だった。それでも、ブラウンズはチーム内部からの登用を選択した。ラポポートによると、ステファンスキーはバイキングスのOCとしてフルタイムで雇用されたようだ。

キッチンズをHCに指名するという非常に面白味のある動きに出たブラウンズだが、一方では無難な道を選び、誰かしらの再任や多くの経験値を持つコーディネーターを採用する選択肢もあったのだ。その代わりに、チームはすでにスキームを知り、フランチャイズQBをよく知る才能あるプレーコーラーをチームの指揮官に選択した。

果たして、ようやく目覚めたブラウンズがフレッシュなHCと共に、ポテンシャルのつぼみを一気に開花させることはできるだろうか。

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