<つながる 気仙沼大島大橋>(1)期待/「命の橋」暮らし改善

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船を下りて、本土の学校や会社に向かう島民ら

 宮城県気仙沼市の離島・大島と本土を結ぶ気仙沼大島大橋(356メートル)が4月7日に開通する。東日本大震災からの復興の象徴とされる橋の開通は地元の長年にわたる悲願であり、島の生活は大きく改善する。一方、観光面の受け入れ態勢の整備や島内の防犯対策など課題も残る。架橋実現までの歴史を振り返りながら、住民の期待や不安を探る。(気仙沼総局・大橋大介)

<船の時間優先>

 起床は朝5時半。出勤前に家の掃除や庭の草取りを済ませる。7時35分に軽自動車で島の船着き場に向かい、8時の船に乗る。

 乗船時間は25分。本土に用意してある別の乗用車に乗り換え、必要な物があればスーパーで買い物をしてから勤務先に向かう。

 大島に嫁いで37年。会社員村上三保さん(68)は島と本土を結ぶ船の時間に合わせた生活を続けてきた。

 定期船は1日16往復。午後5時半の船で戻らないと次の船は6時20分。最終は7時。残業はできない。夫の分も合わせて一家に4台の車がある。本土と島の両方の足を確保するためだが、経済的負担も大きい。

 村上さんは「全てが船の時間に縛られる生活。橋ができれば、自分の好きな時間に動ける。暮らしが便利になる」と期待する。

 島とわずか二百数十メートルの距離の本土が橋でつながる。いつでも車で本土に乗り入れられるようになり、島民生活は大きく変わる。

 約2500人が暮らす島の高齢化は著しい。65歳以上の高齢者率は50%を超え、気仙沼市全体より10ポイント以上も高い。健康面で不安を抱え、本土の病院に通う島の高齢者は少なくない。

 ワカメ養殖業小野寺源一さん(79)は昨秋、急にテレビの画面がぼやけて見えるようになった。気仙沼市立病院で診断した結果、白内障で手術が必要だった。

 元々腰痛で本土の整形外科に通院していたため、海を渡って二つの病院に通う生活を強いられるようになった。小野寺さんは「年を取れば通う病院の数が増えるのは仕方ないが、海を挟んで暮らす島民は本土の住民よりも万が一の事態への不安は大きい」と明かす。

<救急搬送46分>

 島に唯一ある診療所は、大きな病気や事故に対応できない。救急時は島の港に停泊する救急艇が患者を本土に運んでいる。

 気仙沼・本吉地域広域行政事務組合消防本部(気仙沼市)によると、2017年の救急艇の出動実績は前年比19.1%増の187件と過去5年間で最多だった。「高齢者が多い地域ほど救急の出動は多い傾向にある」(消防本部)ため、今後も島内の救急出動が増え続ける可能性は高い。

 患者は島に常駐する救急車から救急艇に乗り換え、本土の港で再び救急車に移る。救急艇は台風など悪天候だと出動できない。森浩一消防次長(58)は「患者の負担もあり、天候に左右される船の搬送はリスクが伴う」と指摘する。

 消防本部の17年末の調査で、島から市立病院までの平均搬送時間は46分だった。市内の国道45号と島をつなぐ県道は20年度に全線開通を予定しており、実現すれば19分で市立病院に着く試算もある。約30分の搬送時間の短縮で、救われる命は確実に増える。

 大島架橋促進協議会の小松武会長(43)は「やっと『命の橋』ができる。島民の長年の不安が解消されるだろう」と待ちわびる。