12月22日(土)、最も被害の大きかった地区の一つである広島県呉市天応で8月から定期的に開催されてきた、ある支援活動が一つの区切りを迎えた。
呉警察署とJR西日本広島支社が連携して開催してきた児童支援活動『小さな遊び場』だ。
きっかけは保護者からの声
場所は、災害直後に天応サテライトが設置されていた『呉ポートピアパーク』内にある建物の一室。
司会を務めるのは、呉警察署生活安全課、少年育成官の岡原圭佑さん。
この支援活動の発起人でもある。
災害以降、避難所を回り避難している人々の要望を聞いて回っていた特別生活安全部隊(通称メイプル隊)の警察官が、一部の保護者から「子どもが安心して遊べる場所が欲しい」という声を聞いた。
報告を受けた岡原さんが、「小さな場所でもいいから、子ども達が勉強をしたり友達と会える空間を提供できないだろうか」と、8月に天応区の自治会館に子ども達を集めて始めたのが『小さな遊び場』だった。
広くはない場所に集まった参加児童の数は18人。
「外に遊ぶ場所も行ける所もなく、大きなストレスを抱えていた子どもたちが「友達に会えて嬉しい」と喜んでいた」当時を思い返し、岡原さんの顔が少しほころぶ。
「想いは一緒」JR西日本と呉警察署が強力タッグ
今回の記録的豪雨は、生活や観光の足である”鉄道”にも甚大な被害をもたらした。
線路への土砂流入や橋梁の流出、駅や線路、変電設備の浸水などにより鉄道網が寸断され、運転見合わせやバス代行を余儀なくされた地域が多くあった。
JR各セクションが鉄道復旧に全力で取り組む中、JR 西日本広島支社の地域共生室に所属する古村さんたちは「鉄道以外でも地域の為にできることをやろう」と、広島県三原市をはじめ、 安芸郡坂町、呉市天応、 広島市安芸区矢野町など被害の大きかった被災地の土砂搬出や瓦礫撤去などのボランティア活動に参加した。
その活動中、被災地域の方から「避難所生活が長くなった子ども達の心身状態を非常に心配している」という声を聞いた古村さんたちは、広島県三原市本郷地区の避難所で、子供たちの心のケアを目的に『被災児童支援活動』も始めることにした。
JRが持参したプラレールやペーパークラフト、ぬりえなどをして楽しんだ子ども達から「楽しかった」「次はいつ来るの?」と声をかけられ、「子ども達に笑顔が戻って本当に嬉しかった」と古村さん。
保護者からも「鉄道も寸断されて大変な時に本当にありがとう」「久しぶりに元気に笑う子どもたちが見られた」と感謝されたという。
こうした『被災児童支援活動』を三原市で2回実施した後、新聞記事で呉警察署の『小さな遊び場』の取り組みを知った古村さんは「想いは一緒。協力して何かできるのでは」と岡原さんに連携を打診し、会場が自治会館から広い呉ポートピア内に移ったことを機に、連携の取り組みをスタートさせた。
『小さな遊び場』は8月に3回、11月に2回、12月に2回と合計7回開催され、このうち11月に1回と、今回の計2回をJR西日本と共同で開催した。
たくさんの大人に見守られて
最後となる今回は、まず鉄道クイズからスタート。
「楽しく鉄道の仕組みや交通安全がわかるように」と古村さんが考えて作ったクイズは全部で10問。
全問正解者はいなかったものの、10問中8〜9正解した子ども達にはJR西日本から賞品がプレゼントされた。
鉄道クイズで盛り上がった後は、呉警察署管内少年補導協助員の皆さんと一緒にクリスマスリース作り。
「最初の頃は子ども達の動きも小さくてね。もう、あの頃とは全然違う」と子ども達の姿に目を細めるボランティアもいた。
子ども達に「写真を撮ってもいい?」と尋ねると、ほとんどの子どもが気持ちよく「うん」と答えてくれた。
あっという間の2時間が過ぎ・・・
そしていよいよ最後の時を迎えた。
岡原さんからの提案で各テーブルの代表者が感想を発表。
「みんなとふれ合えてよかった」「夏休みに遊べたのが嬉しかった」という声が上がった。
最後にこれまでの計7回、岡原さんとともに子ども達を見守ってきた呉警察署管内少年補導協助員の皆さんに子ども達から感謝の拍手が送られた。
心のケア支援はこれからが本番
この取り組みが今回で終了となることについて岡原さんは、
**「11月頃から習い事や塾も再開するなど、子ども達の生活も前に進み始めました。『小さな遊び場』としての役目は1つの区切りを迎えたのかなと判断しました」
**と、「終わり」ではなく「区切り」という言葉で答えてくれた。
古村さんも「「被災児童支援」という形は今日で一旦終了となりますが、子ども達の笑顔や絆づくりの取り組みはこれからも違う形で継続していけたらと考えています」。
あの日から6ヶ月。
一通りの復旧作業が進み、ハード面での落ち着きを取り戻しつつある中、本当の意味での生活再建や心のケアの必要性はこれから本番を迎える。
たくさんの大人達に見守られている安心感が子ども達に与える力は計り知れない。
このような取り組みは、これからもぜひ継続してほしいと心から願う。
いまできること取材班
文・写真 イソナガアキコ