【DCの街角から】チキンゲームは誰のため?

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「チキンゲームって何?」。もし子どもにそう聞かれたら、私はこう答えるだろう。「今、ワシントンで起きている騒ぎみたいなものだ」。騒ぎとは、新年を迎えたワシントンで繰り広げられる政争だ。トランプ大統領と野党民主党が不法移民対策としてメキシコ国境に造る壁を増やすか否かで衝突し、そのあおりで昨年末に始まった連邦政府機関の一部閉鎖が越年した。

政府閉鎖はトランプ政権下で3回目だが、今回は様相が異なる。民主党がこれまで以上に強硬姿勢を貫いているのだ。

昨年の中間選挙で民主党が下院の多数派を与党共和党から奪還。その結果を受けた新議会が3日、開会した。その日の朝、初当選した民主党下院議員の事務所を訪ねると、ワシントンから車で3~4時間はかかる地元選挙区から駆け付けた支持者であふれ、お祝いムード一色だった。民主党が強いニューヨークのあるバーでは、民主党トップ、ペロシ氏の下院議長就任式の中継番組を見るパーティーが開かれ、大盛況だったという。

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そんな有権者の熱気を背に、民主党議員は活気づいている。例えば、欧州並みの手厚い社会保障政策を掲げて史上最年少の女性下院議員となったオカシオコルテス氏。保守層から「社会主義者」と忌み嫌われる人物だが、議会初日に議場で共和党議員からブーイングを浴びても一笑に付し、「大統領は差別主義者」などと連日発言。「反トランプ」の急先鋒(せんぽう)として怖いもの知らずの振る舞いだ。

ただ、新人議員の中には、差別用語を使って「ばか野郎(トランプ氏)を弾劾する」と発言するなど議員としての品格が問われる言動が早くも出始めた。

ベテランのペロシ氏もいただけない。トランプ氏が年末年始の休暇を取りやめてホワイトハウスに残り「ひとりぼっちだ(かわいそうな私)」とツイートするなど政府閉鎖の解決に取り組む姿勢をアピールしている最中に、ペロシ氏はハワイで休暇を過ごし、トランプ氏はもちろん、国民からも批判を浴びた。

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米国民は、時に庶民感覚と懸け離れた言動を示す政治家に失望し、政争に明け暮れて政策を実行できない「ワシントン政治」に強い不信を募らせてきた。それを敏感にかぎ取り「腐った政治の一掃」を約束して大統領選を制したのがトランプ氏だ。

こうした状況を踏まえれば、トランプ政権に「ノー」を突き付けつつ、国民の目を意識した謙虚さが民主党には不可欠のはずだが、現状はほど遠い。トランプ氏と民主党は今年、さまざまな局面でチキンゲームを続けるだろう。ゲームが過熱すればするほど、国民の政治へのまなざしは冷めていく。そんな気がしてならない。 (田中伸幸)

=2019/01/12付 西日本新聞夕刊=