きょう成人の日 女性消防士 藏園 彩乃さん

 分厚い防火服を身に着け、前髪を上げてヘルメットをかぶる。背中の空気ボンベを合わせると総重量は20キロ。ずしりとした重みに気が引き締まる。生死に関わる火災現場で男女は不問。長崎市消防局の藏園彩乃さん(19)は最前線で日々の業務に励む。張り詰めた24時間を終えた午前9時。安心感に少しの疲労が交じる朝が好きだ。
 祖父は消防士、父は自衛官。「人助け」を身近に感じる家庭環境で育った。人が逃げる方と逆に進む-。祖父が語る消防士像に「ヒーロー的な格好良さ」を感じた。地元大村の高校を卒業後すぐに、祖父が勤めた長崎市消防局に入った。
 497人いる消防士のうち女性は6人。その中で唯一、消防隊として最前線に立つ。現場で男女は関係ない。だからこそ体力や経験に差があっても先輩男性に負けるのは「悔しい」。思い描いた消防士像にはまだ追いついていない。ホースの筒先を手に、初めて火災現場の第一線で放水した時は重責だった。不安な顔で助けを求めている人に「ありがとう」と笑顔をもらうと、やりがいを感じる。
 憧れだった消防業務の経験を積みたい。半面、人と接する救急業務で女性の強みを生かせるとも感じる。結婚も子育てもしたいが、タイミングは難しい。家庭を持てば24時間の隔日勤務は大変だ。出産をすれば体力は落ち、現場を離れることで判断力が鈍る。失敗が許される現場でない。なりたい自分、なるべき自分。その両方がうずまく。「将来設計は正直立てづらい」
 将来がきっちりと定まっているわけではない。ただ「常に学ぶ姿勢を持ち続けること」が将来の選択肢を増やすことに違いはない。女性消防士が少ない環境の中で「自分のキャリア形成が『新雪に足跡を付ける』とも思っている」。後輩の見本となる存在に近づくために日々を充実させる。新成人の目標に「吸収」を掲げた。

「常に学ぶ姿勢を持ち続けたい」と語る藏園さん=長崎市消防局

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