河北春秋(1/14):一関市の旧東山町役場近くの公園に石碑が立…

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 一関市の旧東山町役場近くの公園に石碑が立つ。<まづもろともにかがやく宇宙の微塵(みじん)となりて無方の空にちらばらう>。宮沢賢治の『農民芸術概論綱要』の一節が石巻市産の稲井石に刻まれている▼建立は1948年12月。賢治の精神を敗戦の痛手から立ち上がる道しるべにしよう-。地元の青年団が中心となって建てた。詩人谷川俊太郎氏の父で、賢治の研究者でもあった哲学者の徹三氏が揮毫(きごう)した▼37歳で亡くなる賢治は晩年、東山町にあった「東北砕石工場」の技師に就く。やせた土壌の改良材となる石灰普及のため、販売戦略を練って宣伝文句を考え、岩手や宮城の肥料店などを訪ね歩いた。オーバーワークがたたって出張先の東京で倒れ、2年後に帰らぬ人となる▼砕石工場に身をささげた生き方は『グスコーブドリの伝記』の技師ブドリに重なって見える。碑の完成を記念した講演会で徹三氏は「過労による死にむしろ満足を感じていたであろう」と述べたという▼東日本大震災からの復興に向かう岩手県大槌町では、三陸の情景を詠んだ賢治の『旅程幻想』を詩碑にする動きが進む。「賢治の『利他』の精神を目に見える形で共感したい」と中心メンバーの佐々木格(いたる)さん(73)。クラウドファンディングで今月末まで資金を募っている。(2019.1.14)