社説:成人の日 多様性ある社会の担い手に

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  京都市の国家公務員の男性(52)=南区=は昨年夏のある日、二十歳になった大学生の次男から打ち明けられた。

 「僕は女性には関心がない。男性を好きになるタイプだと思う」

 職場の研修などでLGBT(性的少数者)については知っているつもりだった。しかし「こんなに身近な存在だとは、想像してもみなかった」。

 男性は、「戸惑いがなかったといえば、うそになる。でも、話してくれてうれしかった」と話す。いまは「二十歳のカミングアウト」を決断した息子を応援する毎日だ。

 多様性-。きょう、「成人の日」を迎えた皆さんの時代に大切にしてほしい言葉だと思う。

 新成人が歩んでいく時代に、人が出身地や国籍、性や年齢、肌の色などで差別されることは、過去のものになっているだろうか。

 現実には、正反対の光景が世界のあちこちで見られる。少なくない政治家が社会の分断をあおる言葉を使う。超大国アメリカの大統領は、国境に巨大な壁を造ろうとまでしている。

 しかしこれらは、多様な価値観と生き方を人々が互いに認め合う社会へ生まれ変わる過程の、一時のきしみであってほしい。

 新成人の世代が、この社会を多様な彩りに満ちたものに近づけてくれると期待したい。

■不都合な現実直視を

 未来を切り開くためには、あらためて現実を直視する必要がある。

 昨年、私たちは、日本の社会に深刻な差別や因習がいまだに横たわっている実態を目の当たりにした。

 障害がある人たちに対し、長い間、強制不妊手術が行われていたことが明るみに出た。

 「不良な子孫の出生防止」を目的とした強制的な手術を認めた旧優生保護法が、新成人が生まれる少し前の1996年まで存在していた。

 法が改められても救済はされなかった。極めて重大な人権侵害なのに、なぜこれまで放置されていたのだろうか。

 被害の実情についての調査や検証がようやく動きだした。そのあり方を若い世代こそ、注目してほしい。

 職場や学校でセクハラの告発が相次ぎ、大学入試であからさまな女性差別が行われていたことも分かった。

 日本では86年に男女雇用機会均等法が施行され、99年の同法改正でセクハラも禁じられている。それにもかかわらず、である。なぜだろう。

 世界経済フォーラムが公表した2018年のジェンダーギャップ(男女格差)ランキングで、日本は149カ国中110位、先進7カ国中で最下位になった。

■対等な関係築きたい

 政治の世界から個々の職場まで、男性が多数で中心的な地位を占める実態がある。セクハラを「やり過ごす」「我慢する」ことが、いまだに社会通念になっているのではないか。

 最新の社会学や心理学の成果では、セクハラの主な動機は性的欲求でなく「支配欲」であることが明らかになっている。力によってしか人と人の関係を築けない大人のなんと多いことだろう。

 衆院議員が月刊誌への寄稿でLGBTは「生産性がない」と書き、批判が集まるとこの議員を支持する文芸評論家らが「何が問題か」と開き直ったことも、記憶に新しい。

 21世紀とは思えない悲しい現実だが、それらに対する動きの中に希望も見いだせよう。

 当事者が声を上げるようになったことだ。強制不妊治療やセクハラの被害者、医学部を志望する女性たちが実名で告発を行った。

 一方、社会の中心的地位を占めている世代がこうした問題にほとんど関心を持たず、それどころか、問題が存在することすら把握していなかったことが、あらためて浮かび上った。

■「政治」を動かそう

 問題の解決には、若い世代が声を上げねばならない。だからこそ、政治や社会に関心を持ってほしい。

 オバマ米前大統領は昨年11月、中間選挙のキャンペーンで最初に大学を訪れ、学生たちの前でトランプ大統領を批判した後、こう語りかけた。

 「民主主義にとって危険なのは、トランプ大統領ではない。最も危ないのは、有権者の無関心や冷笑的な態度だ」「ネットに投稿するだけでなく、選挙で実際に投票してほしい」

 日本でも社会の分断や格差の拡大が進む。孤立感を深め、息苦しさや「生きづらさ」に直面する若者も少なくない。

 人々がお互いに多様性を認め合う社会に変わるためには、若い世代の柔軟な思考や感覚が、実際の政治や社会に反映される必要がある。

 今年は選挙の年でもある。未来のために、社会の動きに目をこらしたい。そして、投票所に足を運ぼう。