<17>「いもりの黒焼き」によると

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みなさんは年末年始をどのようにお過ごしになったでしょうか。きっと希望や目標を持って、時代の変わる新年をお迎えになったことと思います。

私の今年の目標は「女性から見つめられる男になる」です。「何を今更」と言われそうですが、目標を定め、達成するために努力することは脳のモチベーションを高めます。見つめられると男性ホルモンのテストステロンが増加します。はつらつとした“テストステロン的生活”につながります。

古典落語の「いもりの黒焼き」で甚兵衛さんが説くおなごにほれられる良い工夫とは「一見栄(いちみえ)、二男(におとこ)、三金(さんかね)、四芸(しげい)、五精(ごせい)、六おぼこ、七ぜりふ、八力(やぢから)、九肝(きゅうきも)、十評判(とひょうばん)」。見栄は身なり、男は顔かたち、精は勤勉、おぼこは純情、肝は度胸、評判は人望のこと。十のうち一つでもあれば、もてるのだそうです。

私はイケメンと呼ばれたことはなし。踊りや歌も苦手です。60年も生きていると、純情だけで世間の荒波を乗り越えることは難しいと思うことがあります。患者さんからは「先生は話が苦手みたいですね」と言われる始末。さらに、からきし度胸がありません。勤務医時代、病棟での夜間回診を終えて戻るとき、「何かが付いて来ないように」と背中を壁に押し当て、ずらすようにして当直室に入り、慌てて鍵を掛けていたくらいですから。人望を集めるほどの付き合いもなし。要するに二男、四芸、六おぼこ、七ぜりふ、九肝、十評判はどれも持ち合わせておりません。

それならばと、せめて体形を保つために今年も筋トレを続け、人前では身なりに気を付け、「死ぬ時が定年」と言っていた父を見習って自分なりに全力で仕事をしていきたいと思います。そうすれば、残りのどれかがあると思ってもらえるかもしれません。

夢を語るだけではテストステロンはアップしません。みなさんも目標を定め、それに向かって頑張ってください。

今年もしもじもの話を続けます。よろしくお付き合いください。

(泌尿器科医・池田稔)

=2019/01/14付 西日本新聞朝刊=