「がんになってよかった」ブログつづる京大生 共感呼ぶ闘病記

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がん治療を受けながら大学生活を送る山口さん(中央)。授業後に同級生と談笑する=京都市左京区・京都大

 「若いのに」。他の患者から口をそろえて声をかけられるが、しっくりこない。若い人の病や死が一様に不幸だというのか?

 インターネットで公開している闘病ブログに、続けて書き込んだ。

 がんになってよかった

 京都大工学部3年の山口雄也さん(21)=京都市左京区。2016年に胸の胚細胞腫瘍、18年に急性リンパ性白血病と、相次いでがんになっていた。ブログは闘病の様子を写真も交えて紹介し、ウイットに富む。

■寄り道こそが人生

 「『若いのに』の後は『がんになってかわいそう』と続くんでしょう」。山口さんは、自身に向けられる視線への違和感を口にする。「失ったことも多いが、得たことも多かった。入院先に色んな人が見舞いに来てくれ、SNSだけのつながりだった友からも連絡がきた」

 ブログにはこうある。

 闘病生活はお盆みたい。何気ない生活を送るだけでは会えない多くの人のもとへ帰省できた。実はつながっていた安心感。ばかみたいに笑い、あの頃を懐かしみ、ちょっぴり泣く。

 がんにこの世界の美しさを教えられた。空が青かったり、パンがおいしかったり、朝気持ちよく起きられたり。生きている今この瞬間はかけがえがない。

 高校まで9年間、陸上競技に汗を流した。

 ストレート・ライン。最短距離かつ最速が好きだった。でも初めて道を外れた。そんな時、恩師や親父ら大人が寄り道こそが人生と教えてくれた。

 大学1年の冬に入院して抗がん剤治療と手術を受け、2年の春に胚細胞腫瘍は切除した。だが3年の夏、白血病が判明し、どん底に突き落とされた。

 見舞いに来た友人が普段と変わらず接してくれ、前を向こうと決めた。ブログを再開し、発病の仕組みや治療法を詳しく発信した。「病気としっかり向き合いたい。そのためには他人にかみ砕いて伝えられるほど理解しなければ」。ネットで論文を読みあさった。

 一方、軽快なタッチやユーモアは失わなかった。

 サバサバした看護師さんに会話の糸口を見いだすため、付けていたヘアピンを褒めると、毎日付けた!

 ブログのアクセス総数は20万回に達し、友人に「こんなにお前が頑張っているんやから俺も頑張る」と言われた。看護師を目指す学生からは「医療への考え方が変わった」とも。患者として応援されるだけの存在ではなくなった。

 この間は学業との両立の闘いだった。入院期間は計約10カ月あったが、休学せずに単位を取得した。相部屋だったため、勉強は消灯後。午前3~4時まで欠席や試験に代わるリポートを作成した。抗がん剤の影響で手が震える中、3年前期はリポート85枚を仕上げた。「友人と一緒に卒業するという目標を持つことが、闘病の支えだった」

■就職や子作りへの影響で葛藤も

 昨年10月に骨髄移植が終わり、今は通院治療しながら大学生活を送る。

 思春期や若年成人にあたる15~39歳のがん患者は「AYA世代」と呼ばれるが、支援の遅れも指摘される。山口さんも今後、再発の可能性などを抱えながらの社会生活に不安を見せる。

 就職試験で病気を伝えたら不利にならないか。がん治療は子どもを作る際にどう影響するか-。「子どもができても、成長を見守る20~30年後まで生きられるかな」。葛藤は深い。