ロシア、安倍首相は「無神経」

国営テレビ酷評、外相は主権巡る交渉拒否

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太田清

47NEWS編集長

太田清

47NEWS編集長

共同通信社入社後、広島支局、大阪社会部、外信部、経済部、ベオグラード支局、モスクワ支局、ローマ支局などを経て2016年より現職。イトマン事件、阪神大震災、コソボ紛争、ユーゴ空爆、モスクワ劇場占拠、アフガン紛争、ギリシャ財政危機、東日本大震災などを取材。

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ロシアのプーチン大統領(右)と安倍首相=2018年12月1日、ブエノスアイレス(共同)

 ロシア国営テレビのニュース番組「べスチ・ニェジェーリ」は15日までに、日ロの平和条約締結交渉を特集、看板キャスターのドミトリー・キセリョフ氏がプーチン・ロシア大統領との本格的な交渉を前に安倍晋三首相があたかも北方領土問題は解決済みのように振る舞い、ロシアを「急かし追い込んでいる」として、首相の対応について「無神経」と批判した。 

 「べスチ・ニェジェーリ」は毎日曜夜に放送され、前週の主なトピックを取り上げる人気ニュース番組で、キセリョフ氏はロシア政府が対外宣伝の強化を目的に新設した国際通信社「今日のロシア」社長に任命されるなど、プーチン政権との関係が深く「クレムリンの代弁者」とも称される。今回の発言が政権の意向を反映しているのは間違いない。

 タス通信などによると、折しも、14日にモスクワで行われた河野太郎外相との会談後、ラブロフ外相は「日本が南クリール諸島(北方領土)のロシアの主権を含め、第2次大戦の結果を完全に認める」ことが交渉の前提になるとの立場をあらためて強調、「諸島の主権を巡る問題は議論の対象ではない。これはロシアの領土だ」との姿勢を表明したことで、首脳会談を前に日本は極めて厳しい立場に追い込まれている。 

 キセリョフ氏は番組冒頭で日本の歌舞伎や生け花、俳句などの文化を取り上げ、その「繊細さ、節度」を称賛する一方で、これに対比するように、日本の交渉姿勢は「ビェスタクトヌイ」(無神経、節度知らず)だと指摘。 

 同氏は、安倍首相が父親の故晋太郎元外相の墓参りをした際、平和条約締結交渉に関し「何としても前進させ、終止符を打つため全力を尽くすと誓った」ことや、北方領土の帰属が「日本に変わることを(ロシア人住民に)理解してもらう」などの発言を次々と取り上げ批判。

 安倍首相はこうした発言で、プーチン大統領を前に「メンツを失った」とも語った。一方で、「(北方領土を含む)クリール諸島はロシアの領土だ。領土の変更は認めない」として引き渡しに反対するサハリン州(北方領土を事実上管轄)のリマレンコ知事代行の発言も取り上げた。 

 また、ロシアのモルグロフ外務次官が日本の上月豊久駐ロシア大使を外務省に呼び、安倍首相の発言について「日ロ首脳の合意を歪曲し、両国国民を惑わすものだ」と抗議したことも紹介。 

 さらに、在日米軍トップのマルティネス司令官が北方領土の一部を日本に引き渡せば米軍が展開する可能性があるとロシア側が問題視している点について「現時点で米国が戦力を置く計画はない」と述べたことにも触れ、「ロシアが現時点では、アラスカにロシア軍を配備する計画はないと言っているようなもの」として、信用できないと述べた。 (共同通信=太田清)