DeNA筒香が子供の未来を憂慮 野球の育成現場に“苦言”「大人が中心の指導」

野球未経験児童を対象とした野球体験会を開催したDeNA・筒香嘉智【写真:佐藤直子】

高校野球の現状にも「甲子園でかなりの数の選手が潰れていると思う」

 DeNA筒香嘉智外野手が14日、大阪府堺市内で野球未経験児童を対象とした野球体験会を開催し、昨年に引き続き、野球界変革の必要性を訴えた。筒香は、小中学生、あるいは高校生を対象とした野球の育成現場が、本来は主人公であるべき子供たちが脇役となり、指導者や保護者といった大人たち本位で動いている現状に疑問を呈し、「子供たちが将来社会に出たり野球選手になった時に活躍できる環境を作ることが大事」と指摘。特に、高校野球のあり方について「甲子園でかなりの数の選手が実際に潰れていると僕は思っています」と私見を述べた。

 野球界、スポーツ界のために、現役選手が本音を明かした。昨年1月に開催された「アグレシーボ体験会」では、いまだに暴力や暴言が横行する野球の指導現場に苦言を呈したが、その後、実際に少年野球チームの指導を見学しに行ったり、指導者や保護者と会話を重ねる中で、その問題が根深いことを実感。再び、野球の楽しさに触れる子供たちを前に、厳しいながらも愛のこもった発言をせずにはいられなかった。

 筒香は、子供たちの指導現場では、いまだに一昔前の詰め込み型、軍隊方式の指導が主流であることを伝え、「指導というより暴言、罵声。子供たちはできないのが当たり前なのに、なぜそれに腹を立てて怒るのか。それは大人が中心になった指導になっているからではないかと思いました」と話した。さらに、勝利至上主義から生まれる厳しく長い練習、過密な試合スケジュールなどを疑問視。企業やメディア、プロ球団が主催するトーナメント制の大会も「勝ち進めば進むほど過密日程になる。良かれと思ってやっているのだと思いますが、逆に子供たちが犠牲になっているという観点も持ってほしい」と訴えた。

甲子園での連投には「外国人選手が一番ビックリした反応をしています」

 さらに、話が高校野球に及ぶと、自身も強豪・横浜高校で甲子園出場を果たしているが、「甲子園でかなりの数の選手が実際に潰れていると僕は思っています」とキッパリ。「甲子園に本当に行きたいのは誰なのか考えると、監督だったり部長(の先生)だと、僕はいろいろ見たり聞いた中で思う」と話した。特に、甲子園で1人の投手が連投することについては、テレビ中継を見ていた外国人選手の反応を披露。「テレビを見て『この子たちは潰れるぞ。クレイジーだ』って言っています。外国人選手が一番ビックリした反応をしていますね」と明かした。

 もちろん、行き過ぎた指導をする監督やコーチばかりではなく、全国には新たな指導法を模索し、挑戦する指導者も多い。彼らの努力についても触れ、「いきなり大きく変わるということは難しいことですけど、みんなが協力しあって、いろんな知恵を出すことが大事。少しずつ変わっていく中で、いずれ大きく変わるチャンスにつながったり、実際に大きく変わることができると思う。そういう思いがある方がみんなで協力しあうことが大事だと思います」と訴えかけた。

 昨年は大学アメリカンフットボールやボクシング、体操など、スポーツ界で様々な問題が浮上した。少年野球の現場でも指導者が暴言を吐き、暴力を振るう映像が公になった例もある。こういったスポーツ界の問題を、野球界から少しずつでも正していきたい思いも強い。

「僕は野球をやっているので、野球から動いていければ」

 打席で大きなホームランを放つ姿と同時に、問題提起を続けることで、大好きな野球が将来もずっと続いていくサポートをしていくつもりだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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