[おすすめ書籍]日本人の勝算〜大変革時代の生存戦略〜デービッド・アトキンソン著

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現在の日本の観光戦略の礎となった 『新・観光立国論』 の出版が2015年6月。それから4年足らずの間に数多くのベストセラーを上梓し続けてきたデービット・アトキンソンさんの最新の著作は、自分にとっては今まで以上のインパクトのあるものでした。

人口減少・少子高齢化・資本主義の行き詰まり…誰かが言っていましたが、「一億総不安社会」と言っても違和感のない時代に突入。オリンピックの高揚感でなんとかそれをかき消そうという雰囲気にも限界があるのはみんなわかっているはず。でもだれもが「こうすればいい」という解は持ち得ていません。

そんな状況で、これほど明快な切り口でその糸口を見出している本著は、他の数々の時代を占う様々な著書の中でも明らかに異彩を放っています。

みんなが知りたいのは、 「じゃあどうしたらいいのか?」 の一点。

アトキンソンさんは、それに対して、 これでもかというくらいのデータと論文引用 で、最終的にはその”解”を 「最低賃金の引き上げ」 だと喝破しています。今までの著作以上に、その”結論”には迫力を感じます。

「そんな簡単に解決したら苦労しないよ…。」 日本人にありがちな、感情的なだけで論拠の乏しい反論に、著者は今まで以上に周到かつ理論的な文脈で、これでもかというくらい畳み掛けてきます。引用した100を超える論文や、数々のデータによる分析は、中途半端な反論の余地は微塵も与えません。自分のような最低レベルの経済知識しか持ち合わせない者にとっても、その論理性や説得度合いは十分伝わってきます。

そんな著書を読み進めていくうちに、全く別の疑問が頭をもたげてきます。 それは、 「なぜこの人は、こんなにも一生懸命日本のことを考えてくれてるんだろうか?」 ということ。

ただ30年住んでいるというだけでは説明がつきません。自らの知性や理論の正当性をただひけらかす風でもない。なんというか、威厳のある祖父に、厳しくも愛情深い「喝(かつ)」を入れられている感じというか、そんな気さえしてきます。その気迫は尋常ではないレベルです。

迫力ある各章は、次々と”目からウロコ”の議論を展開しています。

・消費税を2%あげるかどうかは、問題の本質では全くない。 ・この局面では、量的緩和政策は全く効果がない。 ・生産性は、実は中小企業の方が悪い。 ・大企業でこそイノベーションは可能だ。 ・働き方を変えて効率を上げることで、生産性向上を目指すなんて生ぬるい。 ・アメリカの生産性の高さは、実は人口増が主な要因だ。 ・日本の経営者の判断に任せていてはもはやだめだ。 ・手本はアメリカではなく、明らかにヨーロッパだ。 ・人材の質が高い日本人は、自信を持って最低賃金の引き上げをすべき。 ・輸出こそ付加価値アップの切り札。その最たる方法こそ観光だ。 ・大人への教育を「強制」にすべきだ。 …などなど。

ここまで言い切れて、しかもそれぞれに説得力がある。ある意味、読んでいて気持ちがいいくらいです。 よくある”日本人礼賛的”な感情論や、「なぜ日本からはジョブズが生まれないのか?」的な空虚な足場に立脚することのない、極めて理系的な基盤に立った提言なのです。 その上で、「勝算がこれだけあるのに、お前らこんなふうでいいのか?!」と。一貫して論理的な中に、感情溢れる強いメッセージを感じました。

また、これ読んで、自分はもう一つの”可能性”を感じました。 それは、本著にはあまり触れられていませんでしたが、私達が少しでも貢献したいと思っている 「都市部から地方への人材の移動/移住」 という大きな流れについてもまた、 日本の競争力や生産性を大きく高めることに寄与する に違いない。そう確信したからです。 アトキンソンさんが言う”中小企業”は、やはり地方に多い。それだけに、中小企業の生産性を向上し、生み出す付加価値を高めることこそが、最もインパクトの大きい「ボトムアップ」に違いない。 それをするには、最低賃金を引き上げても、それを超える価値を生む人材が必要。それはやはり都市部に固まっているはずなのだから、人材のやはり移動は必須なのだということです。 この点では、やはり自分たちが目指す事業の方向性にも、大きな勇気を与えてもらった気がします。

地方創生や、観光に関わる皆さんには「必読書」 といえると思います。それも、2019年のなるべく早い時期に読んでおいたほうがいいのではないかと。民間だけではなく、 国政や自治に関わる皆さん にはなおのこと・・・。自分は、一刻もはやく全体を通して理解したい衝動にかられすぎて(笑)、3時間で一気読みしてしまい細かいところは端折ってしまっているので、もう一度じっくり読み返そうと思います。みなさんも是非!

文:ネイティブ倉重