家では父親の暴力におびえ、学校でもイジメに耐える文学少女のミレは、初めての恋と友情に破れて自殺を考える。一方、ミレが拠りどころにするゲームの世界で知り合ったジェヒも、親友をイジメた過去に耐えかね自殺を決意していた。原作は韓国の人気ウェブ漫画。『哭声/コクソン』の天才子役少女とEXOのスホの共演で、孤独な女子中学生と心に似た傷を抱えた青年の交流を描いている。
とはいえ、これは特別な誰かの特別な話ではない。奇しくも昨秋公開された日本映画『響-HIBIKI-』にも、文学少女が校舎の屋上から落ちるのに無傷という全く同じシーンがあり、あちらはまさに特別な少女(神に選ばれた天才)だったのに対し、こちらは多感な思春期の代弁者ともいえる共感型のヒロイン。ファンタジーの使い方が絶妙なのだ。イジメに関しても、ここでは社会という荒波のメタファーに過ぎず、一人で抱えるのではなく同じ傷を持つ相手を見つけることの大切さを説いている。
そして、それを支える演出にも、しっかりと作家性が息づく。特徴的なのは、ポイントポイントで効果を発揮するカメラの横移動だ。とりわけ、少女の足の運びを捉えた横移動の積み重ねは、クライマックスの屋上シーンでリリカルな緊張感へと結実している。映画的に降る雨も印象的で、確かな作家性が普遍的な題材を魅力的にしているのだ。★★★★☆(外山真也)
監督:イ・ギョンソプ
出演:キム・ファンヒ、スホ
1月19日(土)からシネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開