『愛と銃弾』 ユーモアをまぶして作った犯罪ミュージカル

(C)MODELEINE SRL ・ MANETTI bros. FILM SRL 2016

 イタリアから来た犯罪劇のミュージカルだ。舞台は、南イタリアの都市ナポリ。マフィアのボスが引退をもくろんで葬式を行うが、姿を看護師に見られてしまう。右腕の殺し屋に口封じを命じるが、看護師が彼の元恋人だったため血みどろの攻防戦に…。

 何より発想がユニーク。犯罪=サスペンスとミュージカルは本来、水と油のように相性が悪い。だから、有名な『サウンド・オブ・ミュージック』でも緊迫した場面はミュージカルでは表現していない。では、どう克服したかというと、“犯罪劇”を“犯罪ドタバタ劇”にした。ユーモアをまぶしたのだ。

 例えば、ボスの妻を映画マニアにすることで死の偽装を『007は二度死ぬ』から思いついたり、それを最初から観客に教える『刑事コロンボ』のような倒叙構成にしたりというワンクッションが、ユーモアを生んでいる。状況説明や人物設定を歌(歌詞)で済ませ、テロップを用いずに時制を行き来させる手際もうまい。その上、話自体も複雑ではない…にもかかわらず、134分の長尺なのはなぜか?

 一つには、本作におけるミュージカル場面はあくまでもアクセントなのに、頻繁で長いこと。確かに、それがユーモアを担ってもいるのだが。もう一つは、細部が無意味に凝っていること。こちらは間延びしているだけ(イタリア人には笑えるネタなのだろうか)。だからドタバタにはなっているものの、もっとちゃんとコメディーに落とし込んだ方が面白くなったはず(技量不足?)。ぜひタランティーノにリメイクしてもらいたい。★★★☆☆(外山真也)

監督:マネッティ・ブラザーズ

出演:ジャンパオロ・モレッリ、セレーナ・ロッシ、クラウディア・ジェリーニ

1月19日(土)から全国順次公開

© 一般社団法人共同通信社