元日本代表玉田 決意のシーズン 名古屋から新加入 プロ21年目 培った経験をチームへ

 シーズンが終了して間もない昨年12月6日。元日本代表FWの玉田圭司は自身のインスタグラムで名古屋からの退団を発表するとともに、複雑な思いをありのままにつづった。
 「今シーズンで退団することになりました。あまりに突然だったので頭を整理するのに少し時間がかかりました…」
 昨季はリーグ戦24試合3得点。その数字以上に、献身的なプレーでJ1残留に貢献した。手応えを感じていながら、思いがけない契約満了通告。「まだやれるのに」。今年39歳のベテランは、キャリア最長の計11年間所属したクラブを、不本意な形で去ることになった。
 まだ気持ちに整理がついていない中で届いたV長崎への移籍話。これまで名古屋、柏、C大阪とビッグクラブでの経験しかなく、なじみがないクラブへの移籍は「即決できなかった」のが正直なところだ。しかし、新たに就任した手倉森誠監督と顔を合わせ、腹を割って話す中で決意が固まった。
 「ジョークも言うし、熱い言葉というか、人柄に引かれた。何より僕を必要としてくれた」
 不安がないわけではない。しかし、それを上回る新天地への期待が、日本屈指のアタッカーを突き動かした。
 切れ味抜群のドリブルを武器に名をはせたレフティーはJ1通算99得点という堂々の成績を残している。ワールドカップには2006、10年の2大会に出場。06年ドイツ大会のブラジル戦では鮮やかな先制ゴールで日本中を熱狂させた。
 ベテランの域に入ってからはFWだけでなくトップ下、サイドをこなす器用さも備わってきた。得点源、チャンスメーク、献身的な守備などチーム事情に応じた役割をこなし、この年齢になっても見劣りしない運動量には目を見張る。何より20年間のプロ生活で培われた経験は、まだまだ未熟なV長崎にとって貴重なオプションになるはずだ。
 「今は前だけを向いている。僕自身がチームを勝たせられるような存在になりたい」
 もう迷いはない。V長崎にとって初の“W杯戦士”が、決意のシーズンを迎える。

複雑な思いを乗り越え、V長崎への移籍を決めた玉田。培った経験はチームの大きな武器になる=西原町民陸上競技場

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