V牽引した2人のキャプテン/GK飯田「重圧を半分預かる」、譲ったエース檀崎はプレーで鼓舞

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【青森山田-流通経大柏】前半32分、先制点を奪われ、反撃の士気を高める青森山田のGK飯田(左)とMF檀崎

 2018年12月、全国高校サッカー選手権の開幕が迫る中、青森山田の黒田剛監督(48)は急きょ、主将交代という荒療治に打って出た。

 高校年代で最高峰のプレミアリーグで優勝を逃し、エースの10番・MF檀崎竜孔(りく)選手(3年)=宮城県出身=からGK飯田雅浩選手(同)=東京都出身=へ。「化学反応を起こす」(黒田監督)などの理由で、檀崎選手はキャプテンマークを譲らざるを得なかった。

 檀崎選手は小学生の頃からプロ入りを強く意識。中学から青森山田の門をたたき、突出した才能で全国優勝を牽引(けんいん)した。高校入学後も1年で選手権優勝メンバーに名を連ね、ともにJリーガーの高橋壱晟、郷家友太の両選手がたどった、背番号「7」から「10」というエースの系譜を受け継いだ。

 さらに郷家選手らもなし得なかった「主将兼エース」。その重責を担った檀崎選手からの交代は、それまで副主将として彼を支えてきた飯田選手にとっても複雑だった。「本人も驚いていたし、思うことがたくさんあったはず」

 チームメートが顔をそろえたミーティングルーム。飯田選手は新主将の抱負を語り終えると、「竜孔だけ残ってほしい」と告げた。

 仲間は先に帰り、2人きりになった部屋。飯田選手は言葉を絞り出した。「お前の重圧を半分預かる」。ピッチで仲間を引っ張れるのはお前しかいない-との思いだった。檀崎選手の目から、涙があふれた。

 新体制の下、青森山田は選手権で優勝ロードを突き進んだ。準々決勝、飯田選手はゴールを死守する好セーブを連発。しかしゴール前の激しい攻防で相手と接触、脳振とうを起こして試合後48時間のドクターストップを受けた。手足のしびれはあったが、その間も裏方としてチームを支えた。

 一方、頭を丸めた檀崎選手もキャプテンマークこそないが、プレーで仲間を鼓舞した。主将交代に関する報道陣の質問にも「チームを引っ張る一員として、やることは変わらない」と語り続けた。

 14日、埼玉スタジアムで流通経大柏(千葉)との決勝。檀崎選手はエースの本領を発揮した。常に相手の背後を狙い、隙を突いてゴール前に飛び出し、2得点。準決勝まで2得点にとどまっていたが、青森山田10番の面目躍如となった。

 J1札幌に進む檀崎選手にとって、プロ入りを華々しく飾る有終の美。飯田選手はそんなエースのため一計を案じ、行動に移した。

 表彰式の後に全員でスタジアムを1周する途中、飯田選手はゴール裏で檀崎選手を呼び止めた。そして自身とは別のキャプテンマークを左腕に巻いてあげた。プレミアリーグで、檀崎選手がいつも付けていたキャプテンマークだ。

 「これまで2年半以上は彼がこのチームを支え、育ててきた」と飯田選手。優勝したら一緒に巻こうと考え、ベンチコートのポケットにしのばせていた。

 左腕に再び戻った、主将の証し。「本当にありがとう」と檀崎選手。大一番を終えたピッチ上で、二つのキャプテンマークは輝いていた。