躍進を支えた頼れる〝兄貴〟/元主将で就任15年目の正木ヘッドコーチ、黒田監督の右腕

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優勝を決め、黒田監督(右)と肩を組んで喜ぶ正木コーチ=14日午後、埼玉スタジアム

 全国高校サッカー選手権で、2年ぶり2度目の頂点に立ち、前評判通り全国トップレベルの実力を証明した青森山田。その陰には、20年前の草創期に快足FWとして活躍し、指導者としても15年にわたって携わる正木昌宣ヘッドコーチ(37)の姿があった。黒田剛監督(48)の右腕として対戦相手の分析や戦術の立案を担いながら、170人もの部員に目を配る兄貴分的存在。14日の決勝・流通経大柏戦後には「1年間、選手たちが頑張った結果。自分がどうこうというよりも、選手たちにおめでとうと言いたい」と教え子たちをたたえ、達成感に満ちた表情を見せた。

 札幌出身の正木コーチは1997年、同郷の黒田監督の誘いを受けて青森山田に入学。当時の同校は、光星学院(現・八学光星)や三本木農など強豪校の後塵(こうじん)を拝し、選手権の本戦出場は初出場の91年から96年までにわずか2回。現在のように全国レベルの強豪とは言えない状況だった。

 そんな中、正木コーチは1年生からレギュラーとして活躍し、3年連続で選手権の本戦に出場。チームとしては2回戦進出が最高だったが、5試合で計5得点とインパクトを残した。

 その後、仙台大学に進学し、大学卒業後は青森山田の事務員として母校に戻り、サッカー部の指導にも携わるようになった。以来、15年にわたり黒田監督を支え続け、現日本代表の柴崎岳や室屋成ら数多くの名選手を育て上げている。

 現在は、黒田監督不在の試合で代わりに指揮を執るなど、名実ともに青森山田のナンバー2として認められる存在。黒田監督は「土のグラウンドに、3年生が6人しかいなかった時代の主将。青森山田の歴史や伝統に加え、私の考え方もよく分かっている。青森山田のサッカーのベースを選手に浸透させてくれるパワーも持っているし、年も重ねて良いコーチに成長してきたと思う」と太鼓判。

 指導者としての長所については「厳しいところは厳しく、おちゃらけるところはおちゃらける-というメリハリと、いろいろなサッカー理論を選手目線できちんと伝えられるというのが一番の持ち味」と評する。

 選手の信頼も厚い。今大会で際立つ活躍を見せたチリ人MFバスケス・バイロン選手(18)は「試合のメンバーに入れないときでも自分たちをしっかり見てくれるし、駄目なところはしっかり言ってくれる。頼れる兄貴分という感じで、個人的にもすごい助けられている」と感謝。14日の決勝に途中出場し、3点目のゴールを決めたFW小松慧(けいと)選手(18)は「ベンチで正木さんが『一発決めてこい』と笑顔で送り出してくれたので、気持ち的にとても楽になった」と話した。

 決勝のベンチでも、黒田監督のそばに立ち、冷静に戦況を見つめながら選手に寄り添った正木コーチ。「山田は母校だし、黒田監督は選手時代の恩師。そういう意味では恩返しができてほっとしているが、1、2年生がいるので、すぐまた切り替えて新チームに取り組みたい。春には夢を抱いた子たちが入ってくるので、その子たちとまた全国優勝を目指す」と前を向いた。新たな勲章を積み重ねたその背中は、恩師と同じような風格と自信が漂っているように見えた。