第39回 新年なのに書籍の予定がない

あけましておめでとうございます。大島薫です。

さて、これを書いている時点ではまだ12月なのだが、少し早めに新年のご挨拶をさせていただいた。なんとかかんとか今年も生きてこられたのは、非常にありがたいことだ。

昨年は原作としてマンガ本を一冊、書籍を一冊、対談集を一冊出させていただいて、合計三冊出版することができた。ふと、自分の書いた本を数えてみたのだが、AV業界を引退したあと作家を名乗ってから、いままでで六冊ほど出版しているようだ。間に写真集もあったため、それも含めれば七冊ということになる。

AVを引退して三〜四年が経ち、最初はどうなることかと始めたフリーでの活動だが、年々本の数が増えてきているのはとても嬉しい。

だが……。今年は出版予定がないのだ。

ここに来ての急な落ち目。新年めでたくない。困る。いや、正直本だけで食っているわけではないのだが、いや、それでもなにか形に残る活動記録がないのは不安にもなるというものだ。

とはいえ、自費出版でもないのだから、出版社が出すと言ってくれなければ出せないのが作家の辛いところだろう。いままでは営業なんて自分でかけなくても、向こうから話が来たのだが、まさかボクにもそういう過渡期が来てしまったのだろうか。辛い。

そういう意味では、ボクはフリーになってから本も出演も自分で営業というのをかけたことがない。苦手なのだ。自分を売り込むことが。

文章を書くのは好きだし、わりと面白いものを書けるという自負はあるのだが、どうも「是が非でもこれを書かせてくれ」という情熱で書くのが性に合わない。編集から持って来られたテーマをなんとなく書いているうちに、自分自身が盛り上がってくることはある。思えば、大体の書籍の書き始めが全部そんな感じだった。

良くない癖だとは思うのだが、たぶんボクは誰かからボクの面白い部分を見つけてもらって「これいけますよ!」と後押しされないと勢いがつかないのだろう。しかし、それも見つけてもらうためのアピールをしなければ、スタート地点にすら立たせてもらえない。

そんなわけで、営業下手のボクがちょっとしたアピールのつもりで、こんなタイトルをつけてコラムを書いたわけだ。あわよくばこれが編集の目にとまり、「大島さん、いま書籍の予定ないんだ。じゃあ、うちで書いてもらおうかな」となれば万々歳。

ま、そんなにうまくいくことはめったにないのだが。ともかく、ボクの新年の始まりはこんなものになっているのだが、あなたはどうだろうか。

どうか、皆さま良いお年を。

大島 薫:1989年6月7日生まれ。ブラジル出身。ノンホル(女性ホルモン未使用)、ノンオペ(性転換手術をしていない)を公言している、純粋な男の子。Twitterフォロワー約15万人を誇る。女性よりも可愛らしい容姿を武器にセクシー女優として活躍していたが、2015年6月に引退。現在はマルチタレントとして幅広く活動中。

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