才藤歩夢選手(近代五種/フェンシング)

才藤歩夢選手(近代五種/フェンシング)

美しき二刀流が世界を魅了する

五輪種目として長い歴史を誇りながらも、日本ではマイナーな近代五種に美しき戦士が現れた。得意のフェンシングでも東京五輪を目指す“二刀流”の彼女が見据える未来とは――。

近代五種の元選手で指導者という父を間近に見て、いきなり近代五種を始めたわけではない。

「父の競技中の姿は映像でも見たことがないんです。きっかけは父から勧められたことでしたが、『泳いだり、走ったり、いろいろやる競技なんだけどやらないか?』という感じでしたね(笑)。最初は同世代の子たちとスポーツクラブで楽しく走ったり、泳いだりという感じで始めました」

乗馬も「跨ることから始めて、そこからコーチに引っ張ってもらって歩く」ところから始めた。

「中学1年生ぐらいまでは乗馬とフェンシングがない近代三種の試合に出ていました。本格的に始めたのはその頃からですね」

とはいえ、5つもの種目の練習を続けるだけでも日本では難しい。そこでフェンシングはフェンシング部のある高校を選んで入学。クラブ活動で練習を始めた。

「それまでフェンシングはあまりやっていなかったのですが、クラブで始めたらしっくりきて…」

以来、フェンシングだけで国際大会に出られるほどの実力者に。“二刀流”となるきっかけだった。

「近代五種で日本人選手が海外の選手に差をつけられるのはフェンシングなんです。そこを強化するために高校のフェンシング部に入ったので、近代五種をやめてフェンシング一本でやっていこう、とは考えなかったですね」

さらに強化に頭を痛めているのが馬術。日本では練習をする場所がなかなかないという。

「市民プールなどはどこにでもありますが、乗馬が出来る場所は東京には少ないので。週に1回とか定期的に練習するのではなく、夏休みや冬休みなどに合宿して集中して乗っています」

それほど大変な近代五種を辞めたいとは思わなかったのか?

「小学生ぐらいからずっとやっているので、逆に辞めるということを考えたことなかったですね。遊びたいとか思ったこともなくて、辞めたらヒマになっちゃうのかな? と思ったぐらいで(笑)」

では、近代五種の魅力は?

「五種目あるので一つがダメでも他の種目で挽回できたり、順位の入れ替わりが激しいんです。そこはやっていても面白いし、観戦していても面白いと思います」

これほどタイプの違う種目をこなす、難しい競技を続けているのにストイックな雰囲気を感じない。もともと欲張りな性格?

「そういうことはないと思いますけど(笑)。でも、一つの競技だと飽きちゃうかもしれないですが、五種目あるので単純にバランスが取れているのかな(笑)」

東京五輪が決まった時は「普通にうれしかった」という。

「生きている間に自分の国で五輪が開催されることはあまりないですからすごいことだと。すぐに『出たい』と思いました。でも、簡単に出られるわけではない、というのも分かっているので、まずは実績を積むことです。東京の次にも五輪は開催されるので」

とはいうものの、東京五輪出場を見据えて、やらなければいけないことも把握している。

「得意のフェンシングをさらに強化しつつ、苦手な陸上をもう少し伸ばしたいです。水泳と陸上が苦手なんですが、水泳が遅い選手でも表彰台に上がれることもあるので点数的にそれほど重要ではないんです。もちろん速く泳ぐに越したことはないのですが、それよりはランニングを強化しないと。最近の近代五種はそんな戦い方が主流になっているので」

日本人が近代五種で苦手とするフェンシングを最大の武器にする才藤。さらにもう一つ、メンタルの強さも彼女の強さだ。

「緊張しない、というのはあります。以前は緊張していたのですが、緊張した時と、していない時では、断然していない時の方が成績が良かったんです。それに気づいてからは『緊張したら自分は弱くなる』と意識して考えすぎないようにしています。うまくコントロール出来るようになりましたね」

自然体で近代五種とフェンシングの“二刀流”をこなす才藤だが、一方でちょっとした不満も。

「私自身、マイナー競技だというのは感じています。近代五種と言っても『何それ?』と言われることもあるし。『聞いたことがある』と言われただけで、こっちが『おっ!』とうれしくなるぐらい(笑)。ヨーロッパはもちろん、お隣の韓国でも有名なんですよ」

東京五輪はそんな競技をメジャーにするチャンスだ。

「競技人口を増やすだけではなく、やりやすい環境作りに貢献できたら、と思います。でも、それを実現しないと、というプレッシャーは感じていないですね(笑)。少しは感じた方がいいのかもしれないけど、と思うぐらい本当に感じていないですね(笑)」

ストイックという言葉とは無縁の笑顔を見せる才藤。自然体で“二刀流”を貫き、2020年東京で弾けるような笑顔を見せて欲しい。

【TVガイドからQuestion】

Q1 印象に残っているスポーツ名場面を教えて!

大学(早稲田)、高校(埼玉栄)の先輩でもある瀬戸大也選手が’13年の世界水泳で金メダルを獲得した400m個人メドレーです。瀬戸選手に限らず先輩たちが出ていると応援していますが、私も頑張ろうという気持ちになるんです。

Q2 “2020”にちなんで20代のうちにやりたいことを教えて!

遠征ではなく、普通に旅行で海外に行きたいです。定番のハワイとか(笑)、アメリカ、イタリアとか。遠征はヨーロッパが多いのですが、最近は旅行で海外に行くことがあまりないので。20代のうちには行っておきたいです。

Q3 好きなTV番組/音楽(応援歌)を教えて!

見て笑える番組が好きなので「水曜日のダウンタウン」(TBS系)と「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ系)は欠かさず見ています。音楽はアップテンポの洋楽を聴いていて、その時の気分でアプリで選んでもらって聴きます。

近代五種とは?


馬術(障害飛越)、水泳(200m自由形)、フェンシング(エペ)、レーザーラン(射撃、800mランニング)の5種目で争われる競技。国際大会では男女個人・団体・リレーがあるが、オリンピックは男女個人のみ。クーベルタン男爵によって近代オリンピックとともに生み出された伝統ある競技。フェンシングのエペは有効面が全身と剣の内側の非絶縁部分と広く、フルーレのような攻撃権の概念もないため分かりやすい。

【プロフィール】


才藤歩夢(さいとう あゆむ)
’96年9月14日東京生まれ。乙女座。A型。

▶︎近代五種競技の選手だった父親に勧められ、小学校高学年から近代五種を始める。五種の中でも得意とするフェンシング競技(エペ)でも国内トップクラスの実力に。
▶︎フェンシングでは’15年世界選手権出場、’16年学生日本選手権個人優勝、’17年全日本選手権団体優勝など。近代五種では’17年ワールドカップ混合リレー2位など。
▶︎思い出深い大会は’17年ワールドカップアメリカ大会で銀メダルを獲得したミックスリレー。「強豪が出場した大会で緊張もせず楽しんで試合が出来たのが良かったのかなと」。
▶︎1月末からの近代五種ハンガリーオープンに出場予定。「水泳、ランニングでベストタイムを出せれば結果はついてくるのかな、と思っています。上位を目指して頑張ります」。

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取材・文/田村友二 撮影/增田勝行(SIGNO)
ヘアメイク/住本由香(マービィ) 衣装協力/a.v.v

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