二重被爆者故山口彊さんの活動 記録 映画DVD 平和教材に 長崎市教委 全市立小中高校に配布へ

 広島と長崎で原爆に遭った二重被爆者の故山口彊(つとむ)さんの姿を追ったドキュメンタリー映画「二重被爆~語り部・山口彊の遺言」のDVDが、長崎市立の全小中高校109校に配布されることが決まった。長崎市教委によると、平和教材として映画が配布されるのは初めてとみられる。
 三菱長崎造船所で働いていた山口さんは1945年8月6日、出張先の広島で被爆。長崎に戻った翌日の同9日、再び原爆に遭った。原爆症と闘いながら晩年は語り部として核兵器廃絶を訴え、2010年1月、93歳で生涯を閉じた。
 映画は稲塚秀孝監督(68)=東京都在住=が2011年に製作。カラー、全70分。山口さんが被爆体験を証言したり、ニューヨークの国連で講話したりする様子などを収録した。国内外で広く上映されている。
 昨年12月に長崎市内であった「長崎国際平和映画フォーラム」で上映すると反響が大きく、稲塚監督が長崎市教委にDVDの寄贈を提案した。今月中に全市立学校に無償で配る予定で、各校で教材として活用してもらう。
 稲塚監督は「被爆体験の継承が難しくなる中、映像は重要な手段の一つになる。新たな平和教材として長く活用されてほしい」と話す。
 山口さんの孫、原田小鈴さん(44)=長崎市在住=は「祖父の体験を通じて長崎と広島の史実を知ってもらい、これを機に被爆地の平和交流が広がれば」と期待した。

長崎市立学校に配布される映画「二重被爆」DVDの表紙

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