領土交渉、ロシアが仕掛けた「罠」

日本、国際問題無視し邁進

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太田清

47NEWS編集長

太田清

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共同通信社入社後、広島支局、大阪社会部、外信部、経済部、ベオグラード支局、モスクワ支局、ローマ支局などを経て2016年より現職。イトマン事件、阪神大震災、コソボ紛争、ユーゴ空爆、モスクワ劇場占拠、アフガン紛争、ギリシャ財政危機、東日本大震災などを取材。

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ロシアのラブロフ外相(右)と河野外相=14日、モスクワ(共同)

 14日の日ロ外相会談で、平和条約締結交渉を巡るロシアの予想以上の厳しい姿勢を受け、22日の首脳会議に向け態勢立て直しを迫られている日本外交だが、ロシアのラジオ局「モスクワのこだま」(電子版)は16日までに、同国有数の知日派外交官だったゲオルギー・クナーゼ元外務次官の発言を伝えた。この中で、クナーゼ氏は日本が北方領土問題解決を最優先としてロシアを巡る国際問題を無視し、安倍晋三首相がプーチン大統領との会談を重ねてきたにもかかわらず、ラブロフ外相が日本が受け入れられない「罠」を仕掛けてきたと指摘した。 (共同通信=太田清) 

 クナーゼ氏はロシアにとり、日本との領土問題が重要な理由として、2014年のクリミア併合を受けロシアを追い出した先進7カ国(G7)の中で、日本が唯一、「価値ある対話」を行える相手だと説明。ロシアが対ウクライナ、シリア、欧州、米国で問題を抱えているにもかかわらず「日本は、そうした問題に配慮することは少なかった。同盟国と連帯して(制裁などで)対応することも最小限だった」とし「それは自身の問題=領土問題=が(国際的課題より)ずっと重要だったからだ」と語った。 

 一方「ロシアも同じ論理に従っており、次回の首脳会談が25回目となることがそれを裏付けている」と、国際的に孤立するロシアにとっても、日本が重要なパートナーとなってきた点を強調。 

 しかし、「両国の密接な関係が領土問題解決の突破口につながるかどうかと言えば、疑問を持ってきたし、外相会談をへて疑問はさらに強まった」として「日本が南クリール諸島(北方領土)のロシアの主権を含め、第2次大戦の結果を完全に認めることが(交渉のための)疑いない第一歩となる」とのラブロフ外相の発言を紹介。 

 こうしたロシアの要求は外相が仕掛けた「罠」で、罠に陥り、ロシアの主張する第2次大戦の結果を認めてしまえば「日本が島の主権を主張してきた根拠ともなる法的立場を事実上、放棄することになる。日本はロシアと同等の権利を持つ交渉相手から、ロシアの慈悲、譲歩を待ち、そうした譲歩に対し最大の対価を払うしかない哀願者に変わってしまう」と警告した。 

 クナーゼ氏は日本が罠に陥ることにはならず、相応の回答を見いだすことになるが、それがロシアを喜ばすものになるかどうかは分からないと締めくくった。 

 クナーゼ氏はモスクワ大卒業後、ソ連外務省に入省し在日本大使館などで勤務。外務次官、駐韓国大使などをへて現在はロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所主任研究員を務めている。