拭えるか“男の仕事” 女性消防士の認知度向上を模索

 “消防士は男の仕事”のイメージを拭えるか-。総務省消防庁は2026年4月までに全国の女性消防士の割合を全体の5%に引き上げる目標を定めているが、長崎県では18年4月時点で1・56%と程遠い。長崎市消防局では、仮眠室などの職場環境を整備する一方、企業説明会を開いたり、ガイドブックを配るなど「女性活躍の場」としての認知度アップを模索している。
 「女性が生涯働けるイメージがないため、職業の選択肢に入っていないのでは」。市消防局の人事担当者は現状をこう分析する。同局は2000年に女性2人を採用した。18年4月時点では497人のうち女性は6人で全体の1・2%にとどまる。今春の新規採用も応募136人に対し女性は2人で、実際に受験した人はゼロだった。
 消防庁によると、17年4月時点の全国の女性消防士は4240人で全体の2・6%。これに対し、警察官の女性の割合は17年4月時点で8・9%、自衛官は16年度末で6・1%。消防士も救急の現場などで女性へのニーズは高いが、職場環境の整備や家庭との両立が課題となっている。
 本県では、18年4月時点で全消防士1730人のうち女性は27人。県消防保安室は「全県的に女性の応募者が少ない」とし、消防庁が掲げる5%の目標達成は「なかなか難しい」とみている。現役からは「(悩みや相談など)女性同士の会話ができる相手がいれば」との声も聞かれる。
 長崎市消防局は、採用の上でネックとなる職場環境に関して整備を進めてきた。三つの署や出張所で女性専用の浴室やトイレ、仮眠室などを備えた。ハード面の改善が難しい小規模本部に比べれば、受け入れ態勢は一定整えた。
 全国の先進都市では女性採用に特化した動画やポスター、職業体験セミナーなどを展開している。市消防局でも16年度から企業説明会にブースを出展し、女性の人材確保に本格着手。消防や救急など現場で隔日勤務する当事者の声のほかに、総務や予防など日勤業務の情報も積極的に発信。消防庁発行のガイドブックも配布する。
 今後は職業体験セミナー開催なども検討するという。人事担当者は「女性が働ける職場や体制をつくりつつ、実際に女性が活躍している場だと情報発信をして裾野を広げたい」としている。

企業説明会に出展したブースでは女性消防士のPRポスターを掲げてアピール。参加者には女性も見られた=2018年12月、長崎市(長崎市消防局提供)
女性消防士の人材確保に向けて配布されているガイドブック

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